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5-11話 『愚連隊』集結

 その少し前――。


「す、凄い……」


 二人とドラゴンの戦いを見守っていた剣人(ケント)が感嘆の声を上げた。


 戦闘は続き、蓮司(レンジ)の攻撃により左肩口が抉られ、ドラゴンが二度目の悲鳴を上げる――。


 それを見た周囲の騎士たちから「「「オオーッ!」」」という歓呼の声が上がる。

 騎士たちに交じって戦闘を見ていた剣人(ケント)も、思わず手に汗を握る。


「あんな大きな魔物を相手に……なんて人たちだ」

「当然だろう、新入り!」


 剣人(ケント)のつぶやきを聞きつけた仲間の騎士が答える。


「団長たちは強ぇんだ! 今ではオレたち公爵軍最強の騎士と魔術師だが、その前はこの国を救った伝説の冒険者パーティだったからな!」

「伝説のパーティ?」

「おうとも!」


 剣人(ケント)に答えてくれた騎士の話によると――。


 かつてグレイス王国を救った冒険者パーティがいた。

 そのパーティの名は『愚連隊』

 『硬派の騎士』レンジ・モロボシ。

 『静淑の賢者』ミオ・ジングウジ。

 『放蕩の勇者』タケル・セナ。

 この最強の三人が、二年前、人々を恐怖に陥れたSSランクの魔獣ベヒーモスを倒したという。


「そう、団長たちは冒険者時代にこのグレイス王国を救ってくださったのさ! 今回だってあのお二人がいれば、Sランクのドラゴンだって簡単に……」


 だが誇らしげだった騎士の言葉は、そこで止まってしまった。

 信じられないドラゴンの身のこなしから、蓮司(レンジ)が攻撃を食らってしまったのだ。


「ああっ! 蓮司(レンジ)さん!」

「そ、そんな! 団長たちでも無理なのか?」


 吹き飛ばされる蓮司(レンジ)の様子に、剣人(ケント)は悲鳴のような声を上げ、騎士は失意に頭を抱えた。


「くそっ、あの三人が揃っていれば……。 タケル様がおられれば……。『愚連隊』の中でも最強と言われるあの方がいればこんな事には……!」


(タケル)さんが最強?」


 仲間の騎士の言葉に、剣人(ケント)は驚き目を丸くする。


(そんなに強いのか、陽莉(ヒマリ)の兄さんは? だったら手紙だけじゃなく、早く助けに来てくれよ……)


 祈る想いの剣人(ケント)

 だが戦況はさらに悪化し、今度はドラゴンの魔法攻撃で(ミオ)が追いつめられる。


「ミ、(ミオ)さん危ない!」

「くそぉっ! タケル様さえいれば――」


 そしてドラゴンが、(ミオ)に向かって吹雪のブレスを――


 * * *


(――もうダメ、殺られる!)


 おもわず(ミオ)は目を瞑った。

 そこへ――


「おいおい、何諦めてんだよ(ミオ)さん」


 ――そんな軽口を叩きながら、いつの間にか(ミオ)の前へ立つ男。

 自分に背を向けドラゴンに対峙するその男が、いったい何者なのかを(ミオ)が確認する前に――


 ――ゴォオオオオオオオオオッ!


 ――ドラゴンの口から吹雪のブレスが吐き出された。

 その瞬間――男が剣を抜きスキルを発動させる。


「[聖剣術Lv.6]クアッドノヴァ!」


====================

[クアッドノヴァ]

 [聖剣術]レベル6の戦技。

 強力な剣撃をランダムに4発放つ。

====================


 男が剣を素早く振るうと、一瞬にして四発の剣撃が放たれる。

 剣撃は白く煌めく衝撃波となり――


 一発目がドラゴンのブレスの勢いを殺し――

 ニ発目が弱まったブレスを完全に相殺し――

 三発目がブレスをかき消されたドラゴンの口に直撃し――

 四発目が追撃となってドラゴンを仰け反らせた。


「ギャアアアアアアアアアッ!」


 ブレスを上回る攻撃で押し切られ、ドラゴンはたまらず雄叫びを上げた。

 それを行った男に、思わず目を見開く(ミオ)


