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君と駆ける······  作者: 志賀 沙奈絵


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844話


 ある程度食事を食べた子供達にケーキをカットしてやると、黙々と食べ始めた。


 それを見ていた純也がスススっと雄太に近づいた。不思議そうな顔をする雄太のほうを向き、小さな声で訊ねた。


 その様子に気づいた梅野も近寄る。


「あのさ、雄太ん家のクリスマスケーキって何でサンタとか乗ってる奴にしないんだ?」

「え? ああ。ほら、あれって子供にしたら欲しい物だろ? どの子に食べさせても、もらえなかった子にしたら悲しいと思わないか?」

「確かに〜。美味いとかは別として欲しがるよなぁ〜」


 サンタや雪だるまを模した砂糖菓子は子供には魅力的だ。三人共欲しいと思うだろう。


「ジャンケンとか、順番って言っても理解出来ないかもだから、フルーツ系のケーキにしてるんだよ」

「成る程な。誕生日のはプレートに名前書いてるから納得出来るもんなぁ〜」

「確かになぁ〜」


 子供達が果物が好きだからフルーツタルトやイチゴがいっぱいのケーキにしているのも理由ではある。


「一人っ子なら、そんな心配はないけどさ。ケーキに乗ってるサンタで喧嘩させたくないんだよ」

「俺も、結婚して子供が複数になったら参考にさせてもらおっと」

「俺もだ」


 純也も梅野も、まだ結婚の予定はない。と言うより特定の相手すらいない。それでも『いつか』と思っている。


「結婚かぁ……。俺さ、鈴掛さんの結婚式を見てて、結婚ってのも良いなって思ったんだよな」

「あ〜。俺もだぁ〜。今直ぐって訳じゃないけどさぁ〜」

「鈴掛さん、本当に幸せそうで良かったって思ったよな」


 三人にとって良き先輩の鈴掛が、元妻と娘に傷つけられて、二度と人を愛さないのではないかと思うぐらい凹んでいた時、雄太達も胸が痛かった。


 激しく落ち込んでいたのが、少しずつ浮上していくのを見ていたが吹っ切れるまで時間がかかっていたのも知っているだけに、結婚式の晴れやかな笑顔は嬉しかったのだ。


「あ、そうだ」

「ん?」

「へ?」


 雄太が思い出したようにポンと手を叩いて席を立った。そして、そのままリビングを出て行った。


「なんだ?」

「さぁ〜?」


 純也と梅野は顔を見合わせた。春香も何か分からずに、雄太が出て行ったドアを見ていた。


 しばらくして雄太は手に封筒を持っていた。雄太は春香にその封筒を差し出した。


「私に?」

「ああ。春香に見て欲しい物だよ」


 春香はそっと封筒の中を覗いた。中には写真が入っている。取り出して見ると、それは仔馬の写真だった。


「仔馬の写真? え? え?」

「仔馬?」

「おお〜。可愛いじゃないかぁ〜」


 雄太は深く頷いた。


「これはアルの子供達だよ。で、こっちはカームの子供達だ」

「アルと……カームの子供達……。可愛いね」


 小さくフワフワホワホワとしていて、クルンとした目で母馬と寄り添っている。馬着から出ている短い尻尾も愛おしいと思ってしまう。


「パパ、アルノアカチャンカワイイネ」


 いつの間にか凱央は春香の手にしていた写真を覗き込んでいた。


「ああ。可愛いだろ?」

「ウン。パパハ、コノコニノルノ?」

「どうだろうな。もし乗る時がきたら応援してくれよな?」

「ウン」


 凱央は目をキラキラさせてずっと写真を見ていた。それを見た春香は雄太を見た。


「雄太くん。このアルの仔馬の写真を凱央にあげても良い? 誕生日プレゼントの代わりに」

「そうだな」


 雄太は写真の中からアレックスの仔馬の写真を手に取って凱央に差し出した。


「ボクガモラッテモ……イイノ?」

「良いよ。ママに写真立てとか額とか買ってきてもらって飾れば良いから、な?」

「アリガトウ、パパ。オネガイネ、ママ」

「うん。今度お買い物に行った時に買おうね」


 凱央の顔がパァーっと輝いた。大好きなアレックスの仔馬の写真は、誕生日プレゼントは要らないと言った凱央の部屋に飾られる事になった。


 産まれた仔馬の全てが競走馬としてデビュー出来る訳ではない。デビューが出来ても、アレックスのように重賞を獲れるとは限らないのだ。


(いつか……凱央も知る事になるんだよな)


 この仔馬達に乗って勝てる姿を見せたいと思った雄太だった。






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