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君と駆ける······  作者: 志賀 沙奈絵


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800話


 7日と8日、京都でのレースを終えて、雄太は栗東の自宅へと車を走らせた。


 途中、自宅へ電話をすると俊洋の風邪は完治したと春香が言っていた。そして、春香も凱央も悠助にも感染うつってはないらしく、元気だと笑っていた。


(俊洋の風邪が春香にも凱央達にも感染うつってなくて良かった。よし、アイス買って帰ってやろう)


 春香も子供達も真冬でもアイスが好きで、遊びに出かけた先でもソフトクリームを食べている。


 特に期間限定とか、御当地のソフトクリームには、揃いも揃って目をキラキラさせるのだ。


(そう言えば京都でデートした時も、真冬なのに外で抹茶ソフト食ったよな)


 一人で食べるのが申し訳ないと言った春香を思い出すとほんわりと優しい気持ちになった。


(あの時、春香は気遣いが出来て、俺の仕事の事を考えてくれるって思ったんだよなぁ〜)


 春香に物欲があるのか疑問に思う事が多いが、アイスクリームやソフトクリームとイチゴと桃には物欲センサーが働くようだ。


 それでも、子供達を優先して食べさせてやっているから母親なのだなと思っている。


(イチゴのと……、抹茶のと……、キャラメル何とかってのと……。あ、レアチーズケーキみたいなのも買ってってやろう)


 雄太はウキウキとアイスクリーム屋に寄って、いくつか選んで購入すると自宅に戻った。




「パパ、オカエリ〜」

「パーパー、オタエリ〜」

「ンパァ〜」


 玄関のドアを開けると子供達がワッと声をあげ雄太に駆け寄ってきた。


 凱央と悠助はピョンピョン跳ねているし、俊洋は雄太に両手を伸ばしている。


「ただいま。凱央、悠助、俊洋」

「雄太くん、おかえりなさい」

「ただいま、春香」


 凱央と悠助を抱き締めた後、俊洋を抱き上げて、春香の体を抱き寄せた。


「あぁ〜。やっぱり家が一番だ」

「うん」


 雄太は久し振りの我が家にウハウハ状態でリビングへと向かった。




 一緒に風呂に入り、プカプカする金魚やアヒルで遊んでいる凱央と悠助を見ていた俊洋は、体を二度程揺すった後、雄太の腕をスルリとすり抜けてチャプンと湯に沈んだ。


「とっ‼ 俊洋っ⁉」

「え? あっ‼ 俊洋っ⁉」


 春香が慌てて湯船を見ると俊洋は湯の中から雄太を見上げていた。


 バシャッ‼


 俊洋は、雄太に両脇に手を入れて持ち上げられると、キョトンとした後パヤッと笑った。


「おい……。笑ってる場合か……?」

「んもぉ……。驚かせないで。心臓が止まるかと思ったじゃない……」


 春香は湯船のヘリに置いていたタオルで顔を拭ってやると、凱央と悠助も心配顔で俊洋を見ていた。


「トシヒロ、ダイジョウブ?」

「ブクブクチテタ」


 雄太は腕をすり抜けられるとは思っていなかったから、俊洋が無事でホッとした。


「今、どうやってすり抜けたの?」

「……何て言うかチュルンって感じだったな」

「凱央や悠助は、こんな事しなかったのにね」


 雄太も春香も、もしかして俊洋は凱央達と比べて行動的なのかも知れないと思った。


 その後、雄太は両手で俊洋を抱きかかえていた。




 風呂を終えて、春香は俊洋の耳に湯が残ってないか丁寧にチェックしていた。


「もう大丈夫か?」

「綿棒も紙縒こよりの先ももう濡れてないし、ちゃんと取れたと思うよ」

「はぁ……。もう、心臓バクバクしたぞ」

「うん。赤ちゃんは羊水の中にいたから泳げるっていうけど、お風呂はお湯だしね」


 春香の脇には使った紙縒こよりと赤ちゃん用の細い綿棒が置いてある。


 俊洋は耳掻きしてもらってる気分だったが、退屈したのか顔をしかめていた。


「はいはい。もうお終いだよ」

「ンパァ」


 春香の腕から離れた俊洋はヨチヨチと雄太の元へと近寄った。


「ンパァ」

「頼むから、もうあんな事しないでくれよ? パパの寿命が縮んじゃうからな?」


 俊洋はキョトンとした顔をして、雄太の言葉など分かっている訳もなかった。


 凱央と悠助も近寄ってきて、雄太の膝に座ったり、おんぶをするようにしたりと群がって、キャッキャとはしゃぐ子供達の声に、雄太も春香も幸せだと感じていた。






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