「タ……(タケル)!」

「やぁ(ミオ)さん、久しぶり」


 ドラゴンのブレスを切り裂いたその男の正体は――かつて『愚連隊』のメンバーで『放蕩の勇者』と呼ばれた、陽莉の兄で『エロエロ勇者(※(テル)談)』のタケルだ。


(タケル)、いつ帰ってきたのよ!? 今まで何の連絡もよこさないで!」

「それはまた後で。まだ戦いは終わってないよ」

「――っ! わ、分かったわよ」

「それじゃミオさん。次は『氷魔法』で攻撃よろしく」

「『氷魔法』? スノードラゴンにそんなもの……」

「いいから。足元を狙って頼むよ」

「――っ! 了解!」


 (タケル)の意図を汲み取り、(ミオ)は急いで詠唱に入る。

 だがその詠唱が終わる前に、バサッとドラゴンが羽を広げた。

 ドラゴンが空へ飛び立つ前の予備動作だ。


(――ダメ、間に合わない!)


 詠唱の終わらない(ミオ)が、内心で焦った声を上げた。

 ドラゴンが羽ばたきを始め、いざ空へ浮かび上がろうとしたその瞬間――


「[槍術Lv.10]オメガストライク!」


 ――そんな声と共に、極太な白い閃光がドラゴンを襲う。


====================

[オメガストライク]

 [槍術]レベル10の戦技。

 敵を一掃する超強力な貫通攻撃。

====================


 まるで極太レーザーのような閃光は、ドラゴンの片翼を貫き吹き飛ばした。

 翼を失ったドラゴンはバランスを崩し、空へ舞い上がれずに地上に落ちる。

 その閃光の発射元に目をやると、そこには先程ドラゴンに吹き飛ばされたはずの蓮司(レンジ)が立っていた。


「ナイス、蓮司(レンジ)さん!」

「うっせーぞ(タケル)! 遅れて来ていいとこだけ持っていこうとしたってそうはいくか!」


 そうして(タケル)蓮司(レンジ)が軽口を叩き合っている間も、(ミオ)は魔法の詠唱を続けていた。

 そして――ついに詠唱が終わる。


「食らいなさい、[古代魔法Lv.6]コキュートス!」


====================

[コキュートス]

 [古代魔法]レベル6の魔法。

 氷の世界を作り出し、範囲の敵を凍てつかせる。

====================


 その瞬間、ドラゴンの足元の大地が白く輝き、広域の氷のフィールドが出現する。

 地面から凍てつく氷の世界が具現化し、ドラゴンの足を凍らせた。


「グッ、グォオオオっ!」


 ドラゴンは慌てて身じろぐが、足が地面に張り付いて動けない。

 その様子を確認した(タケル)が、ドラゴンへ向かって駆け出す。

 そして地面を蹴り、体高10メートルはあるドラゴンの、さらに頭上高くまでジャンプした。


「終わりだ、[聖剣術Lv.10]グランドクロス!」


====================

[グランドクロス]

 [聖剣術]レベル10の戦技。

 全てを切り裂く偉大なる十字の剣撃を放つ。

====================


 数あるジョブの中で[勇者]にしか与えられないスキル[聖剣術]。

 その[剣聖術]レベル10(Max)の戦技――つまり[勇者]にとっての最強の技だ。


 (タケル)が十字に剣を振るい、輝く十字の剣撃が放たれる。

 それは先ほどブレスを引き裂いた剣撃よりもはるかに大きく力強い。

 ドラゴンは必死に身を躱そうとするが、足が凍り付いていて逃げられない。


「ギャアアアアアアアアアッ!」


 断末魔を上げるドラゴン。

 そして――十字に切り裂かれたドラゴンは、ズゥウンッと地響きをあげて倒れこんだ。

 例えドラゴンとて、体躯を四つに分断されて生きているわけもない。

 (タケル)(ミオ)蓮司(レンジ)――『愚連隊』三人の勝利だ。

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