第72話 復讐
翌日、京子は教室に到着した。時計の針が指し示している時間は、7時20分。いつもより数十分早い登校だった。教室にはまだ誰の姿も無い。
「おはよー、京子!」
数分後、元気良く教室に入ってきたのは瑠夏と奈々だった。京子は笑みを浮かべて、2人を振り返る。
「おはよ!」
「ごめんなさい、奈々ちょっと寝坊しちゃいました」
「大丈夫だよ。あいつが来るまで時間あるし。それまでに全部終わらせちゃえばオッケー」
3人は足取り軽く下足場へと続く階段を下りていった。
***
下足場に着いた3人は、真っ直ぐ涙の靴箱へ足を運んだ。
「美衣子の時は外靴だったから、今回は上靴やっちゃおうか」
「上靴? あはは、それは困るよねー」
「いいじゃないですか、思い切りこらしめてやりましょう」
靴箱を開け、上履きを取り出す。
「美衣子の時は……確か土を詰めたんだよね」
「今回は画鋲でも入れようか」
片方の靴の中に教室から持ってきた画鋲を詰める。いくつかの画鋲が靴の中に刺さってしまったが、お構い無しに続けた。
「もう片方はどうする?」
「美衣子の時は埋めたよね」
「それなら今回はもっと酷い方法で使えなくしてやりましょう」
奈々はそう言うが早いか、涙の靴をもってどこかへ行ってしまった。それを待っている間に、瑠夏と京子は続けて靴箱にも嫌がらせをしようと企んだ。
「流石にまた中傷落書きはやばいかなぁ。すぐバレそうだよね」
「じゃあどうしよう? あ、忘れ物入れに赤い絵の具があるけど……」
「あ、それ使えるかも」
2人は忘れ物入れの中から絵の具を拝借し、赤い絵の具を直に塗り付けて涙の靴箱の中を真っ赤に塗った。
「……ただいま戻りました」
赤に染められた靴箱が出来上がり、暫くして帰ってきた奈々の手には、墓場に落ちていたという大量のカラスの羽と菊の花が握られていた。
「これ、中に詰めたらいいんじゃないでしょうか……何となく不気味ですし」
「うん、全部入れよ」
カラスの羽と菊の花を靴箱に詰める。奈々が持って行った片方の上靴は、焼却炉で灰になったらしい。
その後3人は教室に戻り、涙の机やロッカーの中を物色した。机の中には大量のノートや教科書、ロッカーの中には体操着とジャージが丁寧にしまってあった。3人は迷う事なく教科書やノート等を1枚ずつ破ってシュレッダーにかけ、そのくずは適当に教室のゴミ箱に捨ててしまった。体操着とジャージは男子トイレの個室に丸めて捨ててきた。用を足そうと入った男子が見つければ、きっと大騒ぎになるだろう。




