7-7話 導かれし七人の異世界転移者たち①
――すっかり日も暮れ、夜も遅くなった頃。
「どうして朔夜先輩が一緒に来るんですか? 邪魔ですよ」
「剣人くんこそどうして付いて来るのかしら? 死ねばいいのに」
そんな険悪な二人を連れて、照は再び陽莉のいる部屋の前にやってきていた。
コンコン……と扉をノックし、中にいるであろう陽莉に呼び掛ける。
「ねぇ陽莉、中にいるんでしょう? また話をしに来たよ」
中からの返事は無いが、照は構わず続ける。
「キミから本当の事が聞きたいんだ。ねぇ……キミは本当に陽莉なのかな?」
そう言って返事を待つ照。だが返事よりも先に、剣人が照に尋ねてくる。
「『本当に陽莉か?』って……どういう意味だよ、照?」
「ボク、一つ思い出したことがあるんだ。爆発に巻き込まれ、意識が薄れていく最中、ボクは陽莉の声を聴いたはずなんだよ。それもはっきりした声で、ボクを呼んでいるようだった。だからてっきり陽莉は助かったんだと思っていた。でもその後、陽莉がこの世界に来ていると聞いて、陽莉も死んでしまったのかと思うようになっていたんだけど……」
照は今までの事を思い返しながら言葉を続ける。
「だけどもし爆破事件から陽莉が助かっていて、この世界にいる陽莉は、イリアちゃんのように姿だけが変わった他の人間だったとしたら? そう考えると一つだけ、腑に落ちることがあると気が付いたんだ」
「腑に落ちる事……っていったい何かしら?」
次に尋ねてきたのは朔夜だ。
照はスマホを取り出し[探偵手帳]のスキルを発動させる。
「スマホ? まだ使えるのか照? 俺のはとっくに充電切れなのに」
「ああ剣人、それは[探偵]のスキルのおかげだよ。といっても使えるのは[探偵手帳]ってアプリ一つだけだけどね」
「それで照くん、そのアプリで何をやってるのかしら?」
「簡単なメモ書きをしてて……ちょっと待ってくださいね朔夜さん」
[探偵手帳]のアプリを立ち上げた照は、そこにメモ代わりに文字を打ち込んでいく。
そして全てを打ち終わると、「これを見てください」とスマホ画面を朔夜と剣人に向けた。
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①イリア・マキノ(牧野唯理亜)
②エイタ・カブラギ(鏑木栄太)
③ヒマリ・セナ(瀬名陽莉)
④ケント・サクライ(櫻井剣人)
⑤サクヤ・シノノメ(東雲朔夜)
⑥スズカ・シラヌイ(不知火鈴夏)
⑦テル・ソウマ(惣真照)
番外…謎の8人目
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スマホ画面を覗き込みながら、意味が分からずに二人は首をひねる。
「照くん、何なのかしらこれは?」
「朔夜さん、これはこの世界に異世界転移してきた順番を書き出したものです」
照が朔夜の問いかけに答えると、続けて剣人も質問してくる。
「ふーん順番ねぇ。でもこれ、何でカタカナ表記なんだ?」
「それはこの世界のステータス表記に合わせたからさ。ステータス画面の名前の欄は、漢字が使われず、ファミリーネームじゃなくファーストネームが先に表記されてるだろ」
「じゃあ、この番外というのは?」
「ウェルヘルミナだけが会った事のある8人目の来訪者の事だよ。ウェルヘルミナがいない今、名前も姿もわからない正体不明の人物だね。一応書いてはみたけど、正体不明だし今は関係ないかな。除外して①~⑦の順番について考えてみよう」
照はアプリのメモ欄から番外の項目を消すと、そのまま推理を続ける。
「剣人も朔夜さんも、この世界に送られる前に、全身真っ白な格好をした女神を名乗る少女に会ったでしょう? その女神様に対して、ボクがある質問をしたんです」
――――
――
『そういや転移するの、僕が最後って言ってましたよね? もう転移しちゃったってことは、ボクより先に死んだ人間? というか女神様、死んだ順番に転移してるんですよね?』
それが照の質問。(※1-15話参照)
それに対し女神の答えは――。
『ち、違います違います! 転移は死んだ順番じゃくて……あっ!』
――――
――
「――って凄く動揺してました。この返答の仕方から考えて、少なくともボクたちをこの世界に送るのに、何かしら決められた順番があったという事ですよね?」
一旦言葉を区切り、二人の様子を確認する照。
「うーん、まぁそうなるのかな? でもそれがどうしたんだ照?」
「あら、剣人くんは気にならないの? 異世界転移した順番の法則、私は気になるかしら。照くんはそれに関して、女神様から他に何か聞いているの?」
二人の相槌に応え、再び照が口を開いた。
「残念ながらその後、女神に何度しつこく尋ねても教えてくれませんでしね。だから勝手に推理してみまたんです。今回の異世界転移の順番にどんな法則があるのか」
「順番……だけどこの表の並びに明らかな法則性は見当たらないわね」
「そうですね朔夜さん。このままでは何の順番にもなっていません。ですが……③番目の陽莉を外して、もう一度確認してみてください」
照はそう言うと、さらに陽莉の欄も消して二人に見せ直す。