3-6話 ダメだっつってんだろ、分かれよ
そのあと澪に案内され剣人たち転移者がやってきたのは、イストヴィア城の庭園内に建てられた教会のような場所。
建物の奧には『成人の儀の間』という部屋があり、そこへ転移者三名が順番に入り『成人の儀』を受ける事になった。
「はいはい! 拙者から! 拙者から行かせてほしいでござる!」
そう言って譲らない栄太がまず最初に『成人の儀』に挑むことに。
栄太が『成人の儀の間』に入って五分ほど経過し、扉が開いて出てきた栄太は――ニッコニコだった。
「うっひょーっ! [勇者]でござる! [勇者]といえば間違いなく主人公が授かるジョブ! チートきたー!」
ステータス画面を見ながらはしゃぐ栄太。
どうやら希望通りのジョブを引き当てたようだ。
「ほら櫻井……じゃなくて剣人どの! ホラ見るでござる、拙者のジョブを!」
浮かれ切った様子の栄太が、剣人にステータスを見せてくる。
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名前:エイタ・カブラギ
性別:男 年齢:16 種族:人間
状態:なし
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【ジョブ】
[勇者Lv.1]
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【称号】
[異世界からの転移者][見習い戦士][初級魔術師]
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【ステータス】
ステータスレベル:1
HP:10/10 MP:12/12
攻撃:13 防御:4
魔力:14 魔抗:5
器用:35 俊敏:3
幸運:2
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【アクティブスキル】
[聖剣術Lv.1][精霊魔法Lv.1]
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【パッシブスキル】
[経験値×10倍][攻撃力+10P][魔法力+10P]
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【新スキル解説】
――――
――
「栄太くん、[勇者]とは随分とレアなジョブを引き当てたようね」
一緒にステータスを覗きながら澪が評する。
「うーん、[勇者]の補正が入ってるにしては、器用以外のステータスの初期値がかなり低い気がするけど……。まぁレベルが上がれば初期値なんて気にしなくて大丈夫。頑張ってレベルを上げなさい」
「任せるでござる! このままチートで俺Tueeしてハーレム三昧してやるでござるよー!」
澪にちょっぴりディスられた事にも気づかず、テンションの高いままの栄太。
「そういえば……澪さんはどんなジョブなんですか?」
「気になるの剣人くん? じゃあこれ、ステータスオープン」
剣人がふと疑問に思ったことを口にすると、澪はいとも簡単にステータスを見せてくれた。
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名前:ミオ・ジングウジ
性別:男 年齢:21 種族:人間
状態:なし
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【ジョブ】
[賢者Lv.10(Max)][大地魔導士Lv.8]
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【称号】
[異世界からの転移者][S級冒険者][特級魔術師][博識家][イストヴィア魔法騎士団長][魔術を極めし者][枯れ専女子]
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【ステータス】
ステータスレベル:46
HP:586/586
MP:819/819
攻撃:335 防御:285
魔力:580 魔抗:489
器用:339 俊敏:288
幸運:146
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【アクティブスキル】
[精霊魔法Lv.10(Max)][古代魔法Lv.10(Max)][土魔法Lv.8][ゴーレム魔法Lv.8]
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【パッシブスキル】
