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水の惑星  作者: 花押
10/27

カインと宿命 2

 次の日、学校では皆が一様に暗い顔をしていた。


 昨日、それぞれの親から話を聞いたのであろう。

 皆、口数も少なくうつむいていた。




 「カイン様・・・」


 ジャンが不安そうな顔でカインの傍に寄った。



 「昨日、王宮が騒がしかったのはこの事だったのですね。

カイン様も守役の選考には行かれるのですか?」



 「うん。君と一緒に行くよ、ジャン」



 「カイン様・・・」


 ジャンは今にも泣きそうな顔をしていた。





 「カイン・・・」


 カインが声のする方に振り向くと、そこにはアリスが立っていた。

悲しそうな顔をしていた。



 「アリス、君までそんな悲しい顔・・・しないで」


 カインはアリスの肩に手を乗せると、

安心させるように優しく微笑んだ。



 「カイン、お願い。どこへも行かないって約束して。

あなたがいなくなったら私・・・」



 「・・・? アリス? どうしたの、突然」



 いつも仲良しの友達だと思っていたアリスの態度に

カインは戸惑った。



 「私、みんなの前で言うわね。みんなにも聞いて欲しいの」



 アリスは大きく息を吸い込むと、

真っ赤な顔をしてカインに向かって言った。




 「カイン、あなたのことが好き。


 私をあなたのお嫁さんにして!」



 アリスは、言い終わると同時にカインの首筋にしがみついていた。




 え・・・



 これって・・・プロポーズ・・・!?




 あまりに突然のことで、カインは耳まで真っ赤になった。

頭の中は真っ白で、どうしていいのかわからなかった。




 「カイン。私がこんなこと言うの、迷惑?」



 アリスの瞳が自分の瞳のすぐ近くで不安そうに揺らいでいる。




 その瞳を安心させたくて・・・




 カインは思わずアリスの唇に自分の唇を重ねていた。



 初めてのキスだった。



 教室にいた全員がどよめいた。



 ジャンは呆然と・・・その様子を見つめていた。





 ※   ※   ※





 カインが父から話を聞いた日から5日後―――



 王宮の庭に少年たちが集められた。



 誰もが緊張した顔をしている。



 その中にはカインとジャンの姿もあった。



 

「これから主神の守役となるべき者を選出する。

一同、整列しなさい」



 バラバラだった少年たちが、きれいに整列させられていく。


 並べることにより、選考しやすくするためだった。




 壇上に1人の老人が立った。


 この老人は“能力者”と呼ばれ、

人の気や生命力といったものが見えるのだという。



 守役には、気や生命力が一番高いものが選ばれる。



 気で主神をこの身に縛り、

少なくともこれから20年以上は生きなければならないのである。




 能力者は壇上から降りると、ゆっくり少年たちに近づき

手をかざしながら1人1人丁寧に見ていった。



 全員を見終わるまでには長い時間がかかる。


 それでも少年たちは緊張のために列を乱さないばかりか

疲れた顔を見せる者もいなかった。



 やがて全員を見終わった後、しばらく考えていた能力者は

自分の選んだ少年の肩を軽く叩いた。




 そこにいた誰もが「おおっ!」と声を上げた。






 選ばれた少年は・・・カインだった。






 カインはしばらく目を閉じ、何かを考えているようだったが

やがて吹っ切るように顔を上げると、にこやかに笑った。



 「わかりました。僕が行きます」




 皆はカインの潔さに感嘆の声を上げた。



 しかし、ジャンは立っていられないほどの衝撃を受けていた。



 カインの母は・・・気を失っていた―――




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