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7、変な親友と変な俺



座敷童はうつむいた。


「……違う、と言えば嘘になる」

その声はいつもの毒舌ぶりからは想像できないような、細い声だった。


座敷童は目を伏せたまま話し続ける。


「この世は楽しい。何百年も、移り変わる世の中を見てきた。

 これからもどこまで変化していくのか、見てみたいと思うしのう……


 ただのう…………」




座敷童はいつの間にやら正座していた。

小さな握り拳で、着物の裾をキュッと握っている。



「―……かかに、会いたいのじゃ」



「母さん?」



そうか、こいつのお母さんはもう亡くなっているんだ。


死んでから親に会えないで、この世にとどめられているなんて……



俺は座敷童が可愛そうに見えてきた。


「お前、ずっと寂しい思いを……」


「だからじゃ、涼介りょうすけ

 わしにビー玉の所有権を譲って自由にしてくれ!」

「えっ?!」

「そうだよ涼介! ざー君自由にしてやれよ!」

「ちょ、ちょっと……」



座敷童と一真かずまが2人して俺に泣きついてきた。


待て待て待て!!!



「俺は騙されないぞ!

 所有権譲ったところで成仏するわけじゃないんだから、

 それとこれは話が別だろ!」

しがみついてくる2人を全力で引き離す。


「えっ?そうなの?」

「一真、話聞いてただろ!」

「―……ッチ」

「おい、わらし!舌打ち聞こえてるぞ!」



一真はポカーンとした顔で俺を見上げ、

座敷童はさっきの涙はどこへ行ったのか、

眉間にしわを寄せ睨んでいる。



「ただお前の気持ちはよくわかった。

 協力してやろうじゃないの」

「なんじゃと?」


「名前、探してやるって言ってんの」

にっと笑いながら座敷童を見下ろす。


「そうこなくっちゃ、涼介! 俺も協力するよ!」


一真も乗り気で笑っている。


しかしそんな俺たちとは裏腹に、座敷童は不安そうな顔をしていた。


「む、無理じゃ!そんな簡単に言うな!」


「まぁ偶然分かったらラッキーじゃん」


「じゃが……」


「無理だと思うなら、お前が期待しなければいい。

 俺の退屈しのぎだ」



座敷童はまだ何か言いたげな様子だったが、

最後には肩を落としてため息混じりにつぶやいた。


「好きにするがよい。わしの役目は見守る事じゃ」



「ざー君素直じゃないなあ」


一真が笑顔で座敷童の頭を撫でた。



「触るなモブ」


「モブ?!」




座敷童の冷ややかな視線にひるむ一真。

うん、どうやらわらしはツンデレだ。


少し頬が赤らんでいる。



俺は落ち込んでいる一真に話題を移すことにした。


「それにしても、お前がそんなすげーこと隠してたなんてなー」


「え?あー…………」

いきなり話をふったせいで驚いたらしい。

頭をぽりぽり掻きながら、目はフローリングの上を泳いでいる。


「母さんにさ、誰にも言うなって言われてたんだ……」

一真はゆっくり話を始めた。

「かなり幼いころから見えていたみたいでさ。

 何もないところに向かって指さして、アーアー喋ってたって。

 他の人に不審な目で見られたりしてて、

 こんなんだと外で友達ができるか心配だからって、

 絶対にお外では喋っちゃダメよーって言われてたんだ」

一真はハハっと苦笑いをした。

「……俺、変でしょ。涼介は親友だから、絶対嫌われたくなかったから……」


目がチラッと俺の様子を伺う。


「一番知られたくなかったんだけどなー…………」



また苦笑い。




俺はフーっと息をはき、腕を組んで一真を見た。

「俺の知ってるお前は、元から変だ」


「なっ?!」



一真は酷い!と言わんばかりの

愕然とした顔をになった。


「涼介、そんな言い方っ……」


「何年一緒にいると思ってんだ。

お前が今更どんなビックリ人間でも、嫌いになるわけないだろ」


「……涼介っ!」


「元からウザイんだから」



一瞬の輝かしい表情が、また愕然とした表情に戻った。




俺は思わず吹き出す。


「くっ、ははは!何その顔!」

「だ、だって涼介が!」

「冗談だよ、ジョーダン」




涙目で俺を見る一真を笑いながらたしなめる。



「気にするなって言ってんの」

そして座敷童に目を向けた。

話に飽きて眠たいのか、うとうとしている。



「俺も変な仲間だ」




にひひっと歯を出して笑ったら、

一真も同じように笑い返してくれた。




「うん、知ってる!」



……この笑顔は悪意無しで言っているのだろうか。

一真に言われるとなんかイラっとする。





「本当にありがとう」


照れくさそうな感謝の言葉は、真っ直ぐ俺に入ってきた。


「なんかあったら、いつでも言ってよ。

 ざー君の名前探し手伝う」

「ありがとう。こんなの一真じゃないと頼れないからな」




俺たちは笑いあった。

その頃座敷童はと言うと、ベッドの上で小さく体を丸め眠っていた。



俺の部屋には、並外れた霊力少年に座敷童。

なんだかおもしろいことが、またひとつ増えたように思った。






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