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濁った薔薇

レヌエット家は、異能力が強いことで有名だ。


異能力が強いほど目の色は明るく、皆輝いて見えるそうだ。


そんな中に、今回の世代には異質な者が一人いた。


名前はアミリア、やせ細っているが髪の毛は薔薇のような色をしていて美しく、フューシャのような瞳をしている。


色だけ聞くと鮮やかそうに聞こえるが、実際は濁っていて暗かった。


そのため、地下に幽閉されていたのだ。


だが、平均的に異能が開花するのは成人が近くなったらだ。


万が一アミリアが強かったら?そんなわけないだろうと考えた父親は反対したが、母親は発現して弱かったら売ればいいと主張し、アミリアは生き残ることができていた。


地下にはほぼ人が来ない為、アミリアはずっと一人で暮らしていた。


しかし、成人になる日に異能が開花することはなかった。


私は、どうなるのだろうか。


お母様の言う通りに売られて、玩具として一生を過ごすのだろうか。


アミリアはそんな想像をしては、内臓が口から出るような吐き気に襲われた。


「まったく、とんだ穀つぶしだな。お前はこれからやっと他人の役に立つんだ。光栄に思えよ。」


「……?」


「お前はこれからオークションに出るんだ。俺たちの金になれ。明日の朝に迎えに来るからな。女でよかったな。」


アミリアの予想通り、身を売って家族に金が入るオークションに出されることになった。


父親はアミリアを睨むと地下の幽閉室から出ていった。


アミリアは父親が出ていくのを確認してから、ベッドの下を確認する。


すると、中から小さなものが飛び出してきた。


「ピュティ、私売られるって…」


ピュティと呼ばれたものは、アミリアが絵本で見た茨のドラゴンに似ている。


が、その体は新品のシーツやみずみずしいライチの果肉と同じくらいに白く、何よりも目立つのは額についている桃色の宝石だった。


「ピュ?」

「…ピュティ、貴女は絶対に自由にしてあげるから。」


ある日突然現れたピュティは、すぐにアミリアに懐いて食事を分け合い共生していたのだ。


そんな大切な友達をぎゅっと抱きしめて、アミリアはこれから先の事を考えて涙を流した。 


________


時間は無情にも過ぎていき、あっという間に翌日になってしまった。


ピュティは何故か姿を見せなかった為、何か特別な力で逃げることが出来たのだろうと信じ込むことしか出来なかった。


暫くすると幽閉室の扉がノックされて、父親が縄を持って入ってきた。


「アミリア、こちらへ来い。」


「……はい、お父様。」


父親は持っていた縄をアミリアの手首を、まるで罪を犯した罪人のように厳重に縛り、首には革製の首輪を付けられて鎖でコントロールできるようにされてしまった。


アミリアは縛られた手首の痛さと、じくじくと蝕むように痛む心の痛さで涙を一粒だけ落とした。


目隠しをされてどこかへ座らされる。


ガタゴトと動く音と馬の鳴く声が聞こえた為、会場まで馬車で行くのだろうとアミリアは察しが付いた。


もう何も考えたくない、どうでもいい。


アミリアは自分についての事を諦めかけていた。


せめて、たった一匹の友達であるピュティの身を安全と幸せを願うことしか出来なかった。


馬車が止まって扉が開くと、アミリアは髪の毛を掴まれて降ろされた。


そして、首輪の鎖を力いっぱい引っ張られて無理やり進まされる。


アミリアは少し歩いた所で何処かに放り込まれる。


冷たい感覚が伝わり、錆びた鉄の匂いがしたので、檻か何かだろうとなんとなく考えがついた。


すると、遠くから声が聞こえた。


『さぁ!始まりました8回目のオークションでございます!早速一番目をご紹介します!』


どうやらオークションが開始されたらしく、元気のいい司会の声が微かにアミリアの耳に届いた。


一番目、二番目、三番目…と、順番に紹介されて、男女の値段を叫ぶ声を何回か聞いた後に、ギィ…と檻の扉が開く音がした。


「七番、出番だぞ。」


その声は父親のものではない、知らない男の声だった。


アミリアは体を濡れたタオルで拭かれた後に目隠しを外された。


目の前に入った光景は酷く、数々の檻の中にはまだ小さな女の子、動物の耳が生えた男の子、美しい尖った耳を持った女性等、様々な人々…人の形をした者達が横たわっていたり座り込んでいたりしていた。


アミリアはそんな光景に吐きそうになるも、汚すと怒られると思い必死に我慢した。


そして、鎖のリードが付いた手枷を縄の痛々しい跡が残る手首に付けられて、男は付いてくるようにアミリアに指示をした。


そして、オークションが行われている会場のステージに上がると、頭が痛くなるほどの歓声が響いた。


アミリアはステージ上の鉄の杭にリードを固定されて動けなくなった。


『続いて、七番目は!あのレヌエット家の令嬢です!異能は使えませんが、その美貌は素晴らしいものです!大人しく従順なのでお好きに扱うことが出来ます!さあ!100万からです!』


司会がそう叫ぶと、会場に来ている客の男女は次々と値段を言っていく。


そして、太った貴族らしき男が言った値段で声が静まったので、私は死んだほうがマシとも考え始めていた。 


すると、一人が手を挙げて発言をした。


「俺が買うよ、代金は…そうだなぁ…黒炎で。」


意味がわからなかった。


黒炎で払うとはどういうことだろう。


この会場にいる誰しもがそう思っただろう。


が、次の瞬間にそれを理解することになる。


「キャァァ!!火よ!!火事だわ!!!」


客の女一人がそう叫んだ。


途端に皆は慌てて押し合いながら逃げ出していく。


しかし、アミリアは杭に固定され動けない。


黒炎が辺りを燃やしアミリアにも迫る中に、一人こちらに近づいてくる男がいた。


それは、先程アミリアを買うと言った不思議な男だった。


「ね、助かりたいかい?」


男は口を三日月のように歪めながらそう問う。


しかし、アミリアは焦点の合わない瞳でこう答えた。


「どうでもいい。」


このまま死んでもいいくらいに。


アミリアは燃える黒炎を見つめながらそう答えを出したのだ。


が、続けて言葉をぽつりと零した。それは無意識だった。


「………もっと普通に生きてみたかった。」


それを聞いた男はアミリアを見るが、アミリアは自分が生きたいという願望を出した事に気づいていなかった。


男はとある提案をアミリアに持ちかける。



「君さ、俺のペットになってみない?」

読んでくださりありがとうございます。なろう初作品です。アミリアちゃんの行く末を見守って下さると嬉しいです。

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