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2-20話 追放モノは突然に

今回で二章終了です。

ここまで読んでくださった方、本当にありがとうございました。

このキリの良いタイミングで、ブクマや評価など、まだの方はぜひよろしくお願いいたします。


 城の廊下を連行中の(テル)に、ウェルヘルミナが楽しそうに話しかける。


「しかし不思議ですねぇ。――『七芒星に七日ごと生贄をささげよ』。これは我が国に伝わる異世界人召喚の儀式。ですが(テル)さまの世界では、異世界に渡る方法として伝わっている。異世界に呼ぶ方法と渡る方法、正反対なのに同じ儀式だなんて、本当に不思議ですわ」

「……その言い方だと、その儀式を使ってボクたちをここに召喚したように聞こえるんだけど……?」


 (テル)がそういうと、ウェルヘルミナはウフフと含みのある笑みを見せる。


「うーん、正しくは召喚ではなく横取りですわね。転移者の訪れる地、イストヴィア公爵領から」

「横取り? イストヴィア公爵領?」


「イストヴィア公爵領とは、このアインノールド公爵領と同じグレイス王国四大公爵の一つ、イストヴィア公爵の収める地。そして昔から『転移者が訪れる地』として神聖視されている場所ですわ。イストヴィア城には巨大な七芒星の魔法陣があり、代々転移者はこの魔法陣に転移されてきます」

「そんな場所が……」

「先月も女神様から『八人の転移者を送るから、迎える準備をするように』とお告げがあったそうですわ」


 その言葉に思わず目を見開く(テル)


「……って、八人! 転移者って八人もいるの?」

「そうみたいですねぇ。そこでわたくしは、イストヴィアからその転移者をかっさらおうと、七芒星の儀式を行ったのですが……。召喚できたのは四人だけ。しかも一人はどこかへ去ってしまいましたし……」

「……ち、ちょっと待ってウェルヘルミナ。さらっと言ってるけど、それってつまり、儀式のために七人の人間を殺して生贄にしたって事だよね……?」


 (テル)の疑問に対し、酷薄な笑みを浮かべるウェルヘルミナ。


「五十六人ですわ」

「……は?」

「七人じゃ転移者一人分にしかならないでしょう? 転移者八名×(かける)生贄七人で、合計五十六人ですよ」

「なっ!?」

「だけど呼べたのは四人だけ。そのうち一人はここから立ち去って、ここにいる一人は役立たず。こうなると五十六人のうち四十二人は無駄死にでしたね」

「ウェルヘルミナ、お前――! そんなことして許されると思ってるのか!?」

「おやおや、正義感に火でも付きましたか? ですがそんな余裕があるのかしら? ――さぁ、着きましたよ」


 (テル)が連れてこられたのは、最初にこの世界に送られてきた部屋だった。

 全面が石造りの部屋の床に七芒星の魔法陣が描かれ、その一角ごとにカラーコーンほどの大きさの飾り壺が一つずつ、合計七つ置かれている。


「……ねぇウェルヘルミナ。今気づいたんだけど、この七つの壺って……」

「ああ、これですか」


 そういうとウェルヘルミナは、飾り壺の一つをガシャーンと蹴り倒す。

 倒れた飾り壺からは、大量の血と肉塊が溢れだした。


「一壺八人分の心臓ですわ。召喚が終わった今となってはただのゴミですね」

「ヒィイイイイイイイイッ!!!」


 壺の中身とウェルヘルミナの言葉に、先ほどの勢いも萎み青ざめる(テル)

 そして魔法陣の中に(テル)は転がされる。

 事実を知った今では、この場所にいる事が震えるほど忌避感を持ってしまう(テル)


「そ……それでボクをどうするつもりなのさ?」


 ガクブルの(テル)が涙目で尋ねた。


「テル様については、いろいろ考えたのですよ。男とはいえ転移者、何かの役に立てないかと。ですが……」


 頬に手を当て、フゥとため息をつくウェルヘルミナ。


「勝手にこちらの秘密を暴き出し、知られたくない事をほじくり返す。どうやら[探偵]なんてジョブはロクなもんじゃない、身近にいたら大迷惑な存在だという結論に至りましたわ。なのでテル様を利用するのは諦めて、サクッと処分しちゃおうということになりました」

「し、処分……そんな……」

「あっさり殺しちゃってもいいのですが、せっかくなのでテル様で実験しちゃおうかと思っていますの」


 さも楽し気に、(テル)の今後を語るウェルヘルミナ。


「そもそも七芒星とは、火・水・風・土・光に闇を加えた魔法の六系統には当たらない、未知の七番目、時空系の魔法を示すもの。この七芒星の魔法陣も、本来は異世界召喚だけでなく、様々な時空の魔法に利用されていたそうです。なので――試しにこの魔法陣を使ってランダムテレポートでもやってみようかと」

「じ、実験? ランダムテレポート?」

「行き先を設定せず適当に飛ばしても、ちゃんとテレポートできるのかという実験ですわ」

「そのモルモットをボクに……? ひ、酷い! この鬼、人でなし!」

「そうですか? アッサリと殺されるよりはマシでしょう? 実験とはいえ、もし無事にテレポートできて、それがどこかの人里だったら、テル様の命も助かりますし、無事にここから逃げ出せたことにもなりますよ?」

「そ……それは確かに……」


 ウェルヘルミナの指摘に(テル)は一縷の望みを見出す。

 だが――。


「とはいえこの広い世界に、人間の住んでる土地なんて全体の1%もないらしいですが。残り99%は誰もいない地に飛んで、人に会う前に魔物に襲われて終わりでしょうね」

「――ってボクの生存確率SSRレベル? やっぱ酷い! この鬼、人でなし!」

「助かるチャンスを与えるだけ優しいと思いますけどねぇ」


 無慈悲なウェルヘルミナの言葉に絶望する(テル)

 そして――。


「それでは行きますよぉ。え~い!」


 ウェルヘルミナが杖を振るうと、(テル)の足元の魔法陣が光り出す。


「ちょっ! まっ! うわぁああああああああああああああっ!」


 光がとめどなくあふれ出て、(テル)の姿はその輝きの中に消えていった――。



 ――第三章へ続く。

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