売り場
「はい、どーも、ダブルテンテンツでーす!」
「皆さん、名前だけでも覚えて帰ってくださいねー」
「いや、おれらの名前を売るだけじゃアカンやろ。ちゃんと仕事せな」
「へえ、仕事って?」
「そら決まっとるやろ……顔を売ることやぁ」
「同じ意味やろ! お客さんようさん集めて、この店の商品をちゃんと買うてもらわなあかんでホンマ」
「あいよ、ほな、さっそくやりましょーか」
「はいよ、ショートコント『ロボット売り場』」
「ふっー、ここがロボット売り場かぁ。なんかわくわくしてきたなぁ」
「するかボケアホンダラいらっしゃいませー」
「どえらい店員さんが出てきたなぁ。今の職場に不満ありありやないか」
「ささ、お客さん、どれになさいますかねぇ! うちのはどれも自慢の商品ですよ!」
「いきなりやなぁ。でも、どれも自慢の商品ってホンマですかぁ?」
「ええ、ええ。右から別嬪さん別嬪さん、一つ飛ばさず別嬪さん! はいはいどれになさいますか! どれでも一緒ですよこんなもん!」
「全部同じようなもんって言うてもうてるやないかい!」
「今なら一つ買うともう三つ、ついてくるんですよぉ!」
「いらんわアホ。せいぜい二つまでやろ。燃料代がぎょうさんかかるわ」
「ご心配なく。なんとここにある最新式モデルは四体で、従来のモデル一体分の燃料しか必要としません!」
「え? ホンマに!? そらすごいわぁ、技術革新甚だしいなぁ」
「ただし寿命も四分の一です」
「あかんやないかい! そんなもん処分に困るだけや!」
「ご心配なく。当店にお持ちいただければ処分費用は無料とさせていただきます」
「へぇー、そらありがたいなぁ。せやけど自分、使いまわしとったりせえへん? ちゃんと新品で売っとるんやろ?」
「……ご心配なら確かめてみますか? どうぞご自由に話しかけてみてください」
「気になる間があったなぁ。ほな、聞いてみるか。おいロボット! 自分、新品か?」
「ハイ、シンピンデス……と、コタエロと店長からイワレテマス」
「あかんやないかーい!」
「このようにしっかりと命令を聞くんですねぇ」
「いや、バラシてもーてるやん。主の意図汲んでへんやん」
「そういう不出来なところもぜひ、かわいがってやってください! どうかお一つ! 殴ってしつけてやってください!」
「殴るって、そないなことしたらアカンやろ……」
「ちなみにお客様、どのような用途でロボットをお買い求めに?」
「うーん、ストレス解消やな」
「殴るやん」
「最近、運動不足なんや」
「だから殴るやん」
「一緒に散歩に行きたいわぁ」
「殴らんのかい!」
「つまり、まあ、ペットやな」
「なるほど。最近、多いですからねぇそういうお方。まあ、自動車の運転にしろ何しろ、最近はオートですし、大抵のことは自分でできちゃいますからねぇ」
「そうそう。で、飽きたら、ここで引き取ってくれんのやろ?」
「ええ、ええ、もちろんですとも。しかも、モールの駐車場代は無料です!」
「だから来たで」
「え? 引き取りですか? でも、どこにロボットが……」
「ここや」
「って、自分、ロボットなんかーい!」
「一人で歩いて行けって、主人にむっちゃ殴られたわ」
「殴られとるし! 自分もうスクラップ行きやぁ! はい、どうも、ありがとうございましたー!」
「……だーれも足を止めへんな」
「ほんまやなぁ。どないするこれ。一個も売れへんで」
「しゃーないやん。お笑い難しいねん」
「やなぁ。しっかし、そんなつまらんかったかぁ? クソボケがぁ……」
「どうどうどう。あ、せやけど名前は覚えられたやん」
「は? 誰に? 最後まで聞いた客なんておらんやろ」
「いや、おるやろ。ほらあそこ。店長さんに」
「いや、嫌な覚えられ方!」
「……ふっ」「ははは……」
「お? こん人ら、今わろたで」
「ホンマやな。おら、もっと笑えや! ボケェ!」
「おいおい、商品に当たり散らしても……おお、ええぞ。なんやなんやと客が寄って来たわ」
「ええやん、ええやん。もういっぺん初めからやろうや」
「なあ……」
「ん?」
「置き換えてみーひん?」
「あ? 何と何をや」
「ロボット売り場をや。今どき、やっぱ受けへんで自虐は。時代の流れみーひんとな」
「あー、まあ、できるか。見たまんまで、わかりやすいしな。うっし! じゃあ、ショートコント! 『人間売り場』」