1、こんばんは変な奴
加藤涼介(16)
日本の普通すぎる一般高校生男児
見た目ふつう。特徴……
あえていうなら左目の下の泣きほくろ?
勉強そこそこ、運動そこそこ
あ、体力だけはちょっと自信あり。
それが俺です。
そんな俺、なんか最近ついています。
第一志望だった高校にも無事合格をはたし
中学から思いを寄せている子とも念願の同じ学校。
そんで今まさに目の前にはクラス発表の一覧が張り出され
1年2組12番加藤涼介
…………は俺で、
1年2組17番佐々木美歩
はい、きた!美歩ちゃん!
席うまくいけば隣じゃない?
どっちにしろ近いよね?うわ、テンションあがる!
自然と顔がにやけるのもしょうがない。
あ、ちなみに恋愛経験なんて今だゼロの万年片思い野郎です。
当たって砕けろ!砕けたー……がお決まりパターン。
なのでまだ俺の想いはまだ彼女には封印中です。
いいね、最近。なんかいいんじゃないのこれ?
青春してやろうじゃないの!
ちなみに部活動は陸上部に入部予定。
先ほど言った体力の自信はこれが理由なわけで。
中学から長距離をやっていて、走るのは好きだ。
「よう涼介!クラス一緒だな!
中学に引き続き今年もよろしくー!」
「ぎゃ!!」
急に背中をばしっと叩かれた。
犯人は長谷川一真、腐れ縁の幼馴染だ。
「まさか一真まで同じクラスなんてな。
これなら新学期も心配ねえや」
にかっと笑いかける。ちなみにこいつも陸上野郎。
「までってなんだよ、またお前あれか?
佐々木の名前しか見てなかっただろ」
「げ、ばれてた?」
「ばーか、お見通し」
けらけら笑いながら家に帰る。
なんたって地元の学校だから、通学が楽なのもいい。
一真と別れてひとりになると、自然と鼻歌を口ずさんでしまった。
そんなこんなで夜になる。
「なんか今日もいい日だったなー」
独り言を呟きながら自分の部屋のベッドに倒れこむ。
いつからだろう?
人生が平凡すぎてつまらなくて
とりあえず中学時代はそれなりに部活頑張っていたくらいで
特に充実を感じたことはなかった気がする。
それがここ最近これだ。
なんか変わったことと言えば…………
「…・・・これか?」
曾婆さんからもらったお守り。
約半年前、亡くなる前にもらったものだ。
小さな赤い袋の中には澄んだ青い色のビー玉が入っている。
曾婆さんが大事そうにしていたものだったから、
受け取ったときは同じくらい大事にしないとと思った。
それからいつも肌身離さず見えないように首からぶら下げている。
「兄弟いないし、一人の曾孫だから大事にされてたのかなー」
手の中でビー玉を転がしてみる。
「綺麗だけど普通のビー玉なんだよな」
「あぁ、だからそれを今すぐわしに返せ」
…………え?
「だーかーら!返せといっておる!」
「出たーーーーー!!!!!」
誰もいないはずの俺の部屋。
今目の前にそれはそれは完成されたおかっぱ頭の子供がいる。
淡い青色の着物を着ていて、
くりっとしたまん丸の瞳が俺をまっすぐ見つめている。
……いや、睨んでる。
「さ、叫ぶな!うるさい!」
「だ、だだ誰だお前!あれだな、幽霊!今、夜の……」
8時
「……え、ありなのこの時間?」
もう一度子供に振りかえる。
目がくりくりしているためとても愛らしい顔立ちだが
おそらく男の子だろう。
一人称、「わし」とか言ったし……
「そ、そこらの幽霊なんかといっしょにするな!
わしはれっきとした座敷童じゃ」
…………え?
「……君いくつ?」
「少なくともお前より年上じゃ」
「いや見た目5歳……」
「知るかぼけ」
「……お家どこ?」
「今はお前の家じゃな」
なに……こいつ。