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第八話 決戦

 グレイとシャロットが月光狼の拠点に火を放って、十数分後、私はその中に入り込んだ。


「さあ、一戦交えようじゃないか.....!」


 目の前には5匹の月光狼。

 中央にいるのがボスだろう。周りの奴と別格だ。


 私の魔導炉では対処できるだろうか?

 いや、射程の中にいるが、すべてに対応できるほど出力がない。

 ここは、剣を使うしかなさそうだ。


 魔導剣リドール

 私のために打った剣だ。

 魔力を流し、刀身を熱くする。


 それを見た途端、狼たちが行動を始めた。

 ボス以外が私の後ろへと回り込もうとするのだ。


 私は剣を振るう。

 一匹の狼をかすめるが、直撃はしない。

 後ろに回り込まれるのはまずい。

 おそらくボスを私の相手にさせ、その他4匹はその隙を狙おうとしている。


 私は数を減らすために反撃覚悟で一匹を狙う。

 剣を大きく振りかぶり、振り下ろす。

 熱の籠った刀身は月光狼の体をバターのように切ってしまう。


 しかし、相手もただでは死なない。

 切られた狼は私の腕に噛みつき、離さない。

 私の背中にボスの猛攻が来る。


 カンッという乾いた音が巣穴に響く。

 少しへこんだか?

 これだと鍛冶師に叱られると思いつつ、ボスの攻撃を魔法で跳ね返す。


「あと4匹.......!」


 私はポーチからライターと油を出し、ボスとその他2匹に牽制の炎を与える。

 炎が巣穴を照らす中で私は、残った一匹に魔法で急接近し、頭に剣を突き刺す。

 だが、ボスは炎など構わず、こちらにかぎ爪を振りかざす。

 剣で何とか塞ぎ切るが、他の狼が私の背中を狙う.....!


「鬱陶しい!」


 一匹は魔法で吹き飛ばせたが、もう一匹が私の背中に突進してきた。

 どうやら、相手には私の急所がわかるらしい。


 魔導剣に魔力を多く送り、ボスの爪ごと切る。

 ボスは後ろに下がり、壁を蹴って再び攻撃を仕掛ける。


 私は他の狼どもの相手をするため、そこにあった小石でボスを目潰しする。

 そしてさっき吹きとばした狼に急接近し、とどめを刺す。


「あと2匹....!」


 私の服がところどころほころびているが、気にする暇はない。

 一匹分なら魔導炉の出力が足りる。

 私は子分の狼を魔法で持ち上げ、そのままボスに吹きとばす。


「終わりだ.....!」


 私は稲妻のような速さで二匹に近づき、鬼神のごとく一刀両断する。

 ボスは最後に牙を向けようとするが、そのまま横たわった。


「ふう.......後は月光鼠の巣を潰すだけだ。」


 今回は二人なしでは対処できなかった。

 もしこれが10匹で襲い掛かってみろ、私は剣すら振るえないだろう。


 グレイとシャロットが心配だが、二人なら大丈夫だろう。

 5匹程度でやられる弟子じゃない。



—--------------------------



「グレイ!どうするの.....!」


 逃げた狼はおそらく町の方へ行った。

 くそ、俺が町に誘いこんだようなものじゃないか....!

 町には柵のようなものしかない。


 とにかく、俺が行くしかない。


「シャロットさん、ここで待てますか!?」

「ええ、大丈夫よ。

 それと、行くならこれを持っていきなさい。」


 シャロットは彼女の魔導炉と杖を渡してきた。


「シャロットさん、それでは....」

「いいから、行きなさい!」

「....じゃあこれを。」


 俺は自分の杖と魔導炉を渡した。

 狼が町に行ったとも限らない。

 シャロットにはここで警戒してもらうのがいいはずだ。


「気を付けてください、ここにも狼が.....」

「だから、はやく行きなさい!!」


 俺は自分を魔法で名一杯吹きとばす。

 意識が飛びそうになるくらい背中が痛い。

 しかし、間に合わなければ元も子もない。


 木々の間を抜け、バイクに乗ってた時の感覚を思い出す。

 前世は自分のがむしゃら、自業自得だ。

 しかし、今は人の命がかかっている。

 出力を全開にして町に向かう.....。





 町に近づくと人が叫ぶ声が聞こえる。

 くそっ、遅かったか。

 しかし、俺はひたすらに加速する。

 

 見えたのは......煙突の上に、人の子供を咥えた月光狼だった。


「子供が!」

「誰か!戦える奴を呼べぇっ!」


 落ち着け、状況は!?

