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君と駆ける······  作者: 志賀 沙奈絵


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762話


 翌日から、雄太の周囲は慌ただしくなりまくった。


(い……忙し過ぎて……。俺の時間がぁ〜っ‼)


 調教終わりの取材だけではなく、早朝の調教も取材陣が殺到していたのだ。とても一日では捌ききれない数だった。


(俺、フリーで良かった……。これだけ取材が殺到したら厩舎に迷惑かけまくってたよなぁ……)


 ん〜っと背筋を伸ばしながらスタンドを後にし、夏の暑さの名残が残るトレセン内を歩いていた。


「雄太ぁ〜。取材終わったんだな」

「ソル」


 ダッシュで駆け寄ってきた純也は、雄太の隣に並んで歩き出した。


「あ、俺がいない時に凱央達と遊んでくれてたんだって? ありがとうな」

「ああ。鈴掛さんと梅野さんとさ、雄太がいないからチビーズが淋しがってんじゃないかって話しになったんだよ」


 仕事で疲れてただろうにと雄太は思ったのだが、純也は何て事はないといった風に話していた。


 『今更だな。遠慮するような仲じゃないだろ?』


 『えぇ〜? 俺は俺がしたいようにしただけだぞぉ〜? チビーズと遊ぶの楽しいしさ』


 礼を口にすれば鈴掛と梅野はそう言うだろうと想像して小さく笑う。


 純也は、頭の後ろに手を回しながら雄太のほうをジッと見た。


「え? 何?」

「フランスでもG1獲ったのに、雄太は雄太だなぁ〜って思ってさ」

「ははは。確かに海外G1獲れたけど、俺の夢はまだまだあるからさ」

「ときお、ゆう、しゅん……か?」


 純也がニッと笑って言う。子供達の名前が東京優駿になるというの聞いた時、春香の雄太への想いを強く感じたのだ。


「それは絶対だな。後、凱旋門賞だ。今回、フランスのG1獲れたからやっぱり欲が出てきたな」

「そうだな。春さんの願いだもんな」

「ああ。あ、今度祝勝会するから来てくれるよな?」

「お? 行く行くっ‼ 絶対に行くからな」


 ご馳走が出ると思った純也は即答した。相変わらずだなと思いながらも、変わらず親友でいてくれる純也に雄太は感謝した。




 自宅に戻った雄太は、既に幼稚園から帰ってきていた凱央と悠助と一緒に風呂に入った。


 俊洋は昼間遊び過ぎて寝ていたから後にすると春香が言ったからだ。


「パパ。マタ、ヒコーキデオシゴトイク?」

「え?」


 湯船につかりながら凱央が雄太をジッと見詰めながら訊ねてきた。雄太は悠助の体を洗う手を止めて凱央のほうを見る。


「凱央はパパが飛行機でお仕事に行くのは嫌か?」

「イヤジャナイヨ。デモ、チョットサビシカッタ」

「そうか」


 春香もだが、子供達もやはり淋しかったのだろう。


 いつもよりくっついている時間が多い事や、何かと話しかけてくるのは淋しかった証拠だろう。


「よし、悠助洗い終わったぞ」

「アイ。パーパー、アリアト」


 悠助も湯船に入れてやる。


「凱央。パパが髪とか洗ってる間、悠助を見ててやってくれよ?」

「ハ〜イ。ユースケ、キンギョサントアヒルサンデアソブヨ」

「アイ、ニィニ」


 湯船に浮かべた金魚やアヒルで遊びだす。沈めたり、湯船を泳がせたり楽しそうだ。


 雄太は髪や体を洗い、湯船につかると気持ち良さにホッとする。


 チャプン……


(ああ、気持ち良いな。やっぱりこういうのが良いな。デカい風呂にして良かったよな)


 湯船の中で胡座をかいて、凱央達が足に引っ掛かってしまわないようにした。


 春香と一緒に入りたいと思って大きな湯船にした。子供が出来たら親子で入るのにも良いと思ってたから、今の状態は最高に満足している状態だ。


 雄太は金魚を一つ手にして沈めた。それを湯の中で離すと勢いよく浮かび上がる。


 ポコン


「キンギョ〜」

「キント〜」

「パパ、モウイッカイ〜」


 子供達はキャッキャと笑いながら、湯をバシャバシャと跳ね上げながらはしゃいでいる。


 雄太は何度も何度も繰り返してやった。




「雄太くん? 大丈夫?」

「へ?」


 気がつけば風呂に入ってから一時間以上経っていて、心配した春香が俊洋を抱きながら浴室を覗きにきたのだ。


 雄太達は顔を赤くしながら風呂を出て、春香が準備をしておいてくれた麦茶をガブ飲みをした。






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