エピローグ2[歴史1]
これはまだ、世界に何も存在しない空白だった頃の話。
世界はただただ何も存在しない、どこまで行っても有限でしかない狭い狭い檻でした。
――何かを閉じ込める為の、狭い狭い箱庭。
手を伸ばしても何にも届かず、空を見上げても何も無く、足元すら存在しない、本当に何もない空間。
けれどもそこに、ある日[大地]が出来ました。
空に[星]が出来ました。世界を彩る[空]が出来ました。
だから……私は[人]を創りました。
[魔法]が[祈り]が[海]が、様々な物が私達によって創られ、そこに[世界]が出来ました。皆で創り上げた[世界]は美しく、私達は[世界]を愛し、そこに存在する全てを愛おしく思って居ました。
……そう、あの時までは。
「……悠姫様、良いのですか?」
私の問いかけに、悠姫様はそう答えました。
「うん。[加護の祈り]は切らないでいいの。もしも[加護の祈り]を切れることがわかったら……人は、フィーネを利用しようとするかもしれないから」
これは[第一の聖櫃]でかわされた会話。
「私のことならば、大丈夫ですよ」
「そうだとしても、フィーネがわたし達を護っていてくれるように、わたしもフィーネを護りたいって……そう思ったらダメかな」
「……悠姫様」
皆が悠姫様のように、私達のことを心配してくれるような人ならば、他の神々ももしかしたらこの世界を捨てるような事になることなど、無かったのかもしれません。
――鳥籠に鳥を閉じ込めるのは、人にのみ許された高慢です。
十二の神によって創られた[閉じた世界]。
――Crescent Ark Online。
私はその世界で、彼女と生きることを決めたのです。
願わくば――
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