 町の中に入ると人々は狼をランプで照らし、騒いでいた。

 子供は1歳くらいだろうか。

 聞こえるのは助けを求める声だ。


 しかし、これでは安易に攻撃できない。

 たぶん、狼は子供を人質にしているのだ。

 自分に攻撃するならこいつを殺すと....。


 刑事ドラマでは、こういう時には狙撃部隊を使う。

 犯人を遠くから狙撃し、人質を救出する。


 しかしそれは狙撃銃があってのことだ。

 今、俺が持つのはスコープもない長杖と、シャロットから渡された大きめの魔導炉。

 感覚で言えば魔法が効く射程が14m、小石等の有効範囲が50mあればいいところだ。


 今、俺と狼との距離は40m強。

 小石が頭に当たれば即死だ。


 しかし、“当たれば”だ。

 外したら?

 こっちに気付いて子供に危害を加えるかもしれない。

 下手すれば噛み殺すだろう。


 それに、子供に当たるかもしれない。

 俺はその責任を負えるのか?

 最善を尽くしたなんて言えるのか?


「誰か!助けてくれ!俺の子供なんだ!」


 こうなったのは俺の責任だ。

 俺が狼をこっちの方向に引き寄せたんだ。

 俺が、俺がやるべきだ。


 俺は魔導炉を背負い直し、そこにあった木箱を杖の足にする。

 杖を構え、小石を手で握る。


 くそ、手が震える。

 ゲームではマウスを握る手が震えたことなんてなかった。

 ただ、撃ち抜くだけ。

 失敗したらやり直しが効く。


 しかし、今は本物の命がかかってる。

 子供は気絶しているのか、もう死んでいるのかわからない。

 ただただ、引き返せないのだ。


 魔法の射程内ならいくらでも融通が効く。

 方向を補正し、一直線にするのだ。

 イメージだ。

 出来ると思わなければ失敗する。

 失敗は許されない。


 俺は小石を杖の先に投げる。

 浮遊が出来れば成功率が上がるだろうが、今は考えない。

 ありったけの魔力を、そして精密なコントロールを。


 俺は小石を吹きとばす.......。

 すべてがスローに見える。

 小石の方向をぎりぎりまで補正し、魔力を籠めまくる。


 小石が射程外に出た。

 まっすぐ、狼の額に向かう。

 とんでもない速さだ、しかし俺にはすべてゆっくりに見えた。


 打ち抜いた。

 狼が煙突から崩れ落ちる。


 やばい、子供が!

 俺は自分の体を吹きとばし、子供の元へ向かう。

 子供は重力加速度に従って落ちていくが、俺は加速度を上げて子供をキャッチする。


 俺は子供を抱きかかえて、家の屋根に転がり落ちる。


 町の人々が歓声をあげ、俺を取り囲む。

 子供は.....鼓動を感じる、大丈夫そうだ....。

 

 背中に激痛が走る

 やばい、意識が飛ぶ.......






 目が覚めた時、シャロットが俺を覗き込んでいた。


「......!助かったのね、よかったわ。」


 シャロットが俺に向かって微笑む。


「あなた、無茶しすぎよ。少しくらい自分を労わりなさい。」

「狼は....?」

「討伐成功よ。シーナももう戻ってきてるわ。」

「そうじゃなくて、あの子供は?」

「もちろん助かっているわ。」


 ほっとしたのか、俺はまた眠り込んでしまった......。



この作品はひとまずここで締めようと思います。

あまり上手くいかなかったこともありますが、執筆活動と生活の両立が取れなくなってしまうためです。


この物語の続きは、またいつか出そうと思っています。

最後まで読んでくれて、ありがとうございました。

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