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君と駆ける······  作者: 志賀 沙奈絵


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番外編 直樹と里美のお正月


 1月1日


 直樹は里美と雑煮を食べながら、春香が届けてくれたおせち料理をつまむ。


「この昆布巻き、柔らかくて良いな」

「そうね。春香の料理の腕は毎年進歩してるわね」

「男の子三人育てていて忙しいだろうにな」


 凱央が生まれ、悠助が生まれた後、おせち料理は届けなくて良いと言ったのだ。


「春の生活を第一に考えくれたら良いんだぞ?」

「ん〜。でも、お父さんもお母さんも大晦日まで仕事でしょ? おせち料理作ってる時間ないじゃない」

「それはそうだけど、子供がいたら大変じゃない?」


 直樹は凱央を抱き、里美は悠助を抱きながら話す。


「お店のお休みはお正月だけで二人分なんだから作る量は少ないし、そんなに大変じゃないから作らせて欲しいんだけどな。普段、お料理食べてもらえないんだし」

「そうですよ。春香が料理している時は、俺が子供達の面倒みてますから」


 春香と結婚させて欲しいと言った少年の顔から、グンッと成長した娘婿の雄太が父親の顔をしながら笑っていた。


「雄太は良い父親してるよな」


 直樹は若くして結婚をし、父親になった雄太を思い出すと笑顔になってしまう。


「結婚したいって言った時は、まだまだ可愛いって感じだったのにね」

「確かに」


 雄太自身も自分を小生意気な子供ガキだったと言っていた。


 その雄太が春香の壮絶な過去を受け入れ、愛し慈しんでくれている事が春香を溺愛している直樹には何より嬉しかった。


「結婚式だけじゃなくて、G1の祝勝会とか色々参加させてくれて、俺達と違う世界を見せてくれたよなぁ〜」

「そうね。それまで鈴掛くんとかと関わってはいたけど、祝勝会には行った事はなかったわよね」


 大きなホテルの大宴会場を借りての祝勝会を何度か経験させてもらった。


 大勢の人達が集まり、華やかで賑やかではあるが派手ではなく温かい会は、雄太の人柄が表れているようだった。


「生半可な男には春はやらないって思ってたけど、雄太ならって思ったのは間違ってなかったよな」

「春香より年下だし、未成年の働き始めだったものね。しかも、騎手っていう命の危険がある仕事をしているんだもの。直樹は、もっと強固に反対するって思ってたけど?」


 里美が言うと直樹は渋い顔をした。


 策士の春香に言いくるめられたという感じで説得されたのを知っている里美に言われ何も言えなくなる。


「お父さんって言わないって切り札を切られちゃったら、何も言えないわよねぇ〜」

「うぅ……。里美のそういうところ、春は似てしまったんだよな」


 ボソッと直樹は呟いた。


 養母と養女が似るなんて事はあるのだろうかと思ってしまうが、ニッコリ笑ってチクリと痛いところを突くところは実の母娘おやこのようだ。


「何か言った?」

「……何でもないよ」


 里美は聞こえているのに、満面の笑みを浮かべて訊いてくる。


 その時のいたずらっ子のような笑顔も里美と春香は似ていると思う。


「さて、初詣に行くかな」


 誤魔化すように言って、片付けを始めた直樹に、里美は忍び笑いをする。


 直樹は口では里美には敵わない。里美はしつこく追及はしないたちなので、余程の事でない限り喧嘩にはならない。


「今年も、穏やかな一年になると良いな」

「三人の孫の健やかな成長のお礼をしなきゃね」


 東雲マッサージの可愛い三人の孫達はお客達のウケも良い。人懐こい笑顔を向けられた所為でメロメロな自称祖父や自称祖母が大勢いるのだ。


 春香が買い物ついでに寄ったり、施術があり店にきていると噂が立てば、店の中はごった返すのだ。


「イラッシャイマセ」

「イラッタイマセ」


 凱央と悠助が看板娘ならぬ看板孫をするのを見にくる自称祖父と自称祖母達の姿は、春香の自称父親達とダブってしまう。


「次はいつ孫と遊べるかなぁ〜」

「商店街の初売りが始まったら来るわよ」

「そうだな」


 今年も春香は慌ただしく子育てに奮闘するだろう。雄太は、また大活躍をして、土日の東雲マッサージ店のテレビの前を賑やかにするだろう。


 三人の孫達と会う日が待ち遠しいと思いながら、直樹と里美はウキウキしながら初詣に出かけた。






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