主神の島
二人は島の近くに来ると、
移動するスピードを緩めて陸地のすぐ手前の水面に佇んだ。
「ここがこれからお前の暮らす場所だ。
まず、お前から行け」
男はカインの肩に廻した手を離すと、
そのままドンとカインの背中を押した。
「あうっ!」
つんのめるようにしてカインが陸に足をつけた。
肩に担いだ荷物が急に重みを増したように思えた。
その後ろを男がゆっくりと歩いてくる。
彼にとっては陸も水面も関係無いようだった。
男はカインの傍らに歩み寄ると、親しげな笑みを浮かべた。
「お前の名前は?」
「僕はベクト王国から来たカインと言います。
あの・・・あなたのお名前は?」
「俺はキースだ。
さっきも行ったと思うが、18年前にカイライから来た」
カインは驚きを隠せない表情で、キースの顔をまじまじと見た。
「守役の候補は16歳から20歳までのはずです。
ですが、あなたはどう見ても18年前に選ばれた人のようには見えません。
一体、どういうことなのですか?」
「そうだな・・・」
キースは少し考えるふりをしてから
「詳しいことは俺の家で話そう。ついて来い」
いきなりカインを残して歩き出した。
「ま、待ってください!」
カインは急いでキースの後を追った。
二人は島の奥へと入って行った。
ブナの木が中心のうっそうとした森が広がっている。
しかし道はきれいに作られていて、意外に歩き易かった。
キースの歩くペースは早く、カインは重い荷物を担いで
ふうふう言いながらもついて行った。
やがて、30分ほど進んだところで小高い丘が見えてきた。
「この上が俺の家だ。もう少しだぜ」
キースは振り返ってカインに笑いかけると、
先程と少しも変わらないペースで歩き出した。
道は途中までは緩やかな斜面だったが
小屋に近づくにつれ、だんだんと斜面がキツくなっていく。
今までキースに遅れをとらないように歩いていたカインも
さすがに一歩を踏み出すのがやっとという状態になってしまった。
「おい、大丈夫か?」
キースが手を差し伸べた。
「だ、大丈夫です」
カインはキースを見ずに一歩ずつ進もうとした。
「意地を張るなって」
キースはカインの手をいきなり掴むと、
グイグイと引っ張って行った。
「あっ・・・あっ!」
カインは戸惑っている間も無く、どんどん斜面を上らされてしまった。
斜面を上りきった丘の上は広く整地されていて、
急に視界が開けたように見えた。
周囲の草もきれいに刈られており、
ここだけ人が住んでいるような気配がした。
ここには大きな小屋が一軒と、小さな小屋が一軒あり、
その奥に朽ちかけている小屋も一軒あった。
小屋と言ってもどっしりとしたログハウス風の造りなので、
立派に“家”と呼べるものだった。