[経験値×10倍][HP最大値+100P][MP最大値+100P][魔力+100][魔抗+50P][魔力消費10%軽減][マルチタスク][混乱耐性(小)]
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「ぬおおっ! な、なんでござるか、この拙者との圧倒的なステータス差は!? しかもジョブが[賢者]!? 拙者の[勇者]に匹敵するレア感でござる! まさか澪どのはヒロイン枠ではなく、拙者と同じ主人公枠でござったか!」
剣人と一緒になってステータス画面を覗き込んできた栄太が
驚きの声を上げた。
その横で剣人がさらに気になることを澪に尋ねる。
「澪さんのジョブが二つ……。これって一人一つじゃないんですか?」
「最初のジョブのレベルがMaxになると、再度儀式を受けることで女神様から新しいジョブが貰えるんだよ」
「ぬっ! では澪どの! 拙者も[勇者]のレベルをカンストすれば、別のジョブが貰えるでござるか?」
「それはもちろん。でないとこれ以上スキルが覚えられなくなるからね」
「ぬぉおっ! これは夢が広がるでござるよ~! [勇者]の次はやはり[賢者]……いやここはあえてハズレジョブを引き、それが実は凄いジョブだったパターンも……」
将来に夢を馳せ、ニヤニヤブツブツと幸せそうな様子の栄太。
「ちなみに私の場合[賢者]の次のジョブは[土魔術師]の上位職である[大地魔導士]ね。このジョブは基本の[土魔法]の他にこういうことも出来るんだよ」
澪は手に魔力を集めると「[ゴーレム魔法Lv.1]サンドマン!」と唱える。
すると澪の足元から砂がせり上がり人形の姿になった。
猫程度のサイズのそれは、可愛くこちらに手を振っている。
「うぉおおおっ! こ、これが魔法!? 実際に目の当たりにすると感動するでござる!」
初めて見る魔法に感動した様子の栄太。
どうやら澪という女性はサービス精神旺盛のようで、先ほどから何でも親切に応えてくれている。
「さぁ、他に質問はある?」
そういう澪の言葉に甘えて、剣人がさらに疑問を投げかける。
「じゃぁさっき澪さんのステータスってのを見ていて気になったんですけど……」
「ん~、なになに? どれのことかな?」
「ああ、これです。この[枯れ専女子]っていう……」
「――それについては聞かないで!」
……どうやら澪にも聞かれたくないことはあるらしい。
ちなみに剣人が鑑定スキルを持っていたらこう見えていただろう。
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『枯れ専女子』
父親より年上の男性に惚れた経験のある女性に与えられる称号。
ファザコンとは違う、別のなにかだ。
習得スキル:[混乱耐性(小)]
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そうこうしているうちに、再び奥の『成人の儀の間』の扉が開く。
中から出てきたのはダークエルフの幼女――イリアちゃんだ。
栄太と入れ替わりで『成人の儀の間』に入った彼女も無事儀式を終えたようだ。
「お疲れ様、イリアちゃん。何のジョブだった?」
「んーとね、ステータスには[聖女]って書いてあるのー」
優しく澪が尋ねると、イリアちゃんは素直に答えた。
「『聖女』は回復術師の上級職だね。男性の場合は『聖人』になる、回復系魔法のエキスパート。いきなり上級職なんてすごいじゃない、イリアちゃん」
澪に褒められたイリアはエヘヘと可愛く笑う。
実にあざとい幼女である。
その様子を見ていた剣人が「そういえば……」と不思議がる。
「イリアちゃんてどうみても幼女だよな? なのに『成人の儀』なんて受けてよかったのか?」
「お主はなんにも知らないでござるなぁ剣人どの。彼女のようなエルフは人間の何倍も長生きで、年齢不詳というのが定番でござるよ」
「へぇ、そうなのか栄太? じゃあ彼女、実際は何歳なんだろう?」
気になった剣人がイリアに提案する。
「ねぇイリアちゃん。キミのステータスってのも見せてよ」
「えー、ダメだよケントお兄ちゃん。イリア恥ずかしい」
ドレスのフリルをヒラヒラさせながら、イヤイヤをするあざとい幼女。
「ダメなのか? 栄太や澪さんは見せてくれたのに?」
「ダメだってば~。ダメダメ、だーめ♡」
「何で? 別に減るものじゃないし、恥ずかしがらずに見せてくれたっていいだろう」
「だからダメだって~」
「少しくらい見せてくれたって……」
ホントの幼女と話してるような気分になった剣人はしつこくステータスを聞いてしまう。
すると――
「……うっさいなテメェ。ダメだっつってんだろ、分かれよ」
「あ、はい、スミマセンでした……」
――急に真顔になった幼女に、思わず敬語で謝る剣人だった。




