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君と駆ける······  作者: 志賀 沙奈絵


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878話


 画用紙を横に置いてテーブルに置いた自由帳を開いて、お庭キャンプ計画の詳しい話を一生懸命に雄太達に説明する。


「えっとね、尚くんパパのテントをたてるところからはじまるんだよ」

「せのたかくないキャンプようのテーブルももってきます」

「ごはんは、できるだけそとでたべたいんだよ」

「ぼくたち、まだりょうりができないから、かんたんなのをおしえてもらえますか?」


 凱央と尚道が考えて書いてある自由帳には、キャンプをする為に用意する物やお互いの父母にお願いする物などが書かれていた。それを一生懸命に伝えている。


 雄太がその自由帳の1ページに目をとめた。


(これは……)


 1ページ目に書かれていたのは消しゴムで消されたキャンプをする日付けだ。


(……誘拐事件がなかったら、もっと早くキャンプをするつもりだったんだな……)


 凱央と尚道の怪我は順調に回復し、二人の膝に少し跡が残っているだけになっている。


 誘拐を企んだ犯人は金に困っていて、大きな農家なら金持ちだろうと思って尚道を誘拐する事にしたと供述したと後日警官から聞いた。


 多少の競馬関係の知識があったらしく、競馬の賞金の全部が騎手に入らないから騎手は思った程金がないだろうと思うから尚道をターゲットにしたと言っていたらしい。


 雄太の家は防犯カメラが多数あり、映る事を恐れたと言っていたそうだ。


 春香と当日の予定のやり取りをしている凱央達は目をキラキラ輝かせていて、自由帳にあれこれ書き足している。


「うん。ちゃんと決まってきたね。凱央、尚道くん。ここまでで何か質問はある?」

「はい、ママ。よるのトイレはどうしたらいい?」

「ウッドデッキの出入り口のドアの鍵を開けておくから大丈夫だよ。それ以外でも何か困った事があったら、私の部屋にきてね?」


 凱央が質問をすると今度は尚道が手を挙げる。


「さっきトキくんママがいってたスポットクーラーってなんですか?」

「うちがバーベキューしたりしてる時に使ってる奴なの。んと……パイプから涼しい風がブーンって出てくる機械なの。そのパイプの先をテントの中に入れたらテントでも涼しく寝られるんだよ」

「それってキャンプでつかうものなんですか?」


 尚道が不思議そうな顔をして春香を見詰める。


「尚道くん。スポットクーラーを使うっていうのは暑くて眠れないとか、熱中症になったりしたら大変だからだよ。本格的なキャンプをやってる人達からはおかしいって言われるかも知れないけど、お庭キャンプなんだし、凱央と尚道くんが安全に楽しむって事が一番大切なんだ。分かったかな?」

「はい、わかりました。ありがとうございます」

「ありがとう、パパ」


 雄太に言われて凱央と尚道は満面の笑みを浮かべた。


(そう言えば、俺とソルは親に黙って馬房で寝ようとして怒られたりしたよなぁ〜。それを踏まえると、凱央と尚道くんはちゃんと許可をもらおうとか計画してて賢いんだよな。うわぁ……。俺、スッゲェー恥ずかしくなってきたぞ……)


 自分の子供の頃を思い出し顔が熱くなるのを雄太は感じていた。


 そして、視線を悠助達に移した。その視線に気づいた悠助達がテッテッテと雄太に近づいてくる。


「パーパ。オハナシオワッタ?」

「ん? 終わったよ。悠助も俊洋もお利口さんだったな」

「パッパ。アソボ」

「ああ」


 雄太達が真剣な顔をして話している時は大人しくしている事が出来るようになった二人の頭を撫でる。


 春香と凱央達は食事のメニューや飲み物の話をしていて、雄太は春香に任せて悠助達と遊びはじめた。


(庭キャンプ……。凱央達の真夏の冒険って感じか? まぁ、俺ん家の庭だけどな)


 それでも友達と二人で外のテントで寝るというのは、小学一年生の二人にはドキドキとワクワクで楽しみなのだろう。


 頭をくっつけるようにしながら笑顔で、まだ自由帳に何か書き込んでいる。


(しばらく外が怖いとか思ってビクつく事がなくて良かったな。庭キャンプ楽しんで欲しいよな)


 事件の後、凱央は春香と一緒に寝ていた。尚道も同様だったと聞いていたから、今の無邪気な様子を見ていてホッとした雄太だった。







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