表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/6

悪魔大公の屋敷にて 2

次の日の朝。


アミリアが起きあがると、トントンと部屋の扉をノックする音が聞こえた。


アミリアは急いで扉を開くと、そこにはメイドが立っていた。


「おはようございます、洗面器をお持ちいたしました。」


「あ、ありがとうございます…」


メイドが持ってきた洗面器で顔を洗う。


心地よい冷たさで顔と頭がすっきりした。


顔をふかふかの白いタオルで拭いていると、メイドが目の前にずいっとやってきて、手には衣服を持っていた。


「着替えましょう。」


「は、はい。」


「敬語は必要ございません。」


そこで会話が止まってしまい、気まずい雰囲気になってしまった。


アミリアは少し怖いオーラをまとったメイドに話しかける事も出来ずに、ただ着替えやヘアセットをされるがままだった。


身支度が終わりメイドが部屋を出ると同時に、リュカスが様子を見に来たのか、開いた扉をノックして部屋に入ってきた。 


「アミリア、おはよう。どこか体調悪かったりしない?」


「大丈夫です。」


ならよかった、とアミリアに近づき頭をポンと撫でるリュカス。


アミリアが驚き固まっていると、リュカスは話を続けた。


「あのね、今日パーティーに行かないといけないんだけど、アミリアも付いてきてくれる?」


「パーティー…?私が何故…」


「あー…皆に俺のペットだって見せびらかすの。だめ?」


アミリアは少し考え込む。


パーティーなど本でしか見たことがないのに、自分が参加してもいいのだろうか。


踊ることなんて出来ないのに。


ぐるぐる考えていたが、リュカスのあざとい困ったような顔に参加しないと申し訳なくなったのか、アミリアは参加する旨を伝えた。


「やった!じゃあパーティーは今夜だから、それまで好きにしてていいよ。あ、街には行かないでね。今度俺と行こう。」


何だか早口のリュカスに圧を感じながらも、相槌をするアミリア。


リュカスは機嫌のいい様子で部屋を出ていったので、アミリアはほっとした。


アミリアはその後、食堂で朝食を終えて、屋敷の図書室で本を読む。


娯楽小説から図鑑まで何でもあるので、この世界の本が全てあるような錯覚に呑まれそうになった。


その中で、とあるコーナーを見つける。


「絵本…!」


それは、絵本コーナーだった。


懐かしい絵本もあれば、見たことがない絵本もあり、絵本好きのアミリアにとって天国のようなコーナーだった。


色々な絵本を読み、また次の絵本を読む。


それを繰り返していると、とある絵本が目に入る。


「……花弁の、現人神?」


サリュティスの絵本でもなく、マディアの絵本でもない、何故かそう分かった不思議な絵本。


その本にはアミリアによく似た髪色の人物が描かれており、人物の周りには花弁が舞っているようだった。


ぺらりとページを一つ捲ると、そこには大きなドラゴンと戦う人物が数人いて、アミリアの髪色とよく似た人物、リュカスの髪色とよく似た人物、エメラルドグリーンの髪をした人物、青色の髪をした人物がおり、それぞれの異能らしきもので戦っている様子だった。


アミリアはそこで家で語り継がれる伝説を思い出した。


盗み聞きしたものなので断片的だったが、四人の異能を操る者が悪しきドラゴンを倒し封印した、という内容である。


「異能…私にはない特別な力…」


私も異能が使えたら、もっと違う生き方をしていたのかな。


アミリアはそう考えては悲しくなり、絵本をそっと閉じた。


だが、アミリアは知らなかった。


この本には"何も描かれていない"ことを。


存在しない絵本だということを。


悲しく、苦しくなってしまったアミリアは、長い廊下を歩き温室へ入る。


温室には様々な草花が咲いていて、綺麗な蝶々もたくさん飛んでいた。


温室のベンチを目指してまた歩き始めると、途中でみずみずしい薔薇を見つけて歩みを止める。


花弁が重なって開いていて、とても立派に咲いていた。


私も、こんなふうに咲けたら。


こんなふうに、前を向いて立派になれたら。


アミリアはまた悲観的になるも、リュカスによって考えは中止された。


「アミリア、ここにいたんだ。パーティーの準備をしよう。メイドに聞いたら女性は時間がかかるんだって。」


「……わかりました。」


「随分と暗い顔だね、大丈夫?」


「大丈夫です。」


アミリアはリュカスの横を通り過ぎて自室へと戻る。横切る時、リュカスは薔薇の香りを微かに感じていた。


_____


アミリアは目を回していた。


メイド達が大勢でアミリアを取り囲み、浴槽でマッサージと髪の毛のケアを受けて、コルセットをきつく締めて、重たいドレスを着飾って、現在は化粧をされていた。


化粧をするのは生まれて初めてで、顔をなぞる筆の感覚がこそばゆい。


どんどん自分ではないような美しい顔に仕上げられていき、唇に色を塗って化粧が終わると、アミリアはさらに美しくまるで本当に薔薇の花になったようだった。


そこへ、リュカスがタイミングよく入ってくる。


「わ、凄く綺麗だ!…綺麗だ。」


「ありがとうございます。」


「俺が緊急で見繕ったドレスだけど、サイズもアミリアに合っていてよかったよ。」


アミリアはリュカスをじっと見つめる。


いつもの彼とは違って、髪が綺麗にセットされており、パーティー用のスーツを着ている。


リュカスは顔も整っているため、一般的に見たら国宝級のイケメンと言えるだろう。


「なに?俺、かっこいい?」


アミリアはそっぽを向いて一言、はい。とだけ答えた。


耳が赤くなっていたので、きっと照れているのだろうとリュカスはくすっと笑った。


「さぁ、パーティーに行こうか。」

学生なので投稿不定期です

気に入っていただけましたらブクマや評価等お願いします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