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君と駆ける······  作者: 志賀 沙奈絵


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番外編 凱央のバレンタインデー


 2月14日はバレンタインデーだ。毎年、春香は一ヶ月も前からどんなチョコレートにするか悩みまくっている。



(雄太くんのは甘過ぎなくて小さいので、子供達のは……どうしよう……?)


 色々考えるのも楽しいと思っている。そして、そんな春香を見ている雄太もワクワクしている。


(春香からのチョコが欲しいって夢にまで見たよな)


 その時の夢は今でもはっきり覚えていて、思い出すたびに若かったなと思ってしまう。


 雄太が思い出し笑いをしていると、ふと春香が視線を向けた。


「……なんかエッチな事考えてる?」

「ご……誤解だっ‼」


 慌てて誤魔化すが、唇にチョコソースを塗ってもらってキスしたいと考えていたからあながち間違いではない。


(春香って……。普段ポヤーってしてるのに、たまに鋭い……)


 内心大汗をかいている雄太に凱央がテッテッテと近づいてきた。


「パパ、ナンデズットママヲミテルノ?」

「え゙……。えっと、パパはママが大好きだからだぞ」

「ボクモ、ママダイスキダヨ」

「そうだな。きっとママも凱央が大好きだぞ」

「ウン」


 ニッコリと笑った凱央は、少し首をかしげて雄太をジッと見た。


「とうかしたのか?」

「アノネ、ヨウチエンノ……。ウウン。ヤッパリイイ」

「え? あ、凱央?」


 何か言いかけてやめた凱央は、悠助達とオモチャで遊びだした。


(何だったんだ?)


 その後も何か言う事はなく、バレンタインデー当日になった。




「ママ。コレモッテ」

「え? あ……」


 トテトテと教室から出てきた凱央の通園バッグのファスナーは大きく開いていて、制服の裾を持ち上げていた。


 バッグの中や制服を持ち上げているところにあるのは、可愛いリボンのついた紙袋だ。しかも複数ある。


(凱央、モテモテだぁ〜)


 困り顔の凱央を可愛いと思いながら、春香はリュックの中からビニール袋を取り出した。制服の上に乗せていた紙袋をビニール袋に入れてやり、通園バッグから溢れそうないくつかを入れてやった。


「アリガトウ、ママ」

「今年もたくさんもらえたんだね」

「ウン」


 昨年もたくさんのバレンタインのプレゼントをもらった凱央だったが、今年は更に増えている。


 チョコレートだけでなく、クッキーやチョコケーキなどもあり、昨年は食べきれないので純也を呼んで食べてもらったりしていた。


(やっぱり雄太くんの子だなぁ〜)


 悠助と手を繋いで歩いている凱央の背中を見ながら、将来どれだけのチョコレートが届くのだろうと思うと嬉しいような、それでいて子離れが淋しい気持ちになるんだろうなと複雑な思いをもった春香だ。




「え……。これ凱央のか……?」

「うん」


 ダイニングテーブルの上に並べてあるカラフルな紙袋達を見て雄太は目を丸くする。


「いつものオヤツ置き場に置いておくと俊洋が食べちゃうから、ここに置いてるの」

「成る程な。それにしても凱央モテモテだな」


 感心している雄太を春香はジッと見た。


「え? 何?」

「雄太くんも、モテモテだったんだろうなって思って」

「そんな事なかったぞ? まぁ、もらった事がないとは言わないけど」

「うん」


 雄太がチョコのプレゼントをもらっていたのは確かだが、殆どを純也が食べてしまっていたというのは、純也から聞いていた。


 『チョコ食べてくれた?』と女の子に訊かれて、『ソルが食べた。美味かったってさ』と素直に答えて、女の子を怒らせた事も聞いた。


「何にせよ、お返しが大変そうだな」

「そうだね〜。食べる前に名前を控えておかなきゃ」


 春香が一つずつ名前をチェックしてから、ケーキなど足が早い物を凱央は悠助達と分けて一緒に食べた。




 後日、3月14日のホワイトデーに凱央は春香に手伝ってもらいお返しを配っていた。


「アリガトウ。オイシカッタヨ」

「アノネ、トキオクン。スキナオンナノコイルノ?」


 お返しを渡した女の子に訊かれた凱央はニッコリ笑って答えた。


「モモチャン」

(凱央……。モモちゃんは女の子じゃなくて牝馬……)


 春香は苦笑いをしながら、答え方も雄太に似ていると思っていた。






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