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3-5話 四年前の神隠し事件の謎

 それぞれの自己紹介が終わり、満足そうに頷く(ミオ)


「みんなよろしく。それにしてもこんな短期間に異世界転移者が現れるなんて思わなかったよ。私達がこの異世界に転移してきてから、まだ四年しか経ってないのに……」

「へぇ四年前に異世界転生を……って、アレ……?」


 (ミオ)の言葉にさらなる引っかかりを覚えた剣人(ケント)

 加えて彼女の名前から、ある事件を思い出す――。


「四年前ってまさか……『高校生神隠し事件』の事ですか!?」


 剣人(ケント)が言った『高校生神隠し事件』とは、以前に(テル)も語っていた(1-10話参照)高校生の失踪事件だ。

 事件が起きたのは四年前の白羽矢高校の屋上で、姿を消したのは当時の在校生――瀬名尊(せなたける)諸星蓮司(もろぼしれんじ)神宮寺澪(じんぐうじみお)不知火秋兎(しらぬいあきと)の四名。

 彼らが消えた後、現場と思われる屋上の床に、大きな七芒星の魔法陣が残されていたことから、彼らは異世界転移したのではないか――と、まことしやかに噂されていた。


「――そうだ、思い出した! その事件の四人の失踪者の一人が神宮寺澪(じんぐうじみお)だったはず!」

「へぇ、私たちの異世界転移って『高校生神隠し事件』なんて呼ばれてるんだ。……あれ、でもおかしいな?」


 剣人(ケント)から語られた事件のあらましに、今度は(ミオ)の方が疑問を持つ。


「失踪者が四人? こっちの世界に転移してきたのは、私を含めて三人しかいないはずだけど……」

「――えっ、本当ですか(ミオ)さん?」

「ええ、間違いないよ。私と諸星蓮司(もろぼしれんじ)瀬名尊(せなたける)の三人だけだね。あのとき屋上に居たのもこの三人だけだし、もう一人はこの失踪事件とは関係ないんじゃないかな?」

「そ、そうなんですね……いったいどういう……あ、いや、それよりも……」


 新たな情報に戸惑いつつも、剣人(ケント)はさらなる疑問を口にする。


(ミオ)さん以外の失踪者は、いま何をしていますか?」

「他の? えっと……蓮司(レンジ)は私と同じで、この都市の騎士団団長を務めているよ。(タケル)は冒険者になって、世界を飛び回っているはずね」

「――(タケル)! それって瀬名尊(せなたける)ですよね?」

「そうだけど……もしかして知り合い?」

「えっと、直接会ったことはないんですが……友人の兄なんです。瀬名陽莉(せなひまり)といって、彼女も今この異世界に来てます」


 剣人(ケント)から語られた情報に目を丸くする(ミオ)


「えっ、今回の転移者の中に(タケル)の妹さんが?」

「今は部屋に引き籠ってて、この場所にはいませんが……。それで(タケル)さんは今どこに?」

「それは……ちょっと分からないかな。私たちと別れて、冒険者として一人で旅に出てから、ここ一年ほど音信不通なんだよね。アイツの事だから生きてるとは思うんだけど……」

「そ、そうですか……。もし居たら陽莉(ヒマリ)と会ってもらいたかったのに……」


 希望が叶わずガックリと肩を落とす剣人(ケント)

 と、そこへ――


「ミオ様! 準備が整ったそうです!」


 ――そう言って一人の兵士が応接室にやってきた。

 (ミオ)はその兵士に頷いて見せると、改めて剣人(ケント)たち転移者に向き直る。


「それじゃあ予定より早いけど、『成人の儀』に向かいましょうか」

「『成人の儀』? 何ですかそれ、(ミオ)さん?」

「この世界の人間が十三歳で全員受けている儀式ね。人はそこでジョブを授かって……いわゆるゲームで言うところの魔法やスキルを覚える事ができるの」


 その澪の説明に、テンションを上げたのがオールドスタイルオタクの栄太だ。


「うっひょー! チートイベントきたー!」

「詳しい話は歩きながらするね。早速行きましょう」


 そう言い転移者を先導するように歩き出す澪を、剣人が慌てて呼び止める。


「ちょっ、ちょっと待ってください、(ミオ)さん!」

「どうしたの、剣人(ケント)くん?」

「……少しだけ時間をください」


 そう言い残して剣人は応接室を出た。


 * * *


 やってきたのは城の一角にある部屋の前。

 剣人(ケント)はコンコンとノックして、中にいるはずの彼女に話しかける。


陽莉(ヒマリ)、部屋から出てきてくれないか? 今から大事なイベントがあるらしいんだ、一緒に行こう。……頼むよ陽莉(ヒマリ)、顔を見せてくれ。友達として心配なんだ、だから……」


 だが扉の向こうからの返事はない。


「そういえば聞いているか? (タケル)さんがこの世界に来ているらしいぞ。四年前に行方不明になってた、君のお兄さんだ。一緒に会いに行かないか?」


 一縷の望みを込めて(タケル)の名前を出してみるが、やはり反応は返ってこない。


「……まだ心の整理がつかないのか? だったら待つよ、君の気持ちが落ち着くまで……。陽莉(ヒマリ)、また来る。君がドアを開けてくれるまで、何度でも来るから」


 そう言い残し、剣人(ケント)(ミオ)たちの元に戻る。


「お待たせしました、(ミオ)さん」

「この部屋の中に(タケル)の妹さんがいるんだ……。大丈夫、剣人(ケント)くん。きっと急な出来事で戸惑ってるだけで、すぐ元気になるって」

「そうですね……」


(……今は少し時間を置くしかないか)


 そうして剣人(ケント)たちはその場をあとにした。

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