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君と駆ける······  作者: 志賀 沙奈絵


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848話


 1月29日(月曜日)


 1月25日に俊洋は二歳の誕生日を迎えていた。


 今日、凱央が幼稚園から帰ったらパーティーをすべく春香は飾りつけと料理の下拵えをしていた。


「凱央。準備出来たか?」

「デキタヨ」


 通園バッグを肩にかけ、帽子をかぶった凱央はニッコリと笑う。春香が忙しいだろうと、幼稚園へ送って行くのは雄太だ。


「パーパ。ボクハ、ママノオテツダイスル〜」

「よし、悠助。頑張ってお手伝いするんだぞ?」

「アイ」


 目線を合わせて悠助の頭を撫でる。


「パッパ。ルンビレキタ」

「……俊洋。トウモロコシは置いて行こうな?」


 俊洋の声に振り返ると、トウモロコシのぬいぐるみをヒシッと抱えていた。


 夏より背は伸びたが、それでもトウモロコシは俊洋の姿を隠してしまう。


「チュレテクノ」

「ん〜。あ、そうだ。ちょっと待ってろよ?」


 雄太は階段下の物置に行き、荷造り用のビニール紐を手にしてリビングに戻った。


(えっと……これぐらいか?)


 適当な長さに切り、トウモロコシのぬいぐるみを俊洋におぶわさせた。


「よし。これで手を繋いで歩けるぞ」

「アイ」


 黙って見ていた春香は口元を押さえてクスクスと笑っている。


「じゃあ、幼稚園に行くぞぉ〜」

「ハ〜イ。ママ、イッテキマス」

「マッマ。イッチェキマチュ」


 玄関まで行くまでに俊洋の背からはトウモロコシがズリズリとズリ落ちてきていた。その所為で俊洋も歩きにくさを感じているらしく、後ろを振り返っている。


「俊洋。トウモロコシくん落ちてきてるから、お留守番しててもらおうね」

「ン。オウスバンチテテ」


 春香が紐を解いてやると身軽になった俊洋は、雄太と凱央と手を繋いで幼稚園に向かって行った。




 凱央を幼稚園へ送って行った雄太と俊洋はケーキを取りに行く前に東雲に寄った。


「俊洋。良い子にしてたか?」

「ジィジ〜」


 店の自動ドアを開けて、カウンターにいる直樹に向かって俊洋は走り出す。直樹はカウンターの中から出てきて俊洋を抱き上げる。


「すまんな、雄太。俊洋のプレゼントだってのに取りにきてもらって」

「いえ。お義母さん、今日は勤務だっていうんだから仕方ないですよ」

「まぁな。俊洋、お前のリクエストのプレゼント買っておいたぞ」

「ジィジ、アート」


 直樹は数日前に買い物にきたついでに寄った俊洋に何が欲しいのかと訊いたのだ。




「春。俊洋はお誕生日に何が欲しいとかあるのか?」

「え?」

「心配しなくても高い物は買ったりしないから。たまには孫の欲しい物を買わせてくれよ」

「ん〜。高くないなら良いかな?」


 直樹は、俊洋に向かってニッコリと笑った。そして、オモチャで遊んでいた俊洋に声をかけた。


「俊洋。俊洋は何が好きなんだ?」


 俊洋は顔を上げて直樹を見た。


「オウマタン」

「……さすがに馬は……買ってやれないんだが……?」


 直樹が頬をヒクヒク引きつらせながら笑った。春香が笑いを堪えながら俊洋に質問を投げてみた。


「俊洋。好きな食べ物はなぁに?」

「トーモロコチ」

「トウモロコシ? 俊洋はトウモロコシが好きなのか?」

「ウン。トーモロコチシュキ」


 俊洋はドヤ顔をして直樹に答えていた。


 直樹はもう一度春香を見ると、春香は頷いた。


「春、トウモロコシってどういう奴だ?」

「缶詰めのコーンで良いの。生のは時期的に無理だしね」

「確かに、生のは夏だしな。よし、分かった。春、買っておくよ」

「うん。良かったね、俊洋」


 凱央と悠助の誕生日を見てきたとは言え、まだしっかりと分かっていないのか、俊洋はキョトンとした顔をしていた。


「ジィジが、俊洋にトウモロコシを買ってくれるって」

「ジィジガ……トーモロコチ?」

「うん。お誕生日プレゼントにって」


 考えて考えて分かった俊洋は、直樹にテッテッテと近づいた。直樹が抱き上げるとギュッと抱きついた。


「ジィジ、アート」


 直樹の目尻は際限なく下がった。




 そして、雄太は直樹が買っていたコーンを二箱車に積む事となった。


(誕生日のプレゼントがコーン缶って)


 忍び笑いが止まらない雄太だった。






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