857話
帰宅した雄太達は凱央の卒園祝いと雄太の誕生パーティーを始めた。
凱央達の帰りを待っていた慎一郎達も一緒にワイワイとやる。
「凱央。小学校も頑張って行くんだぞ? 4月からは乗馬もな」
「ボク、ガンバッテモモチャンニウマクノレルヨウニナル〜」
「凱央が一人で上手く乗れるようになれたらジィジも嬉しいぞ」
慎一郎は目を細めて凱央の頭を撫でる。
「おっちゃん、マジで孫が可愛いんだな」
「子供より孫のほうが可愛いって言うもんな。しかも、凱央が乗馬に興味あるから尚更だよな」
「悠助は馬が好きってのは分かってるけど、乗馬に興味はねぇの?」
「あ、言ってなかったっけ? 悠助もポニーに乗せてやった事はあるぞ」
凱央がモモちゃんに乗りにいった時に悠助も乗せてもらっていたのだ。
凱央が初めてポニーに乗った時と同じように真剣な顔で乗っている悠助を見て、慎一郎は満足そうに笑っていたのだった。
「そっか。悠助も騎手になりたいとか言ったりするのかなぁ〜」
「どうだろな。まぁ、なりたいなら精一杯サポートするつもりだぞ」
慎一郎と凱央の写真をこっそりと撮っていた梅野が雄太達の所へやってきた。
「慎一郎調教師、本当良い顔するよなぁ〜」
「孫にメロメロっすよね」
「孫バカだからな」
三人で顔を見合わせて声を押し殺して笑った。そして、春香と理保も小さく笑っていた。
卒園祝いと雄太の誕生祝いは無事にお開きとなり、子供達が寝静まってから夫婦水入らずの時間だ。
ソファーに並んで座って、春香は雄太の腕に頭を預けた。
「雄太くん」
「ん?」
「大好き」
「俺も春香が大好きだ。プレゼントも嬉しかったぞ」
雄太へのプレゼントは誕生日当日に渡していた。真新しい腕時計は、今の歳に似合うシックな物だ。
初重賞の記念に春香が贈ったタグ・ホイヤーはコレクションルームに飾ってある。その後、プレゼントされた腕時計も一緒にだ。
「雄太くんからもらったワンピースは入学式に着るね」
「ああ。入学式に急な仕事が入らない事を祈っててくれよな?」
「うん」
雄太から春香へのホワイトデーの贈り物は薄いピンクのワンピースだ。桜の季節にピッタリな色合いだ。
春香自身は未だにピンクの洋服を選ぶ事がないが、雄太は濃い色味でなければ春香はピンクが似合うと思っている。
「一緒にもらった付け襟って便利だよね。あれ雄太くんが考えて選んでくれたの?」
「まぁな。店員さんに相談したら、白の付け襟って同じワンピースでも雰囲気が変わるから良いですよって教えてもらったんだ」
祝勝会やパーティーだけでなく、今後子供達の入園式卒園式、入学式や卒業式などに、同じワンピースを着ていたら雄太がケチ臭いと言われないかと、里美が春香に相談されたと聞いたのだ。
里美はレースの上着やボレロを着たらと言われ、春香がいくつか買ったと報告を受けていた。
それを覚えていた雄太はショップで着回しが出来るようにと買い求めていたのだった。
「白いレースだから他のワンピースにも使えるよね。白いフリルの上にレースを重ねても良いかも」
「俺、そういう事には疎いからなぁ〜。でも、春香が喜んでくれるのが一番だ」
「うん」
贅沢しても良いと言っても、春香は悩んでしまう性格だと分かっている。
雄太自身も生活全部を贅沢したい訳ではない。いつ騎手を辞めなければならないとか、長期間休まなくてはならない怪我をするか分からないのが騎手という仕事だと理解しているから、しっかり貯蓄はしておきたいと考えているからだ。
「凱央の入園式はワンピースにボレロを羽織ったら良いかな?」
「そうだな。イヤリングはピンクパールの奴が良いな」
寄り添っていた春香が体を起こして、雄太の顔をジッと見る。
「へ? どうした?」
「雄太くんって、私に可愛い格好させようとするよね? どうして?」
「俺が自慢したいからだぞ? 可愛い春香を連れて、『どうだ。俺の妻は可愛いだろ?』ってドヤ顔したいんだ」
「わ……私はもう二十九歳で……。可愛いとか……」
顔を赤らめた春香を思いっきり抱き締めて、続きの言葉を言わせないようにキスをした雄太だった。




