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2-2話 はじめての異世界②

(わぁあ、すごい綺麗な子だな。ハリウッド映画でも見た事ないくらいのブロンド美少女だよ)


 思わぬ佳人の登場に見惚れていると、そんな(テル)に向かって少女は華麗にカーテシー――スカートの裾を持ち、チョコンと挨拶するアレ――をして見せた。


「私はこのアインノールド城の主でウェルヘルミナと申します」

「え、えっと、惣真照(そうまてる)……じゃなくてテル・ソウマです……」


 (テル)も慌てて自己紹介を返すと、ウェルヘルミナは笑顔を見せて手を差し伸べてくる。


「テル様ですね、よろしくお願いします」

「こ、こちらこそよろしくお願いします!」


 鼻の下を伸ばしながら、(テル)はウェルヘルミナの握手に応じる。


(いきなりこんな美少女に出会えるなんて、これでこそ異世界って感じだよね! やっぱりヒロイン枠は美少女じゃないと! 可愛くないヒロインなんてエンタメじゃない、ただの政治的メッセージなんだよ!)


 異世界のテンプレお姫様の可愛さを堪能しつつ、心の中で昨今の世界的DEIトレンドをディスる(テル)。 

 と、その時――。


 二人の足元からブゥーンという唸るような音が鳴りはじめた。

 ウェルヘルミナが「おや?」と怪訝そうな声を上げ、目線を下に落とす。

 つられて(テル)も足元を見ると――先ほどの音が止まるのと共に、魔法陣から発せられていた淡い光も消えてしまうのが見えた。


「魔法陣の光が消えたと言う事は、これで異世界転移は打ち止めという事ですね」


 魔法陣の様子を見たウェルヘルミナが推測を述べる。


「どうやら今回の転移者は、テル様で最後のようです。これで四人……いえ、一人は去ってしまわれたので、全部で三人のようですね」

「全部で三人? それって……ボク以外の転移者がここにいるってことですか?」


「ええ、そうです。今ここには、テル様の他にあと二人の転移者様がいらっしゃいます」

「ボク以外に二人? もしかして……」


 二人と聞いて考え込む(テル)


(それって陽莉(ヒマリ)……じゃないよな? ハッキリと覚えてるわけじゃないけど、あの時陽莉(ヒマリ)は助かったはずなんだ。だとしたら、他にあの場にいたのは……剣人(ケント)乙女(オトメ)ちゃん? ま、まずい、陽莉(ヒマリ)の事ばかり気にしてたけど、まさかあの二人も死んじゃったんじゃ……)


 陽莉(ヒマリ)以外にあの爆発現場にいた剣人(ケント)乙女(オトメ)

 自分と同じように、二人も死んで異世界に転移しているのではと心配になる(テル)


(それにさっき、転移した四人のうち、一人は消えたって言ってたよね? それって転移してすぐここから出ていった人がいたって事? 何で? ひょっとして正体を隠す必要があった? じゃあもしかしてそいつが、ボクたち転移者の中に紛れ込んだ爆弾犯じゃ……?)


 そんな推理を巡らせる(テル)に、ウェルヘルミナが心配そうに声を掛ける。


「あの……何かお悩みが?」

「あ、いえ、大丈夫です! それよりその二人はどこに?」

「今はこの城の客間にいらっしゃいますよ。 すぐにお会いになられますか?」

「は、はい! 会わせてください!」

「それでは今から案内しましょう」


 そう言って歩き出すヴェルヘルミナに、(テル)も慌てて後を追う。


(今の段階であれこれ悩んでも仕方ないよね。まずは他の転移者に会って、それが誰なのかを確認しよう)


 石畳の部屋を出る二人に、周りの女兵士たちもそれに続く。

 ぞろぞろと行列で城の廊下を歩く中、(テル)に向かってヴェルヘルミナが尋ねる。


「それで、テル様は今の状況をどの程度ご理解しておられますか?」

「えっと……女神様から異世界転移するとは聞いていますが、それ以上詳しくは何も……」

「でしたら他の方と同じですわね。ではテル様、他の転移者様の元に付くまでに、歩きながらになりますが簡単に説明させていただきますわ。まずはこの場所の話から――」


 そうして案内を受けながら、(テル)がウェルヘルミナから聞いた話をまとめると――。


 (テル)が転移してきたのは『グレイス王国』と呼ばれる異世界の国家。

 その国内にある『アインノールド公爵領』の首都『城郭都市アインスノー』の中心にある『ノルド城』が現在(テル)のいる場所だ。

 ノルド城は『アインノールド公爵家』の当主が住まう場所であり、(テル)を迎えた美少女――ウェルヘルミナ・ディ・アインノールドこそがアインノールド公爵その人であるらしい。


「――とまぁ、これが今の状況ですが……ここまでで何か質問はありますか?」

「えっと……ウェルヘルミナ様、一つ気になってる気になっていることがあるんですが……」

「何でしょう、テル様?」


 ウェルヘルミナに促され、気になっていた事を尋ねてみる(テル)


「……何で異世界なのに日本語しゃべってるんですか?」

「ウフフ、やはり皆さん、最初にそれを聞くんですね」


 ウェルヘルミナが楽しそうに笑いながら教えてくれる。


「この国の公用語はニホン語なんですよ。この大陸では昔からニホンからの転移者が多く、その影響ですね。転移者は偉大な功績を残される方が多く、この国を建国した初代国王も日本からの転移者だと言われていますわ」

「そ、そんなにたくさん……」

「ちなみに他の大陸へ行くと日本以外の転移者が多く、国によってエイ語やチュウゴク語、スペイン語、ヒンディー語など、様々な異世界の言葉が公用語になっているそうですよ」

「マ、マジで? 転移者の影響力スゲー……」


 自分も転移者であることを忘れたかの様に感嘆する(テル)

 ウェルヘルミナから「ほかにご質問は?」と促され、(テル)は他にも気になっていたことを尋ねる。


「それじゃ……ボクたちはなぜこの異世界に召喚されたんですか? やっぱりお約束の魔王討伐……?」

「いいえ、我々が呼んだわけではありませんよテル様。我々は転移者がやってくるという女神様のお告げがあったので、お迎えにあがっただけですわ」

「だとしたら……ボクたちが帰る手段なんて、用意されてないですよね? 女神様も言ってたけど、やっぱりボクたちが元の世界に戻る方法はないんでしょうか?」

「残念ながら……。もしかしたらこの世界のどこかには、異世界へ行く方法があるのかもしれませんけれど、わたくしは寡聞にして存じ上げませんわ」


 そんな話を交わしながらも、(テル)たちは歩みを進めていく。

 そして――。


「着きました、テル様。こちらですわ」

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