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君と駆ける······  作者: 志賀 沙奈絵


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891話


 12月23日(月曜日)


 毎年恒例の凱央と純也の誕生日とクリスマスと忘年会と雄太の全国リーディング一位を祝うという盛り合わせ会が、雄太宅のリビングで開催されている。


「凱央。誕生日おめでとうな」

「じゅん兄ちゃん。たんじょうびおめでとう」


 凱央の誕生日当日に誕生日会をしてやれる事は少ない。家族全員が揃ってお祝いしてやりたくても、当日に雄太が競馬でいない事もあるからだ。


 昨日、誕生日だった純也も当日に祝えないのが大半だ。


「トチオニイチャン、オメデトウ」

「オメエト、トチオニイタン」


 悠助も俊洋も、大好きな凱央の誕生日を祝っている。


「ありがとう、ゆーすけ。ありがとう、としひろ」


 凱央は可愛い弟達と順番に乾杯をする。


 ソファーの上に並んでいるのは、大きなクリスマスブーツだ。


「サンタさんが、凱央の誕生日に合わせて一日早くきてくれたんだぞ」


 食事前に雄太の説明を受けた幼い子供達は嬉しそうに笑って抱き締めていた。


 凱央のプレゼントは新しい乗馬用ブーツとレギンス。悠助のはクレヨンや画用紙。俊洋のはトウモロコシ原料のお菓子。


 凱央のは誕生日というのもあり奮発されている。


「お前等、本当に可愛いな」


 楽しそうに食事をしている三人を見て純也が目尻を下げる。


「ソル……。なんか言い方がおっさん臭いぞ……?」

「だぁ〜れぇ〜がぁ〜、おっさんだっ⁉」


 同級生に言われたくないと純也がキャンキャンと喚く。


「ほら、塩崎さん。ローストチキン焼けましたよ」

「春さんっ‼ マジ天使っすっ‼」


 焼き立てのローストチキンにつられた純也に雄太はヤレヤレと肩をすくめた。


 春香はクスクスと笑いながら、子供達用に取り分けてやる。


 雄太と純也は関節を上手く外すようにしながら骨付きでかぶり付いていた。


「熱っ‼ でも、うまっ‼」

「熱いのは当たり前だっての」


 ハフハフと言いながら純也は幸せそうだ。ツッコミを入れている雄太も湯気がたつローストチキンを頬張っている。


「クリスマスっていうと骨付きのモモ肉焼いた奴だったよな。照り焼きみたいな味の」

「そうそう。テレビで見た七面鳥がスッゲェーって思ったよな。足先についてる白い紙のヒラヒラしてる奴」


 雄太と純也の話を聞きながら春香は少し上のほうを向いて何か考えているようだった。


 雄太は春香が子供の頃、照り焼き味の骨付きモモ肉も食べた事がないんだろうなと思った。


(思い出したくもない事を思い出させてしまったか?)


 雄太が何かフォローの言葉をと思っていたら、春香が真面目な顔をして見詰めてきて雄太は少し身構えた。


 純也も春香の過去を思い出したのだろう。少し、頬が引きつっているようだ。


「ねぇ」

「え? 何?」


 雄太は平静を装って笑いかけた。


「あの七面鳥の足についてる白いピラピラしたの何て名前だっけ?」

「へ?」

「ほぇ?」


 一瞬の沈黙の後、顔を見合わせてゲラゲラと笑った。


「あ、思い出した。チャップフラワーだった」


 また一瞬の沈黙の後、今度は三人でゲラゲラ笑った。春香がまた子供の頃を思い出して悩んだりしてるんじゃないかと思ったが、まるで違っていた事が雄太は嬉しかった。


 食事を終えてマクマクとケーキを食べていた子供達は、突然笑い出した大人達をキョトンとした顔で見ている。


 その時に、凱央が窓の外を見て目をキラキラと輝かせた。


「あ、パパ。ママ。じゅん兄ちゃん、ゆーすけ、としひろ。ゆきだよ、ゆき」


 皆が揃って窓の外を見ると、空からフワリフワリと雪が舞い落ちてきていた。


「ユキ〜。ツモルカナ?」

「ユキダウマ、チュクレル?」

「積もると良いね」


 悠助と俊洋は目を輝かせて春香に訊いていた。


「あ、そうだ。クスクスツリーの電球を点けてくるよ。楽し過ぎてすっかり忘れてた」


 雄太は立ち上がり、外に出て電球を灯した。イルミネーションがキラキラと煌めき始める。


 春香が腹に手を当てながら、窓に近づいた。


「綺麗だね、雄太くん」

「ああ。綺麗だ」


 子供達もワラワラと春香の横に立った。純也もにこやかに外を見ていた。







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