841話
「ナニャウ、ラエイエア〜」
俊洋は凱央達のダンスに合わせて踊っていた。しかも、歌詞を適当に歌っているのがおかしくて雄太達は忍び笑いをしている。
歌詞はちゃんと覚えられてはいないが、振りは完璧だ。最後のポーズまでバッチリとキメた俊洋はドヤ顔をしていた。
「俊洋、本当にダンス上手ね」
「アイ。バァ〜」
「はい、俊洋。お茶飲んで」
「マッマ、アート」
理保の膝の上に座ってお茶をゴクゴクと飲んでいる俊洋の頬はピンクになっている。
「踊って汗かいたでしょ? お茶飲んだらお背中拭き拭きしようね」
「ン」
悠助はというと、雄太の膝の上で体を揺らしてはいるが俊洋のように踊りはしなかった。
(性格って兄弟でも全く違うんだな)
一人っ子の雄太には分からない事だった。恐らく春香もだろう。
個性豊かな三人の子供達と成長を見る暮らしは大変な事も多いが楽しいと思っている。
徒競走で凱央が走る番がくると雄太と慎一郎、悠助と俊洋の声援が飛ぶ。綺麗なスタートをきった凱央はグングンと加速をして一着でゴールテープをきった。
「凱央ぉ〜っ‼ 行けぇ〜っ‼」
「そのままっ‼ 突き抜けろっ‼」
「ガンバレェ〜」
「バンバエェ〜」
「凱央〜」
「やったぁ〜。一着〜」
雄太と春香は抱き合って喜んだ。昨年に引き続き一着になった凱央は、雄太達のほうに向かって手を振っていた。
昼休憩となり、凱央は雄太達のところへとやって来た。
「ボクガンバッタヨ。ミテテクレタ?」
一着になった事、上手く踊れていた事も皆に褒めてもらい凱央はニコニコと嬉しそうに笑う。悠助と俊洋は大好きなお兄ちゃんの凱央の隣に陣取り弁当を食べ始めた。
「ママ、オイシイ〜」
「オニギリ、オタワリ」
「マッマ、ボッコリ」
「はいはい。ブロッコリーね」
兄弟揃って美味しそうにお弁当を食べている姿は微笑ましい。慎一郎も理保も目尻が下がりまくっている。
雄太は凱央と午後から親子競技に出るから少々緊張気味だ。
「雄太くん? どうかした?」
「え?」
「お弁当食べないの? ずっとプログラム見てるけど……」
「親子競技、ちゃんとやれるか不安で……」
「大丈夫だよ。一緒に走って、雄太くんが風船を膨らませて凱央にもたせて、ソリに乗せてやって走るだけだから」
春香が一生懸命に説明してくれる。
「何で……知ってんの? あ、去年の年長さんのを見てたからか」
「うん。先生に競技の内容は一緒ですかって訊いたら変わってないって事だったよ」
「そっか」
春香の説明でなんとなく分かり、雄太はいなり寿司を頬張った。しっかりと味がしみた油揚げを噛みしめる。
(うま……。これ食ったら勝たなきゃって思うよな)
昨日からせっせと下ごしらえをしてくれていたはずだと思うと精一杯頑張らなきゃと思った。
そして、親子競技の呼び出しがかかる。
「凱央、頑張って一番になろうな」
「ウンッ‼」
雄太と凱央は向かい合って気合いを入れていた。そして、慎一郎までもが拳を握り締めている。
(お義父さんったら。やっぱり、雄太くんにそっくりだぁ……)
親子競技に出る保護者達と園児達が入場してきて、春香と子供達のテンションが上がる。
「雄太くん、凱央。頑張ってぇ〜」
「パーパ〜。ニィニ〜」
「パッパ〜。ニィニ〜」
雄太と凱央は全く危なげなく一着になった。ゴールをした雄太が凱央を高く高く抱き上げて喜んでいる。
(雄太くん、本当に嬉しそう。見にこられて良かったね)
そして、一番盛り上がるプログラムを迎えた。輪投げの輪をバトンにしたリレーは、毎年かなり盛り上がるのだ。しかも、凱央はアンカーを任されている。
「行けぇ〜。凱央ぉ〜‼」
「凱央ぉ〜。差せっ‼ そこだっ‼」
競馬かと思う声援を送る雄太と慎一郎は、興奮して立ち上がっている。
「もう少しだっ‼ 凱央ぉ〜‼」
「凱央ぉ〜っ‼」
ゴール手前で追い抜いた凱央が一着でゴールテープをきった。
「やったぁ〜‼」
「良いぞっ‼ さすが、儂の孫だっ‼」
大盛り上がりした凱央の幼稚園最後の運動会は無事に終わった。




