第25話 学園での魔法の実戦訓練
魔法の実戦訓練はグラウンドで行われる事になっていた。
だだ広い平野が広がっていた。地面は土で出来ている。
地面は柔らかく、転んでもそんなにダメージは受けなさそうである。
魔法での実戦訓練は肉体的にも危険が伴う。最悪の場合は命の危機があった。
その為、普段着ている制服ではなく、専用の服を着る事になっていた。
それはパワードスーツのような魔道具——マジックスーツであった。このスーツを着る事で魔法のダメージ及び物理攻撃のダメージを大幅に軽減する事がある、という特別な付与効果が得られるのだ。
とはいえ、何事にも限度がある。そのダメージの限度を超えると、当然のようにダメージを受けるし。
限度をあまりに超えてしまうと最悪の場合は死んでしまう。
何事も完璧なものなどというのは存在しないという事だ。
後、このマジックスーツには一つ欠点があった。機動性を強化する為に、ボディラインを隠すという視点が欠如しているのだ。
つまり、身体のラインが割と丸わかりになってしまうのだ。自分のボディラインがその他大勢の人間にわかってしまうのはそれなりに恥ずかしい事だ。
特に女子にとってはそうであろう。自分のボディラインが浮き彫りになってしまうというのは相当恥ずかしい事のはずだ。
だが、生き死をかけた戦闘行為を行うのだから、そんな事はいちいち気にしてはいられないのは確かだ。
俺達は男子更衣室でそのマジックスーツに着替え、グラウンドへと向かった。
すると、そこには既に講師であるエスティアの姿もあった。
彼女もまたそのマジックスーツを着ていた。
ただでさえ、その少女のような幼い顔つきに背丈を持った彼女、ではあるがたわわに実った巨大な二つの果実を持った彼女がそんなボディラインがくっきりとわかるマジックスーツを着たのだ。
そうなると、どうなるのかは言うまでもない事であった。
俺達の目の前に、その圧倒的なスケール感を持つ二つの膨らみが露わになるのであった。
服を着ている時でも圧倒される程大きいというのに、このボディラインが丸わかりのマジックスーツを着ればその破壊力は言うまでもない事であった。
ただただ、俺達は圧巻されるのみである。
「……? どうかされましたか?」
当のエスティアはきょとんとした表情で首を傾げている。
天然なのだろう。
エルフには性欲がないのかもしれない。だから自分が性的な視線で見られている事に気づかないのかもしれない。
「それではこれより、魔法の実戦訓練を行います」
一通り生徒達がグラウンドに揃った事を確認し、エスティアはそうアナウンスをするのであった。
「あらかじめ決められたペアに分かれて魔法による実戦訓練を行って貰います」
俺達は言われたように決められたペアに分かれるのであった。
「……ふっ。俺様の相手はお前か……名前は確か」
俺の目の前には一人の男子生徒が立っていた。こいつはそうだ。あの時、魔法適正測定の際に炎の単一魔法しか適性がなかった奴。
そして財布を忘れた俺がカツアゲをしようとして未遂に終わった相手。
……そう。なんだったか、うーん。思い出すのも面倒くさい。俺は思い出す事を放棄した。
「モブ男よ」
「ポールだよ! 僕の名前はポール!」
そう、叫ぶのであった。モブ男が。生意気にも自己主張をしてくるのである。
「何でもいいではないか。これから貴様はこの俺様に無様にやられて、散るだけのただの引き立て役なのだから。名前なんてあろうが、なかろうが」
「ひ、酷い言われようだ」
「そちらからかかってこい。やられ役はまず自分から仕掛けてくるのが相場というものだ」
俺は指をくいくいとしてわかりやすく挑発する。
「くそっ! なめやがって! やってやらあああああああああああああああ!」
モブ男——もといポールがその気になった時の事だった。
「「「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」」」
歓声が響き渡る。皆が手を止めていた。俺達もそれに釣られ流されるように、闘いの手を止めた。
皆の視線が一点に集まる。そう、あのいけすかないイケメンチート主人公であるリオンの闘いを皆が見守っているのだ。
俺達は目で語り合った。モブ男と。闘いは一時中断して、その様子を見守ろうという事になったのである。




