お話の最初に
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あれは今から、ちょうど二年ほど前の事。
この街に「魔王」と名乗る者が現れました。しかし、“魔王”と言っても自称で、初めは噂話でしかなかったのですが……。
それから一ヶ月経つと魔王の手下ども(手下と言っても人間)が様々な場所で食い逃げや、水洗トイレを詰まらせたり、え~と……あれは……そう! 路上で創作ダンスを踊ったり等、人に迷惑のかかる事ばかりしだすようになりました。
さらにそれから一ヶ月経つと、この街の若者たちの三割以上が魔王の手先になってしまい、その頃の街は……
――ガサ、ゴソ、ガサ、ゴソ、
あった、あった。
これを見てください。まるで、どっかの○ァイナル・○ァンタジーみたいでしょう?
けれどこれがあの頃の街並みだったのです。あ、ちなみにそれは○ケモンセンターですよ。
とにかく、驚かれるのも無理はありません。その時の私たちも驚いたのですから。
なぜって、それは一日で街全体をこんな風に変えてしまったんです。仮に、その力が街の改造以外に使われたとしたら……考えるだけでぞっとしますよ。
そして、それから「魔王を追い出そう」という人が増えました。
「切符がモンスター倒さないともらえないから電車に乗れない!」
「「現実で体験できるから、ゲームはいらない」とか、言って店のゲームが売れなくなった!」
「何回直しても、水洗便所を詰まらせられる!」
「水漏れの被害が多すぎて会社の休みが無くなった! 会社は大きくなったけども!!」
「魔王の手下どものせいでうちの店がつぶれた!」
等々、理由は様々ですが。
とにかく、魔王を倒そうとし立ち上がった人々が大勢いました。
しかし、そんな事を勢い任せに言ってから、街人達は重大なことに気がつきました。
『魔王ってどこに居んの?』
最初に魔王が名乗りをあげたのは小さくて、古くて、汚い、魔城でした(ボロアパートともいう)。その頃、魔王は街が立ち上げた掲示板の中で騒いでいるだけで、その頃の魔王を知っている人は皆無と言っていいでしょう。
当然の如く、街人たちはそんな事は知らず途方に暮れ、魔王を倒す! と、いう熱意も徐々に冷めていきました。
さらにそれから、半年ほど経つと残り少ない若者たちが、「魔王捜索会社」(長いのでMSS)を立ち上げました。
理由は様
「飽きたから」
様ざ
「飽きたからだよ」
――しくしく
理由は「飽きたから」、らしいです。
最初の方こそ大人たちは馬鹿にしました。
「ガキだけ何ができるんだよ」
「俺たちができなかったことが、どうやったら元自宅警備員どもに出来るんだよ」
「どうせ失敗して、「俺らはまだ本気を出していない!」とか言うんだろ」
とかなんとか言われましたが、大人たちに馬鹿にされつつもMSSの社員は次々と魔王の目撃情報を集め、ついには魔王の拠点を見つけ出しました。
元々、魔王の手下にならなかった者たちの大半は、もとから魔王の手下のようだったのでそういうものは得意だったようです。
しかし、見つけたはいいものも、MSSの社員達は戦力としては役に立ちませんでした。玉砕覚悟で魔王に立ち向かった者も居ましたが、あえなく断念。(一応、大人たちに頼んでみたけれど手下どもにボコボコにされたらしいです)
そこでで立ち上がったのが勇者様です。
勇者様は、聖剣とともに魔王の城(ボロアパート)に向かいました。
それから、五ヶ月間は何の変化もありませんでしたが、半年たったある日、魔王の手先となった若者たちが次々と街に帰ってきました。無論、元の状態でです。それから私達がどんな質問しても彼らは決まってこう言いました。
「勇者様が救ってくれた」
半ば拷問のように問い詰めても、答えはそれしか返ってこなかったので詳しい事はわかりませんが、とにかく魔王はいなくなり、街は平和になりました。
おしまい
――しかし、この話には続きはあります。
若者たちを救った勇者様は、どうなったと思いますか?
街では「名も言わずに立ち去った」と、随分かっこよく言われていますが魔王を倒しに行った後の勇者様の姿を実際に見たのは一人もいません。
ぶっちゃけてしまうと、魔王を倒したはず勇者様は街に帰って来ていません!!
お願いです、もう誰でもいいので街人たちにばれる前に勇者様を見つけてください!!
最後まで見て頂いた方、本当にありがとうございます。