2-15話 初めてのレベルアップ②
すみません、寝てて投稿忘れてました・・・。
(うぉっ! 出た! できるじゃないか二重鑑定! どれどれ……)
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[隷属魔法Lv.5]
闇属性の魔法で、魔物を隷属させることができる。魔物以外には効果のないスキル。
習得条件:ジョブ[魔物使いLv.5]の達成。
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(なんだ、魔物にしか効かないスキルなのか。[隷属魔法]だなんておどろおどろしい名前だから、てっきりヤバい魔法かと思っちゃったよ)
鑑定結果を見て、安堵し胸を撫でおろす照。
(だったらこの[クレイジーサイコレズ]って称号も、きっと名前だけで大したことは……)
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[クレイジーサイコレズ]
ただのレズビアンじゃない、とびきりサイコでクレイジーなレズっ娘に与えられる称号。
その手はすでに血で染められており、近くにいる女性は貞操の危機、男性だったら命の危機だぞ!
習得スキル:[精力増強(小)]
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(ヤベーやつ! これくっそヤベーやつじゃん!)
称号[クレイジーサイコレズ]のあんまりな鑑定結果に、ダラダラと冷や汗が止まらなくなる照。
(その手は血に染められて~って何!? 命の危機って、もしかしてボク殺されるの!? こんなのフェミニストとかLGBTQとか、そんな昨今の多様性にすら収まってなくない!? 包括性が大事な現代ですら包括しちゃいけない類の反社な人間だよね!? ヤ、ヤバい……ダメだ早く何とかしないと……)
何とか状況を打破するべく、照は頭をフル回転させる。
(いやでも、今のオレに何ができるの? うーん……どうしよう……。うーん……………………)
そうして悩んだ結果――
(………………………………よし。とりあえず今は、見なかったことにしておこう)
――問題は先送り。
それが照の出した答えだった。
(ここでウェルヘルミナ様の事を詰めても仕方ない。とにかく今は何とか凌いで、後でこっそり逃げ出せば大丈夫なはず。その時のためにも、まずは自分の能力をちゃんと把握しておかなきゃ!)
衝撃の鑑定結果から、ようやく落ち着きを取り戻し始めた照。
(てことで……ひとまず[探偵の鑑定眼]はこれでオッケーだね。次は[探偵の魔探眼]ってスキルの検証だけど……)
そして改めて自分のステータスの新スキルの欄を確認する。
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[探偵の魔探眼]
魔法の痕跡を見る事ができる。痕跡の色によって、使われた魔法の系統が分かる。
習得条件:ジョブ[探偵Lv.3]の達成。
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(効果は『スキルの痕跡を見る』ねぇ。うーん……よし、よくわかんないからとりあえず使ってみよう)
照は[探偵の魔探眼]を使用し、「何か変わったことは……」と周囲を見回してみる。
すると――周りの兵士や神官達の体から、薄く黒い靄のようなものが出ているのが見えた。
(うーん……この黒い靄がスキルの痕跡ってやつかな? なんかここにいるお城の人たち全員から出てるけど……大丈夫なのコレ? 解説によると、色でどんな魔法が使われたか分かるって事らしいけど……)
そこで照が思い出したのは、ウェルヘルミナの言葉。
『基本の魔法職には火・水・風・土・回復の五系統があって、それぞれが赤・青・緑・黄色・白色で現されます』
(……アレ? ウェルヘルミナ様の説明に黒なんて無かったよね? 黒っていったい何系統なんだろう? なんとなく『闇』って気がするんだけど……あ、そうだ!)
試しにその黒い霧に向かって[探偵の鑑定眼]を使ってみる。
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魔法の痕跡…使用魔法『闇属性』
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(やっぱり黒は『闇属性』か。でも『闇属性』ってどんな魔法なんだろう? ……って、待てよ。そういえば……)
ウェルヘルミナを鑑定したときの、[隷属魔法]についての解説を思い出す。
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[隷属魔法Lv.5]
闇属性の魔法で、魔物を隷属させることができる。魔物以外には効果のないスキル。
習得条件:ジョブ[魔物使いLv.5]の達成。
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(そうだ、ウェルヘルミナ様の[隷属魔法]が『闇属性』だったっけ。てことはもしかして、お城の皆さんには[隷属魔法]が掛けられてるって事? いやでも……[隷属魔法]は魔物以外に効果はないはずだよね? うーん……よし、だったら……)
今度は黒い霧ではなく、黒い霧を出している兵士本人に[探偵の鑑定眼]を使ってみる。
(……へ? 何で?)
思わぬ鑑定結果に驚く照。
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名前:アクネ・ターウィス
性別:女 年齢:25 種族:人間
状態:[隷属(大)]
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【ジョブ】
[剣士Lv.5]
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【称号】
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(状態が[隷属]!? 間違いない、ここにいる兵士のみんな[隷属魔法]にかかってる!? でも、人間に効かないはずの魔法がいったいどうして……?)
照は思わずウェルヘルミナを見る。
彼女には黒い靄はかかっていないようだ。
(や、やっぱりこの魔法はウェルヘルミナ様が……?)
彼女だけ『闇属性魔法』の痕跡がない――。
つまりそれは、彼女こそが[隷属魔法]を兵士たちにかけている張本人だという裏付けになる。
「それでは、転移者の皆さま。無事とは言い難いですが、これで『成人の儀』を終える事は出来ました。なので続いて『誓いの儀』を執り行いましょう」
ニッコリと笑顔で照たち三人を誘うウェルヘルミナ。
だが真実を知った今、照にとってその笑顔はとても怖いものに感じる。
「さぁ皆様こちらへ……って、大丈夫ですかサクヤ様?」
「はぁ……ふぅ……ええ。そろそろ収まってきたかしら……」
謎解きのエクスタシーからようやく回復しつつある朔夜。
彼女はまだ何の疑いも持っていないため、気軽な様子でウェルヘルミナに尋ねる。
「それよりウェルヘルミナさん、その『誓いの儀』というのはどういうモノなの? さっきの『成人の儀』とはまた違うのかしら?」
「そうですね、『成人の儀』はこの世界の誰もが受ける儀式ですが、『誓いの儀』はこのアインノールド領だけで行われている儀式ですわ。この地で生まれたものが、この地の領民であることを宣言する儀式――。といっても、あくまでただの風習で伝統行事です。身構える必要はないので、形式的にサクッと済ませていただければ充分ですわ」
「なるほど、それでいいのね。分かったわ、じゃあ案内してくれるかしら」
「はい、こちらですわ」
ウェルヘルミナが照たちを誘導する。
危険を感じながらも逆らう事が出来ず、彼女の言うとおりにするしかない照。
何も知らずに素直に従う朔夜と鈴夏。
四人が向かったのは『成人の儀の間』と対となる左側の扉だ。




