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君と駆ける······  作者: 志賀 沙奈絵


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839話


 10月8日(日曜日)


「ママ、テルテルボウズデキタヨ〜」

「凱央、上手ね」


 リビングで春香と凱央はてるてる坊主を作っていた。リビングテーブルの上には雄太が作っていたてるてる坊主も複数置いてある。


「ウンドウカイ、パパキテクレルヨネ?」

「うん。パパ、凱央がかけっこ一番になるのも、上手くダンス出来るのも見てくれるよ。もちろん明日と明後日のレースも頑張ってくれるからね」

「ウンッ‼」


 ニコニコと笑う凱央は連日運動会の練習をしていたから少し日焼けをしている。


 そして、週末明けの月曜日の天気が心配だと言った雄太が出掛ける前にてるてる坊主を作っていたのだ。


 雄太のてるてる坊主を見て、凱央も作りたいと言って今に至る。


「マッマ。コエ、アニ?」

「てるてる坊主だよ」

「テウテウオウズ?」

「お天気になぁ〜れってお願いするお人形……かな?」


 俊洋は、春香が手渡したてるてる坊主を目を丸くしながら見ていた。


「コレ、ドウスルノ?」

「ウッドデッキに吊るすんだよ」


 悠助もてるてる坊主を手にして揺らしている。そう言えば悠助と俊洋にてるてる坊主は見せた事がないなと思っていた。


「マッマ。コエ、ホチィ」

「ん? 欲しいの?」

「マーマ。ボクモ〜」

「うん。良いよ」

「アイアト」

「アリガトウ、マーマ」


 悠助と俊洋はてるてる坊主を手にしたまま遊び出していた。


「凱央。後もう少し作ろうか?」

「ウン。オテンキ二ナッテホシインダ。パパニミニキテホシイカラ」

「そうだね」


 たくさんのてるてる坊主を作り、ウッドデッキに出て手摺てすりに一つずつくくりつける。


「テルテルボウズ〜テルボウズ〜」

「明日天気にしておくれ〜」


 春香と凱央がてるてる坊主をくくりつけていると、悠助と俊洋はてるてる坊主を持って庭に出て走り回っていた。


「あら? 悠助、俊洋。可愛いてるてる坊主ね」

「ア、バァバ。ミテミテ。カワイイヨネ」

「バァ〜。テウテウオウズ」


 理保はサンダルを履いて庭に出てくる。悠助と俊洋は理保にてるてる坊主を見せている。


 理保には運動会の日付けを教えていたから、てるてる坊主の意味を分かっていて、ウッドデッキで笑っている春香と凱央に視線を向けた。


「春香さん。たくさんのてるてる坊主作ったのね」

「はい。雄太くんが今年の運動会は絶対見たいからって作ってから調整ルームに行ったんですよ」

「ふふふ。あの子らしいわね」


 ウッドデッキに近づいた理保は、一つのてるてる坊主に手を伸ばし、マジマジと見ながら、理保が吹き出した。


「これ、雄太が作った奴ね?」

「え?」

「春香さん、気づいてなかった?」


 理保はてるてる坊主のお腹あたりの布を広げて見せた。


 春香が覗き込み笑みをもらした。


 『絶対晴れにしてくれ』


 雄太が書いた言葉が本当に運動会を見たいのだなと思って、他の雄太が作ったてるてる坊主を見る。


 『今年こそ凱央の運動会が見たいんだ』


 春香はクスクスと笑いながら理保にてるてる坊主を見せる。理保もクスクスと笑う。


「雄太くん、どうしても凱央の運動会を見たいって言ってて。金曜日に、私に『布ないっ⁉ それと綿?』って」

「実は、お父さんもなのよ。凱央の幼稚園最後の運動会を見る為に、月曜日の予定を入れないって豪語してたんだから」


 慎一郎らしい言動に、春香は吹き出した。そこに悠助と俊洋がてるてる坊主を持ってウッドデッキにきた。


「マーマ。コレモ、カザッテ」

「マッマ。コエモ」

「もう、良いの?」

「ウン。マーマ、アリアト」

「マッマ、アート」


 飽きたのかと思って走り出した二人を見ていると、赤トンボを追いかけていた。


「ママ。ボクモイッテクル〜」

「うん。行っておいで」


 凱央は手にしていたてるてる坊主を春香に手渡し、悠助達のところへ走って行った。


「凱央の運動会も、もう最後なのよね」

「ええ。でも、悠助や俊洋の運動会もあっという間ですよ?」

「そうね」


 理保はウッドデッキに上がって、てるてる坊主をくくりつけるのを手伝ってくれた。


 明日の天気予報は晴れだ。はずれないようにの祈りながら。






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