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君と駆ける······  作者: 志賀 沙奈絵


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824話


 楽しく食事をしてホテルにチェックインしてから、純也と梅野の提案で夕暮れの北海道を少しドライブをした。


 栗東の夜と比べるとネオンがキラキラしているから、子供達は目を輝かせている。


(私、初めて東京の夜景見た時、こんな顔してたのかも……)


 草津の駅前よりも華やかでキラキラしていてビックリしたのを覚えている。


「ママ、キラキラ〜」

「マーマ、キレ〜」

「クイシュマシュ〜」

「クリスマスってぇ〜」


 純也に代わり運転していた梅野がケラケラと笑い出す。


「確かにクリスマスって言う感じだけど、今は夏だぞ〜。春さん、俊洋の言葉増えたっすよね」

「うん。クイシュマシュは初めて聞いたけど、分かりやすかったね」

「凱央の通訳要らなかったもんなぁ〜」


 ワイワイと賑やかな車は、最後に札幌競馬場の敷地の外を一周する。


「やっぱり競馬場って広いですね」

「乗ってる時は早いけど、歩いたら結構距離あるっすよ」

「歩くって……馬場状態の確認する時でしたっけ?」

「そうそう」


 春香と純也の会話を聞いていた梅野がふとバックミラー越しに春香を見た。


「今更だけど、春香さんに聞きたかった事があったんだよぉ〜」

「はい?」

「雄太と付き合う前に喫茶店で会った時に見えない尻尾に赤いリボンって言ってたよねぇ〜?」

「あ、はい」


 初デートの時に言った言葉を梅野は覚えていたようだ。


「あれって、どこで覚えたのぉ〜? 春香さんって競馬の事は知識ゼロだったでしょぉ〜?」

「え……。あ……その……。雄太くんのお仕事を理解したくて、雑誌とかで勉強してたんです……」


 春香の頬はネオンの灯りだけでもはっきりと分かるぐらい赤くなっている。


 純也と梅野は、その頃から騎手の仕事を理解したいと考えていたのかと思うと、春香がどれだけ雄太を好きだったのかと笑みが溢れる。


(あの時から雄太の事が大好きで、今も大好きなんだよなぁ〜)

(雄太って幸せ者だよな。ずっとずっと、こんなに好きでいてもらえてさ)


 大好きな人の為に一生懸命になれる春香は良い女だと思うし、騎手の嫁として適任だと思った。


 訊かれた事だからと何にも考えずに答えた事をサラッと答えてしまった事が恥ずかしかったのか、春香は一生懸命に話しを変えた。


「あの……あの……よく考えたらこのメンバーで一緒の車で移動したのは初めてですよね」

「ん? そう言えばそうっすね」

「そうだねぇ〜」


 雄太から、どうしても今年は北海道に春香と子供達を連れていってやりたいと相談された純也と梅野は、春香達を迎えに行ったり遊んでやったりすると協力を約束してくれたのだ。


「明後日、俺と純也が走るから応援してくれよな、チビーズぅ〜」

「ウン。ボク、オウエンスルヨ〜」

「ボクモ、オウエンスル〜」

「バンバエシユ」


 純也と梅野はニカッと笑って、ホテルへと車を向かわせた。





 春香達がホテルに着き、ワイワイとお風呂に入って、移動の疲れもあったのか子供達は早々にベッドに並んで寝ている。


 その時、電話が鳴り応答すると聞こえてきたのは春香が聞きたい優しい声だ。


『もしもし、春香』

「雄太くん、無事着いたよ」


 電話の向こうから小さなホッと息を吐くのが聞こえた。


「ありがとう、心配してくれて」

『あ……。あはは』

「空港まで塩崎さんが迎えに来てくれたし、ご飯は梅野さんが予約してくれてたよ。子供達も喜んでたの」

『そうか。梅野さんに相談した時、子供達も満足する店をチョイスしてくれるって言ってくれたんだ』


 きっと雄太の中で、梅野に任せれば大丈夫だと思ったからだと春香は想像した。そして、それは間違ってはいない。


「本当に美味しかったよ。コーンクリームコロッケ最高だったの。子供達も目がキラキラしてたよ。おかわりしたぐらい」

『ははは。目に浮かぶよ』


 北海道と九州と離れてはいるが、雄太は春香を想い、春香は雄太を想っていた。


『日曜日、レースが終わったらホテルに行くよ』

「うん。楽しみに待ってるね」

『ああ。おやすみ、春香』

「雄太くん、おやすみなさい」


 雄太も春香も日曜日が楽しみで仕方がなかった。






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