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11、間違えるよ人間だもの

※訂正のお知らせ※


前話の「10、これが僕らの陸上部」の部活動集会の場面での

森岡弘毅と星野兄弟の台詞を訂正しました。


内容に差し支えがある程の訂正はしていないつもりなので、

必ず読み直して頂く必要はありません。



それでは11話をどうぞ!






この日、朝から俺に教室で、夢のような出来事が起きた。




「おはよう、涼介りょうすけ君」


「あ、おはよう美歩みほちゃん!」



そう、朝から天使が俺に微笑んだのだ。



にやけまいと必死に自己制御していると、

美歩ちゃんはおもむろに、携帯電話を取り出した。




ん?挨拶だけじゃないの?





「あ、あのね涼介君……」

「うん」


なんだこの照れてる様子。

可愛すぎるんだが。




「あの、携帯番号とアドレス教えてくれないかな?」




…………え?





も、も…………っ


「もちろん!!」




思わず返事が大きくなってしまった。

大好きな美歩ちゃんが、俺にアドレスを聞いてくれた!



しかも番号まで!



俺からじゃなくて、美歩ちゃんから!



ここ重要。



俺からじゃなくて、

み ほ ちゃ ん か…………







「あああー!全くおぬしの頭はうるさいのぅ!

分かったからさっさと教えたらどうじゃ!」




俺が声には出していない心の叫びを、

座敷童は勝手に読み取り、耳を押さえて迷惑がっている。



まぁ、どれだけ俺がテンパってるかは十分想像できるだろう。


あぁ、そうさ。

どうせ俺は好きな子にアドレス聞く勇気も無いチキン野郎だよ!





俺は慌てて携帯電話を取り出す。



やば、美歩ちゃんと赤外線なんて夢みたい!




無事互いに送信が完了すると、

美歩ちゃんはニパっと俺に笑顔を向けた。




「ありがとう!」


「いやいや、こっちこそ……」


「後はあきら君だけかな」


「いつでもメールしていいから!―……っえ?」


「あ!丁度良いとこに!昶君ー!」


「ちょ、ねぇ美歩ちゃん?」





丁度昶が教室に入ってきて、俺の前の席にどかっと鞄を置いた。



「おはよう、佐々ささきさん呼んだ?」


「おはよう昶君。

あのね、携帯の番号とアドレス教えて欲しいんだけど……」



美歩ちゃんは携帯電話を昶に向ける。

そして二人は赤外線送信を始めた。




ちょっ……


ちょちょちょっと待ったあああああ!!



ナルシストの変態なんかに、美歩ちゃんを渡すものか!


俺は慌てて阻止しようと試みたが、

時すでに遅し。


二人はすでにアドレスの交換を終えていた。



や、ヤバい。




「美歩ちゃん、昶は確かにイケメンだけど変態で……!」


「へ……?」


「何言ってんだ涼介?」



俺の心中とは裏腹に、キョトンとしている美歩ちゃんと昶。




すると美歩ちゃんが笑いながら言った。


「んー、良く分からないけど、桜木さんに、

一年生のアドレスは全員登録しておくように言われたんだよね。

一応マネージャーだから……」





俺はその言葉を聞き、一瞬にして固まった。





マネージャーだから?




………………




わああああああ!!

俺ってば勘違い野郎!!!





「えっ!?じゃあ、俺にアド聞いたのも……」



「うん。部活の連絡は私がみんなに回すことになるから」




恥ずかしさでいっぱいです。



「責任もって頑張るね!」



にこっとはじける笑顔。


そんな美歩ちゃんの笑顔に、思わず涙が出そうだった。



これは昶への恋心疑惑が晴れた嬉しさから?


それとも俺にアドレス聞いた理由が

事務的な理由だったという悲しさから?




