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【七章終了】神様、探偵チートじゃ戦えません!【八章更新中】  作者: 雨墨篤
第七話 導かれし七人の異世界転移者たち
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7-10話 多様性と包括性の外側にいるヤベー人間

 ――翌日。

 柱の陰から周りの様子を伺いながら、(テル)がコソコソと城の中を移動していた。


「おや、(テル)どの? 何しているでござる?」


 後ろから掛けられた声にビクッと怯える(テル)


「な、何だ、栄太(エイタ)か……脅かすなよ」


 相手が乙女(オトメ)でなく栄太(エイタ)だったことに、ホッと胸をなでおろす(テル)


「……(テル)どの、何をそんなにビビってるでござる?」

「いや、乙女(オトメ)ちゃんに見つかったんじゃないかとビックリしただけだよ」

乙女(オトメ)どの……ああ、そういえばあの陽莉(ヒマリ)どのは、本当は乙女(オトメ)どのだったそうでござるな」

「……そうなんだよ。しかも今は、彼女のせいでボクの息子が大ピンチなんだ」


 (テル)は大きくため息をつくと、栄太(エイタ)に尋ねる。


「そういや栄太(エイタ)は、乙女(オトメ)ちゃんが今どこにいるか知ってるかい?」

「彼女ならたしか『成人の儀』を受けに行ったでござるよ」

「『成人の儀』って、ジョブをもらえるアレの事? 今頃受けてるの?」

「彼女はこちらに来てから、ずっと引きこもっていたでござるからな」

「そっか……でも今は彼女が城にはいないのか、ならしばらくは安心だな」


 そう言って安心した笑みを見せる(テル)

 だが――


「いいえ、『成人の儀』ならもう終わりましたよ」


 再び後ろから声を掛けられ、「ヒィッ!」と悲鳴を上げる(テル)

 振り返ったそこに居たのは――


 ――昨夜までとはまるで違う姿の乙女(オトメ)だった。


「ま、乙女(オトメ)ちゃん、その恰好は……?」

「……イメチェンしました。あのままだとあまりに陽莉(ヒマリ)さんそのものでしたので」


 ツンとした態度でそう答える乙女(オトメ)

 そんな今の乙女(オトメ)は、髪の色がミルクベージュからペールグリーンに変わっており、ウェーブのかかったロングヘアも、短めのハイポニーテールへと変わっている。

 陽莉(ヒマリ)と同じ顔立ちだが、そのビビットな髪色のせいか、それだけで全くの別人のような印象を受ける。

 さらには露出度多めの黒装束に身を包み、その様子はまるでアニメに出てくるくノ一のような出で立ちだ。


「イ、イメチェンって……髪の色が全然違うんだけど……。い、異世界にヘアカラーとかあったの……?」

「ああ、それならコレのお陰です」


 そういって乙女(オトメ)は自分の首元を指さす。

 そこには細いチョーカーが嵌められていた。


「これは髪の色を自由に変えることが出来る魔道具です。(ミオ)さんに相談したら譲ってくれました。――って、そんなことより!」

「ひぃいいいいいっ!」


 乙女(オトメ)に勢いよく睨まれた(テル)が思わず悲鳴を上げた。


「……安心してください、(テル)さま」


 怯えた様子の(テル)に、打って変わって優しい口調で話しかける乙女(オトメ)


「いえ、男に『様』付けはしたくないので、今後は『汚物』……いえ、普通に『(テル)くん』と呼ばせていただきますが……」

「……今、何気に酷い呼称がサラッと混じってたよね?」

「ともかく今後は昨夜のように、(テル)くんに襲い掛かるような事はしません。今の穢れ果てた男の『(テル)くん』は、あの『(テル)さま』とは別人です。だから私の憧れた『(テル)さま』は、あの爆発と共に死んだと思って、奇麗サッパリと忘れようと思っています」

「お、男に生まれ変わっただけでこの酷い言われよう……」

「今思うと、この『(テル)さま』に対する気持ちは、私の初恋だったのかもしれません。初恋が叶わないとなった今、この心の傷を埋めるのは、新しい恋しかないと思っています」

「は、はぁ……」


「というわけで私はチートでハーレムを目指します! ボーイッシュ少女によるボーイッシュ少女のためのハーレム! それがこれからの私の目標です!」

「そ、そうですか……」

「というわけでこれから忙しくなるので、これ以上汚物……じゃなくて(テル)くんには構っていられません。見逃してあげるので感謝してくださいね?」

「ま、また汚物って……」


 絶句する(テル)の隣で、うんうんと頷く栄太(エイタ)


「異世界と言えばチーレム。さすがは乙女(オトメ)どの、分かってるでござるな.。ところで……」


 視線を上下に乙女(オトメ)の恰好を見た栄太(エイタ)が尋ねる


乙女(オトメ)どののその恰好……。もしかして乙女(オトメ)どののジョブは……!」

「ええ、[忍者]です。なのでそれに合わせた装備をしてみました」

「ほほぅ……これは中々、目の保養になるでござる……ジュルリ」

「どうでもいいですが、あまりじろじろ見ないでくださいね、汚物二号……じゃなくて栄太(エイタ)くん」


 そのやり取りを見ていた(テル)は、乙女(オトメ)ちゃんが嫌ってるのはボクだけじゃなく男全般なのか……と学習する。


(それにしても[忍者]ってどんなジョブなんだろ?)


 気になった(テル)は[探偵の鑑定眼]を使ってみる事に。


====================

 名前:オトメ・カゲフミ

 性別:女 年齢:16 種族:人間

 状態:なし

====================

【ジョブ】

 [忍者Lv.1]

====================

【称号】

 [異世界からの転移者][見習い戦士][初級魔術師][クレイジーサイコレズ]

====================

【ステータス】

 ステータスレベル:1

 HP:25/25 MP:28/28

 攻撃:13 防御:10

 魔力:12 魔抗:13

 器用:20 俊敏:15

 幸運:8

====================

【アクティブスキル】

[忍術Lv.1][忍法Lv.1]

====================

【パッシブスキル】

[経験値×10倍][攻撃力+10P][魔法力+10P][精力増強(小)]

====================


「ぬぁあああっ!」


 その鑑定結果に、思わず声を上げる(テル)

 何故なら――


(ク、クレイジーサイコレズ……)


 ――そこには、在ってはならない称号があったからだ。


====================

[クレイジーサイコレズ]

 ただのレズビアンじゃない、とびきりサイコでクレイジーなレズっ娘に与えられる称号。

 その手はまだ血に染まってはいないが、近くにいる女性は貞操の危機、男性だったら命の危機だぞ!

 習得スキル:[精力増強(小)]

====================


(これって解説は微妙に違うけど、ウェルヘルミナの持っていた称号と同じものだよね? う、嘘でしょ……ウェルヘルミナと同じ多様性と包括性の外側にいるヤベー人間がまた一人……)


 学校で見た姿――黒髪メガネの文学少女――から変わり果ててしまった乙女(オトメ)を見て(テル)は嘆息する。


(ボ、ボクはもしかして、とんでもない化け物を世に解き放ってしまったのではないだろうか……?)


 彼女が引きこもっていた部屋の扉を開けてしまった事を後悔しながら、(テル)と他の来訪者たちとの再会は、無事(?)終了したのであった――。



 ――第八章に続く。

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