回顧 ― キースの宿命 4
キースのいる国は「カイライ」と言い、
数ある国の中でも大きい方ではないが、資本主義国である。
国民による選挙によって選ばれた首相が辣腕を奮っており、
多少の貧富の差はあるものの、かなり潤っている国であった。
この星の中に約300近くある小さな国々は、
お互いに順番を決めて守役を選出している。
20年に1度、1つの国から決められる守役の順番が
次に同じ国に回ってくるには
気の遠くなるような年月がかかることになる。
当然、守役に選ばれた者よりも
選ばれずに一生を終える者の方が圧倒的に多い。
守役に選ばれた者は星の英雄として記念碑に名を残し、皆に讃えられるが
少しの時間が経てば忘れ去られていく存在でしかなかった。
そして今回、主神の守役に選ばれてしまったのが
・・・キースだった―――
キースはつい一昨日まで一緒にいたリリアのことを想った。
彼女はキースが守役に選ばれた夜、彼のもとを訪れ
そのまま一夜を過ごした。
それからここへと出発する日の前日・・・
つまり一昨日の夜までの一週間、
二人は激しくお互いの存在を確かめ合った。
キースにとっては初めてのめくるめくような日々だった。
出発の日―――
カイライ国の人々は記念碑にキースの名を刻み、
星を救う英雄だと褒め称えながら彼を送り出した。
リリアの姿は・・・なかった。
※ ※ ※
彼は今、“守の丘”(もりのおか)という場所に立っている。
ここは守役が主神と出会う神聖な場所として、
普段は誰も立ち入ることができないようになっていた。
金の星と土の星が重なった後、
さらに陽の星に重なる日、主神は守の丘に姿を現すのだという。
そして今日が“その日”だった・・・。
キースと同行してきた男たちは、キースをこの場所に立たせると
後ろを振り返ることなく一目散に走り去った。
後に残されたのは湖の静寂とキースの姿だけだった―――
「・・・!?」
長い沈黙の後・・・
ふと、何かの気配を感じてキースは顔を上げ、
湖の向こうを見つめた。
遠くの方から何かがこちらへ向かってきている。
キースは思わず身体をこわばらせた。
よく見ると、それは水面の上を歩いていた。
滑るように歩いてくる。
やがてそれが近づくと、キースは驚きの声を上げた。
「・・・!!」
キースの前に立っていたのは・・・
黒いジャケットを羽織った若い青年だった。
「君が新しい守役かい?」
彼はキースに笑いかけた。
限りなく優しい眼差しだった。