どっちにしろ、穴があったら入りたい。

まさにそんな感じ。



美歩ちゃんが自分の席に戻ると、

座敷童が横から俺の制服の裾を引っ張ってきた。



「人間勘違いするときもあるものじゃ。

良かったではないか、念願の美歩ちゃんのアドレスゲットじゃろ」





顔が全然人を慰める表情じゃない。

今にも笑い出しそうな顔をしている。



「ほっとけ……」



先ほどの勘違いのダメージがあまりにも大きく、思わず顔が赤くなる。



「涼介も妄想力は十分、昶に劣らぬ変態じゃな」



このおかっぱ、イタいところをついてくる。





俺が座敷童を無視して顔をあげると、昶と目があった。

片手で頬杖をついて俺を見ている。


き、気づかなかった……




「…………ふーん」


「な、なんだよ……」



「佐々木さんが好きなんだ」





ちょ…………っ!!!!





「な、なんでっ」


「いや、反応見てれば普通分かる」


そんなに顔に出てたかな……


「いつもニタニタしてるんじゃ、当然じゃのう」



座敷童にまで言われる始末。


昶はくいっと眼鏡を直すと、にやっと口元を歪めた。



「良いんじゃない?彼女可愛いし性格良さそうだし

……いい声で鳴きそうだし」


「おい、小声で何か付け足しただろ」


「ま、黙っててやるから安心しろ」




言動にはいつも引っかかるものがあるが、

やはり昶は良い奴だと思った。



俺は小さくサンキュ、と呟いた。








「……胸小さいけどな」


「黙ろうか」




誰か数秒前の俺を殴ってください。






---------------






授業が始ると、俺はノートをとりながら、

ふと座敷童の名前について考え始めた。



そういや、一真かずまと当ててやるって宣言したっけ。

新しい学校生活がバタバタしていて、

結局今まで、特に何もしていないことに気づいた。




隣にいる座敷童にちらっと目をやると、

世界史の教科書を楽しそうにペラペラめくっていた。

周りから見たら、ひとりでに教科書がペラペラしているのだろう。

想像すると、ちょっと不気味だな。

一番後ろの席で良かったと思う。



「こんな本一冊で世界の事が学べるなんて、すごいのぅー」



目をきらきらさせながら教科書の写真を眺める姿は、

普通の子供と変わらない。




それにしても、こいつはいつ生まれたんだろう?


名前を当てるには、まず座敷童の生きていた時代を

知る必要がありそうだ。



まさか今時の名前じゃ無いだろう。


スカイとかルイとかカイトとか。

無理あるだろって思うような読み方する名前もあるからびっくりする。





すると俺の考えてることが分かったのか、

座敷童が教科書から顔を上げた。



ぱっちりとした瞳で俺の目をじっと見てくる。


なんだ…………?






「はい、じゃあ加藤!」



いきなり授業をしている教師に名前を呼ばれた。

ハッと顔を上げると、黒板の文字をチョークでトントン叩いている。




「これやった人、前の授業で出てきたよな。

誰だったか言ってみろ」



げ、誰だっけ…………




俺はさっとノートに目を走らせた。



「だ、ダビデ王?」



「おい、今ノート見ただろー!

ま、合ってるから多めに見てやるよ。

こいつは、その子供のソロモンなー」




無事回答できほっと息をつく。

そういや、最近毎日一回は授業で指名されている気がする。




なんでこんなにあたるんだろ。

ついてないな。





ん?もしかして…………






俺は嫌な予感がして、さっと座敷童に顔を向けると、

バチッと目があった。




あ、逸らしやがった。




知らん顔をして再び世界史の教科書をペラペラ眺めている。




おい、こら、わらしこっち見ろ。





--------------------




結局、座敷童に無視されたまま授業が終わった。


休憩時間になり、俺が大きなため息をつくと

座敷童がくいくいっと制服の裾を引っ張ってきた。



無視したくせになんだよ。


俺は不機嫌そうに顔を向けた。



「まぁそう怒るな。

授業中に話しかけないのは勉強の妨げをしないためじゃ。

これも全て涼介の為、感謝しろ」



どこまでも上から目線のガキだなぁ。




それと、と座敷童は腕を組んで付け加える。




「教師に指名されるのも学力向上のため。

優秀なのは幸せな将来に向けての第一歩じゃ。

良かったな、涼介!」




そんな笑顔向けられても……




「やっぱりお前の幸せの提供の仕方、

回りくどいっての!!」





この時俺がクラスの視線を集めて恥ずかしい思いをしたのは、

言うまでもないだろう。







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