767話
10月17日(月曜日)
雄太のフランスのG1の祝勝会はホテルの大宴会場で開催した。特番の撮影もあるからと言うのもあった。
「おぉ……。マジで豪華だな……」
「まぁ、獲ったのがフランスのG1ですからねぇ〜」
「凄いな……、マジで……」
鈴掛達は今までで一番豪華な祝勝会だと思い、口を大きく開けてきらびやかな会場を見回しては目を白黒させていた。
そこにシックなスーツを着た鮎川が近づいてきた。
「やぁ」
「あ、どうも」
「鮎川さん〜」
「うっす」
鮎川は、顔馴染みの三人にニッコリと笑った。
「後で、インタビューさせてもらえるかな? 今回のフランスG1の事や雄太騎手に関する事なんだけど」
純也達は深く頷いた。
雄太と三人との関係が良好だからこその依頼だ。雄太との関係が多少でも微妙な相手だと、言葉の端々に素直になれない感情が表れたりするのではないかと鮎川は考えていた。
(今回は生放送じゃないし、なるべく編集の奴等に負担かけてやりたくねぇんだよな)
実際はどうなのか分からないが、G1を獲った事がない先輩騎手にとっては、雄太は妬ましい存在ではないかと気になったのだ。
(あの三人なら、そんな事はないだろうな。塩崎くんはまだG1を獲れてないが、悔しさをバネにしてるからな。俺の勘だと、そろそろ獲りそうだと思うんだよな)
ヤンチャな見た目と違って努力家で、競馬には真面目なのだ。雄太とは違うタイプであり同じなのだと鮎川は思っていた。
その後、鮎川は会場入りをした慎一郎にもインタビューを申し込みに行った。
「申し訳ないですが……遠慮させていただきたい」
「え?」
「儂は儂。あいつはあいつ……って言いますか……。今回の事は親として嬉しい事ではありますが、それはあいつなりに頑張ってきた結果なんですよ。今日は頑張ってきた息子と支えてくれている春香さんが主役ですからな」
「慎一郎調教師……」
慎一郎はニッコリと笑った。
「今度、儂の管理馬が海外に行く時があったらインタビューしてください。その時は一時間でも二時間でもお答えさせてもらいますよ」
「はい。是非」
そう言って理保を伴い他の調教師の元へ向かった慎一郎の姿を、鮎川は惚れ惚れと見送っていた。
会場の照明が落とされ、スポットライトを浴びて雄太と春香が会場入りをした。ドアのところで立ち止まり礼をする雄太達に大きな拍手と歓声が湧く。
堂々とした雄太の姿に慎一郎達は騎手としても人間としても成長したなと胸を熱くし、直樹達は雄太に寄り添う春香が騎手の妻として周りに認められているのが嬉しかった。
(本当に……儂をいとも簡単に追い抜いて行ったんだな……)
(春……。お前と雄太の夢が一つ叶えられたな)
凱央達は直樹達と慎一郎達の傍で、いつもと違う格好の雄太と春香をキョトンとした顔で見ていた。
雄太の挨拶を聞きながらも、壁際に用意されている料理の中にあるフルーツの盛り合わせに興味があり、視線は迷いに迷っている。
「凱央、悠助。もう少し我慢してね?」
「ハイ、バァバ」
「アイ」
里美は子供達の視線に気づき優しく言う。それに気づいた理保も小さく笑った。
「あら、良いお返事ね。さすがお兄ちゃんだわ」
褒められ二人は照れくさそうに笑う。そして、理保と里美も笑い合っていた。
たくさんの人に祝辞を述べられ、雄太は笑ったり真剣な顔をしている。
(雄太くん、格好良いなぁ〜)
春香は、雄太の姿をうっとりと見詰めていた。祝勝会の時や結婚式の時もだが、キリッとした顔で大勢の前に立っている姿は凛々しいと思っていた。
乾杯をしてから雄太と春香は舞台を降りて、招待客に挨拶をして回った。
「パパ〜」
「パーパー」
挨拶が終わった雄太と春香に、凱央と悠助が駆け寄ってきた。
「凱央、悠助。良い子にしてたな。偉いぞ」
「ウン。パパ、カッコヨカッタヨ」
「パーパー、アリアトチテタ」
雄太は二人を抱き上げてやった。
その姿は若くに結婚したのにしっかりとした父親をしていると、参列者や鮎川も取材スタッフ改めて感心して見ていた。




