827話
日曜日も春香達は1Rから札幌競馬場にいた。
「ママ。パパハ、イツハシルノ?」
「パパは2Rだよ。あ、ほら。純也お兄ちゃんだよ〜」
凱央達が馬場に目を向けると、本馬場入場してきた純也がいた。
「ジュンニイチャン、ガンバレェ〜」
「ジニィニ〜」
凱央達はピョンピョンと飛び跳ねながら純也の応援を始めた。俊洋もベビーカーに乗りながら手をフリフリとして純也に声援を送っている。
本当ならパドックも見たかったのだが、まだ俊洋には『静かにするように』と言われても分からないだろうという事で行く事はしなかった。
(俊洋も来年になったらパドックにも行けるよね)
春香はパドックの様子をビジョンで眺めて雄太と馬の無事と完走を祈っていた。
1Rは純也が一着となり、雄太は残念ながら五着だったが、4Rに一着になった。
「パパ、カッタァ〜」
「パーパ、パーパ〜」
「パッパ〜」
子供達は嬉しそうにキャッキャと喜んでいる。その姿は、きっと雄太にも見えていただろうと思う。
「パパにおめでとう言わないとね」
「ウン。ママ、ボクオナカヘッタ」
「ボクモ〜」
「コオッケ、タベチャイ」
「そうだね。次のパパのレースまでにご飯食べちゃおうか」
子供達を連れて昨日と同じように売店に行くと、店員や競馬好きなおじさん達が手助けをしてくれた。
「オジチャン、アリガトウ」
「アリガトウ〜」
「アイアト」
子供達にお礼を言われて喜んでいるおじさん達の姿は、春香の自称父親達の姿が重なって見える。
(北海道の人達って本当に優しいな。嬉しい)
美味しい北海道の食事を堪能して、また雄太や純也達のレースを見に戻った。
雄太だけでなく、純也と梅野の応援にも力が入る。もちろん、雄太と一緒に走れば雄太が優先だ。
「雄太くん、頑張れ〜」
「ジュンニイチャン〜、ガンバレ〜」
「マーニィチャン、ガンバレェ〜」
「マニィタン〜、ジニィタン〜」
メインレースまでに純也は二勝、梅野も二勝を上げていた。雄太はまだ一勝だったから、春香は雄太の勝利を願っていた。
(雄太くん……、雄太くん……。頑張って雄太くん……)
メインレースである札幌三歳ステークだ。本馬場入場をしてきた雄太の姿に子供達はテンションは爆上がりしていた。
雄太は三番人気で、梅野は十番人気だ。札幌競馬場でも梅野の女の子の人気は凄かった。
(梅野さんはモテモテだなぁ〜)
人気があってもなくても応援する女の子達のを見ていて、自分と同じだなと春香は微笑ましく見ていた。
(私も頑張って応援しなきゃ)
返し馬、輪乗りを経てゲートに入っていく馬達を見ながら両手を握り締めてる。
ゲートが開き、雄太は先行集団につけ、梅野はその後の集団につけていた。
青々とした芝を蹴散らしながら、十五頭の馬達がスタンドに近づいてくる。
「雄太くんっ‼ 頑張ってっ‼」
「パパ〜っ‼」
「パーパ、パーパっ‼」
「パッパ〜」
4コーナーを周り直線に入り、馬群の中にいる雄太と梅野が見えてきた。まだ一塊に近い感じだった。
残り百メートルといったところで、雄太がグンッと前に出たが、その後を梅野が追い縋っている。
「おぉ〜っ⁉ 人気薄がくるかっ⁉」
「まだタレないのかっ⁉」
「千二で距離が長いとかだと、走るレースが限られるぞっ‼ 行けぇ〜っ‼」
観客席から、先頭に食らいついている梅野の馬に驚きの声が上がった。
おじさん達に混じって、若い女の子の声も聞こえる。
「もう少しぃ〜っ‼」
「頑張ってください〜っ‼」
「真希さぁ〜んっ‼」
凱央達も精一杯声援を送っている。
「パパァ〜っ‼ パパァ〜っ‼」
「パーパ〜っ‼ ガンバエェ〜っ‼」
「パッパ〜‼」
グンッグンッと後続馬を突き放した雄太は三馬身差の快勝だ。
「カッタァ〜。パパ、カッタァ〜」
「パーパ、ヤッタァ〜」
「ワーイ。パッパ〜」
ゴール板を馬達が駆け抜けた後に上がる歓声と落胆の声と野次が競馬場を包む。
春香は子供達に格好良い姿を見せられて良かったなと思いながら、札幌競馬場を後にした。




