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君と駆ける······  作者: 志賀 沙奈絵


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888話


 春香の妊娠が分かってから、慎一郎と直樹はウキウキワクワクソワソワと浮足立っていた。 


 雄太は調教終わりには自宅に電話をし、自宅に戻ってからも春香の体調を気遣っていた。


「春香。体調は大丈夫か?」

「うん。もう安定期に入るしね」


 妊娠に気がついたのが遅かったからか、安定期は目前だ。しかも、悪阻も全くなかったし、体調も良好だ。


(良かった。妊娠に気づいてなかったとはいえ、あの犯人をブン投げたとかいうんだもんな。よく流産しなかったよ……)


 慎一郎も直樹も妊娠報告をした時に一番最初に思ったのは、雄太と同じような事だった。




(生理周期安定しないのは相変わらずなんだよね。でもなぁ……。とりあえず診てもらったほうが良いよね?)


 誕生日の三日前、ほんの少しの違和感と女の勘で、理保に相談をしてみた。理保は、病院に行く事を奨めた。


 『妊娠か妊娠じゃないかっていう事もだけど、万が一病気だったりしたら困るでしょう? 安心をする為に病院に行ってらっしゃい』


 翌日、金曜日の午後。雄太が調整ルームに行った後、子供達を預かってもらった。


 『雄太には言わないの?』


 もし妊娠ではなく何かの病気だとしたら雄太は心配するだろう。土日のレースに影響が全くないとは言えないかも知れない。


 今までが大丈夫だっていっても、今回は違うかも知れないと思うと、日曜日に帰ってきてからか、翌日月曜日で良いかと思っていたのだ。




 子供達は今まで以上にお手伝いをしてくれている。ヤンチャ盛りの俊洋がグンッとお兄ちゃんぽくなった。


「マッマ。アカタンマダ?」

「まだよ。赤ちゃんも俊洋お兄ちゃんに早く会いたいよって言ってるよ」

「ウン」


 眠くなったりした時に抱っこをせがむ甘えん坊の部分がなくなった。スキンシップがなくなる事が淋しかった春香が、俊洋の隣にそっと寄り添ってやるとペタリとくっつくのが、まだまだ可愛い三歳児だ。


 俊洋と悠助を寝かせた後、雄太が待っているリビングへと春香は向かう。


 ホットミルクを作ってくれていた雄太の隣に座る。


「今日も一日お疲れ様」

「雄太くんもお疲れ様」


 雄太がそっと春香の腹に手を当てる。


「まだポコポコしないなぁ〜」

「もう。お父さんと同じ事言うんだから」

「うぅ。だって、あのポコポコが楽しみなんだって」

「困ったパパだねぇ〜」


 春香はクスクスと笑いながら、雄太の手に自分の手を重ねる。


「この子は、俺がいる時に生まれてきてくれるかなぁ……」

「ん〜。二月末だし28日より前なら大丈夫かな? でも、雄太くんが調教に行ってる時だったら無理だよね?」

「まぁな。調教ルームに入ってからよりは良いかな。仕事終わりに会えるし」


 金曜日以降だと会えるのは月曜日になる。


「なぁ、パパのお願いだぞ。三人子供がいて、まだ一回しか立ち会えてないんだから、パパがいる時に生まれてくれよな?」

「ふふふ。こればっかりは分からないけど、私も雄太くんが一緒が良いな」


 今度は里帰り出産はしないと春香は決めていた。三人の子供の荷物と新生児用品を運んでの里帰り出産はさすがに大変だと思ったのだ。


 何より凱央の学校がある。凱央だけ慎一郎宅に預けるという事も考えたが、子供達を離れ離れにしたくないという事で里帰りをやめた。


(お義父さんは、めちゃくちゃ落ち込んでたけど、仕方ないよな)


 直樹と相反して、理保は孫の面倒も春香の面倒も任せろといった感じで気合いが入っていた。


 慎一郎も協力すると心強い言葉をくれた。


 『凱央の乗馬の付き添いや悠助達の風呂の世話もしてやる。なんなら一緒に寝たりもしてやるから、春香さんには安心して四人目を産んで欲しい』


 不安な要素はどこにいてもあるよなと雄太は思い、万全の体制を整えようと考えた。


「あ、悠助の部屋を造るのを早めようと思うんだ。里帰りしないなら、昼間に父さんの家にいたり出来る今の内に」

「そうだね。そうしようか」

「よし。さっそく悠助の好みを訊いて、見積もりをとってもらわないとな」

「うん」


 春香の出産準備や悠助の幼稚園の準備など、色々と忙しくなった雄太宅だった。






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