第66話 消えた美衣子
空を覆う黒い雲から、まるで何かを感じ取ったかのように雨が降り始めた。瑠夏は激しく胸騒ぎを覚え、美衣子の電話番号に何度も電話を掛け直す。しかし、呼び出し音が鳴るばかりで、美衣子は電話に出なかった。瑠夏は乱暴に携帯電話を置くと、弁当を片付け、トイレに行っていた京子と奈々に声を掛けた。
「京子、奈々! 美衣子のアパートに行こう!」
「え、今から?」
「何でですか?」
「さっき美衣子から電話がかかってきたんだけど……」
先程の会話を説明すると、2人は蒼ざめて早くアパートへ向かおうと言い出した。すぐに校舎から飛び出した3人は、雨に濡れた道を走った。
数分後、アパートに着いた3人は階段を駆け上り、美衣子の部屋の前に立って扉を叩いた。返事は無い。
「美衣子、美衣子! いるなら返事して!」
3人の背中に嫌な汗が流れていく。
「美衣子さん、美衣子さん!」
奈々が声を張り上げて扉を叩き、咄嗟にドアノブを回した。
「……あっ」
なんと、扉はいとも簡単に開いてしまった。3人は顔を見合わせ、無言のまま意見を合わせた。
「美衣子……ごめん、入るね」
3人は恐る恐る室内に入った。雨が降って曇っているせいか、室内は薄暗い。京子が電気を点けてみた。部屋の中が瞬時に明るくなる。
……しかし、美衣子の姿は無かった。
荷物や布団はそのままだ。先程食べたと思われる、梅干の種が載ったままの食器も残っていた。
「どこ行ったの……? こんな天気なのに」
雨音と不安は強くなるばかり。3人は暫くその場に呆然と立ち尽くしていた。




