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第81話 争いの終わり

 棗は地面に叩きつけられた涙を見た瞬間、瞼を硬く閉じ、その場に尻餅をついた。自分自身を強く抱きすくめて、ガクガクと震える。額から嫌な汗が滲み出た。

 瑠夏が静かに棗に歩み寄り、その体を抱き起こしながら恐る恐る涙の状態を確認した。

 赤い絨毯のように広がる血だまりに、涙の体が静かに横たわっている。涙はぴくりとも動かない。うつ伏せに倒れているので、涙がどんな表情を浮かべているのか解らなかった。

 酷く変わり果てた涙を見下ろす瑠夏の頬に、涙が流れ落ちた。

 棗はまだ震えながら自分の両手を見つめている。そんな棗の頬にもまた、先程までとは違う意味の涙が流れていた。


「俺は……こんな終わり方、望んでた、わけじゃないのに……。ほんとは、ほんとは誰も苦しまずに……普通に、……みんな……生きて欲しかった……。雪山先輩も美衣子先輩も……涙先輩も……。それなのに……」


 自分には何も出来なかった、と自分を責め、咽び泣く棗。瑠夏と奈々と京子はそんな棗を、静かに見つめていた。

 自分達も何も出来なかった。何1つ、護る事ができなかった。全てを護ろうとして、全てをダメにしてしまった。大切なことを一瞬でも忘れてしまっていた自分達のせいで、歯止めの利かなくなった涙の暴走をこんな形でしか止められなかった。

 そう、全ての始まりは涙の嫉妬から始まった。瑠夏たちは涙を止めようとせず、壊れかけていた涙に協力する事を選んだ。それが傷付いた涙に対する最大の善だと信じていた。

 そしてその結果、美衣子も涙もこの世から消えてしまった。否、消してしまったという方が正しいかもしれない。

 史上最悪とも言える生徒同士の争いは、一番悲しい形で幕を下ろした。


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