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第35話 裏工作

 雪山親子が学校を出て行ったのを確認したあたしはすぐさま学校のPCルームに足を運んだ。

 PCを起動する。……勿論、許可はとっていない。この時間はPCルームを使う授業もないししっかりと鍵を掛けておいたから、恐らく誰も入ってこないだろう。

 あの男と連絡をしたときに使っていたアドレスには、どこからか知らないが、迷惑メールが沢山届いていた。それを削除しつつ、あの男からのメールを探す。


(やっぱり、無いかな。本当のメアドの方教えちゃったし……)


 半分諦めかけたその時だ。見覚えのあるアドレスを見て、あたしは手を止めた。


「……」


 暫く件名のないそのメールを見つめた後、思い切って開いてみた。……思ったとおりそれは、あの男からのメールだった。


『美衣子ちゃんから連絡が来なくなって寂しいよ……。美衣子ちゃんの家、燃えちゃったよね。ねぇ、僕の家においでよ。一緒に遊ぼう。可愛がってあげるよ……』


 その文章を読んだ瞬間、背筋が凍りついた。この文章を見れば分かる。……間違いない、あいつが美衣子の家に火をつけたんだ。あたしは、ごくりと生唾を飲み込んだ。


「あいつ……」


 口の端を歪めて、くくく、と細く笑い声をあげる。


「……ただのオタクかと思ってたのに、結構やるじゃない。いいわねぇ、こういう馬鹿は遠慮なく使えるわ」


 返信ボタンを押し、キーボードを叩く。この男に協力してもらえば、もっと楽しいことが出来るかも知れない。


『やっぱりおじさまが私の家に火をつけたんですね』


 そこまで打ったところで、一旦手を止めて画面を見つめた。これを書いたら流石にやばいかな、と少し躊躇ったが、あたしは首を横に振り、頭に浮かんだ文章を打ち込んだ。


『……本当に嬉しかったです。実は公園でおじさまを待っていたとき、彼氏から呼び出しのメールが来たんです。いつも私に暴力を奮ってくる彼氏だから、おじさまに迷惑をかけるわけにはいかないと思い、すぐに家に戻りました。家に帰ると彼氏が私を待ち構えていて、何度も殴られて殺されかけたんです。そうしたらおじさまが助けに来てくれて、泣きそうなくらい嬉しかった……。だけど、彼氏に脅されて、おじさまにあんなメールを送ってしまいました。……ごめんなさい。でも、本当はすごく感謝しています。おじさまが私の家を燃やしてくれなかったら、私は今頃どうなっていたか……考えるのも恐ろしいです。あの火事の騒ぎに紛れて、彼氏から逃げる事が出来ました。でも彼氏はきっと、今も私を捜しているでしょう。もう怖くて外を歩けません。おじさまに会いにいくこともできなくて辛いです。……もし良かったら私のお願いを聞いてほしいんです。彼氏を捜し出してガツンと言ってやってくれませんか? “私はもうおじさまのものだ”って……“私はあなたなんて嫌いだ”って。そうすれば、おじさまとずっと一緒にいられます。彼の写真を添付しておきますから、宜しくお願いします。おじさまが大好きな美衣子より』


 文章を打ち終わり、前に雪山を好きだったときに隠し撮りしたものを携帯電話から送信して、メールに添付した。顔はバッチリ映っているし、これなら分かり易いだろう。震える手で送信ボタンをクリックする。


(……さて、あいつはどんな行動を起こしてくれるかな?)

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