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2-19話 爆破事件の裏側③

「なるほど、そういう経緯か……いや、待て。その話は少しおかしいな?」


 朔夜(サクヤ)の話を聞いた鈴夏(スズカ)が首をひねる。


「異世界で捜査情報の漏洩もないだろうから言ってしまうが……。この連続爆破事件に使われたのは『TATP』――通称『魔王の母』と呼ばれる種類の爆弾なんだ」


 鈴夏(スズカ)が語ったのは連続爆弾魔が使用した爆弾の種類。

 魔王の母とも呼ばれる爆薬『TATP(※過酸化アセトン)』は、広くテロなどにも使われるメジャーな爆弾だ。

 その理由は必要な材料が比較的手に入れやすく、作り方さえ知っていれば子供でも作れるというお手軽さからだろう。

 ――ただし!

 簡単だからと言って、無断で製造したり所持するのは当然ながら違法である。

 良い子は作ろうなどと考えないように!


「この『魔王の母』というのは簡便性の高い爆弾だ。だが他の高度な爆弾に比べると爆発力は低めで、ダイナマイトの半分以下――5分の2程度の威力といったところだろう」


 鈴夏(スズカ)の爆弾談義は続く。


「もちろん殺傷能力が高い爆弾であることに代わりは無いのだが、さすがに校舎のコンクリでできた壁を突き破って、隣にいる人間を爆死させるほどの威力はないはずだ。朔夜(サクヤ)、あの時キミが隣の部屋にいたとしても、爆発に巻き込まれるはずがない」

「それは……」


 鈴夏(スズカ)の指摘に考える素振りを見せる朔夜(サクヤ)だったが、すぐに答えに辿り着く。


「……そう、分かったわ。きっと教室の構造の問題ね」


 語られた朔夜(サクヤ)の説明によると――。


 現在の部室棟は、元々は旧校舎であった建物だ。

 旧校舎を部室棟にしようと考えられたとき、問題になったのは部屋の少なさだった。

 教室をそのまま部室にしようとすると、部活の数に対して部屋が足りない。

 そこで当時の学校は、教室を半分に分けるリフォームを行ったらしい。

 教室の真ん中に石膏ボードの壁を造り、教壇側と背面黒板側とに区切る。

 教室には前後にドアがあるので、それだけで二つの部室が出来上がるという寸法だ。

 結果――部屋の数は二倍になり、無事すべての部活に部室が与えられたという。


「つまり爆破事件の現場になったラノベ部と、私のいたアニメ部の部室は、リフォーム物件で元は一つの教室だったって事かしら」

「……なるほど、そう言う事か」


 鈴夏(スズカ)が納得したようにうなずく。


「コンクリの壁ならともかく、リフォームで後付けされた石膏ボードの壁なら『魔王の母』でも簡単に吹き飛ばせるだろうな。だとしたら朔夜(サクヤ)が巻き込まれて死んだのも納得か……」

「だけど……そうなるといったい誰が四人目なんだろう……?」


 今度は(テル)が疑問を呈す。


「あのとき爆発現場にいたのは――まずはここにいる三人。他にはボクの幼なじみである陽莉(ヒマリ)剣人(ケント)。ラノベ部の部員である影文乙女(ふみづきおとめ)。ウチのクラス担任の山本(やまもと)先生。あと……朔夜(サクヤ)さんと一緒にいたというアニメ部副部長の――」

「副部長の名前は鏑木栄太(かぶらぎえいた)よ。たしか一年だったわね」

鏑木栄太(かぶらぎえいた)……って、もしかしてボクと同じクラスの?」

「お友達かしら?」

「えっと……クラスメイトなんでそれなりですね」


 (テル)鏑木栄太(かぶらぎえいた)というクラスメイトの事を思い出す。

 顔を合わせれば挨拶をかわし、軽く世間話はする程度の関係。

 見た目は――耳に被る程度の長さの黒髪をペタッとセンター分けにし、小太りな体形で黒縁メガネをかけている。

 性格は――明るいが社交性に欠ける印象の、語尾に「~ござる」を付けるオールドスタイルなおたく口調の少年。

 それが(テル)の知る鏑木栄太(かぶらぎえいた)だ。


鏑木(かぶらぎ)くんもあの現場にいたのか……。ともかく彼も含めて全員で八名。もしかしたら他にもまだいた可能性はあるけど……」

「そうね、やっぱり有力なのはあの現場にいた八人。私たち三人を除いたら残り五人。つまり……」

「残り五人の中に、消えた四人目がいる――?」


 さらに言えば、その四人目が爆弾犯の可能性が高い。

 その事に思い当たり、三人はついつい言葉を失う。


 シィーン……と静まり返る牢屋の中。

 と、そのとき――。


「あらあら皆さん。揃って楽しい推理ごっこですか?」


 牢屋の外からのんきな言葉がかけられる。

 檻を挟んで立っていたのは、大勢の女性兵士を連れたウェルヘルミナだ。


「面白い話をしておいででしたね。消えた四人目は誰か? そういえば私、その方にお会いしていますの。よろしければその正体を教えて差し上げましょうか? 代わりにわたくしの奴隷になっていただくのが条件ですけれど」

「……無粋な事を言うのね、ウェルヘルミナ。ミステリーの犯人を先に教えるような真似をしたら、貴女を永遠に許さないわ」

「まぁ、それは残念。サクヤ様ったらこんな状況でも強気ですのね。そんな姿も素敵ですわ。けれど今は、他の方に用がありますの」


 ウェルヘルミナがパチンッと指を鳴らし、それを合図に兵士たちが、ゾロゾロと牢屋の中に入ってきた。

 そして……。


「わっ! ちょっ! 何するんだよ!」


 兵士に取り押さえられ、抵抗むなしく拘束される(テル)


「待ちなさいウェルヘルミナ! (テル)くんをどうするつもりなの!?」

「お友達の心配ですか? お優しいですねサクヤ様。でも今はご自分の心配をされた方がいいですよ? それではごきげんよう――」


 そうしてウェルヘルミナは、(テル)を連行し牢屋から去っていった。

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