第22話 策略
翌日、あたしはいつもどおり家を出た。
「行ってきまーす」
「行ってらっしゃい。気をつけてね」
お母さんに大きく両手を振りながら、いつも通学している道を駆ける。その途中であたしは川原に寄り道をして、ポケットから携帯電話を取り出した。
電話をかけた先は、あたしの通っている中学校。暫く待っていると 程なくして受話器が上がった。
『はい、●●中学校です』
「あ! えっと、葉山ですけど」
丁度電話に出たのが担任の先生だったので、すぐに自分の名前を名乗った。
『あぁ、葉山か。どうした?』
「今日、体調が悪いので休みます」
『そうか、昨日早退したもんな。わかったよ』
「よろしくお願いします。……あ。あの、先生」
『ん?』
あたしは携帯電話を両手で握り締めると、心の奥底から心配しているような声を出した。
「美衣子、今日は来てますか?」
『春風か。……いや、今日も来てないよ』
「……そう、ですか」
『葉山は親友だから、辛いよな』
「はい……。心配です。どうかしちゃったのかな、美衣子……」
本当はあたしが原因なんだけどね。と 心の中でほくそ笑んでみる。先生はあたしの態度に感激しているのか、少し声を震わせながら言った。
『こんなに心配してくれる友達がいるんだから、春風もきっとすぐ学校に来るさ。今日は心配せずに、ゆっくり休め』
「……はい、ありがとうございます。それじゃあ、失礼します」
携帯電話の電源ボタンを長押しして電源をOFFにすると、あたしは大声で笑った。
(そっか、今日も美衣子は家にいるんだ。それなら、この作戦はきっと成功するわ)
あたしはその足で駅に向かい、電車に乗り込んだ。向かう先は、先程欠席すると連絡しておいた中学校。
家のパソコンから実行するのが難しい作戦なら、学校から実行すれば良い。不特定多数の人が使うパソコンなら、仮にバレてもあたしまで辿り着くのには結構時間が掛かるだろう。




