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君と駆ける······  作者: 志賀 沙奈絵


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740話


 凱央がグンッと成長を見せたように、悠助も成長をしていた。


「ママ、トチヒロカワイイネ」

「そうだね、可愛いね」

「チョチヒヨ、カワイイ」

「あ、悠助。可愛いって言えたね」


 凱央の真似をして、どんどんと言葉が増えた。そして他にも成長している。


 春香の代わりに泣いている俊洋をあやしてくれたりして、三人もの子育ては大変ではないかという周囲の不安を払拭してくれていた。


 雄太がいない時に子供達と遊んでくれている直樹にも、春香の代わりに買い物に行ったりしてくれている里美にも感謝しかないと雄太は思っていた。


「春香、俊洋の沐浴してしまう?」

「あ、お義母さん。俺がしますよ」

「あら、そう?」

「雄太くん、お願いね〜」


 雄太は頷いてバスタオルや着替え、新しいオムツを準備をする。その手際の良さに里美は感心していた。


(雄太くんって、仕事も真面目だし、子育てにも真面目に向き合ってるのね)


 雄太自身は無自覚なのだが、グングンと株価は上昇している。直樹や里美だけでなく、商店街の方々の中でもだ。


 里美は黙って雄太の沐浴を見守っていた。久し振りなので少し硬さもあったが、きっちりとしていた。


(雄太くんと鷹羽のご両親のおかげで、春香も安心して子供を産めるのよね。ありがたい事だわ。安心して栗東へ戻らせられるわね)


 里美はニコニコと雄太を見ていた。




 いよいよ来週の月曜日に雄太達が栗東へ戻るとなると、直樹は淋しいといった顔をしていた。


「直樹……。いい加減に慣れなさいよ」

「う……。分かってるんだけどな」

「ほら、今日は俊洋のお披露目なんだから」

「お……おう」


 金曜日の午前中、東雲の店をお休みにしてのお披露目会は常連客やご近所さん達が大勢来てくれた。


 もちろん各自の店の営業があるからと短時間ではある。


「おお、凱央ちゃんとも悠助ちゃんとも似てるな」

「あらあら、可愛いわね」


 俊洋が凱央達の時と同じで泣きもしないで愛想を振りまいていた。


「春ちゃんが、もう三人のお母さんだもんな」

「直樹先生、春香ちゃんは孝行者だな」


 凱央は来店してくれた人達にお礼を述べたりしている。


「アリガトウゴザイマシタ」

「凱央ちゃん、しっかりしたお兄ちゃんになったな」

「ボク、ヨウチエンイクカラダヨ」


 退屈した悠助を遊んだりしている凱央は本当にしっかりしたなと思った。


「あ、川下のおじいちゃん」

「春ちゃん、三人目のおチビちゃんを見せてもらいに来たぞ」

「うん。俊洋って言うの」


 ソファーに座ってもらい、そっと腕に抱かせると、涙を浮かべながら喜んでくれた。


「可愛いな、可愛いな。赤ん坊の良い匂いだな」

「うん。おじいちゃんに抱っこしてもらえて嬉しいよ」

「ああ。三人も春ちゃんの赤ん坊を抱かせてもらえて寿命が伸びたよ。ありがとうな」


 仲睦まじい祖父と孫娘とその子供といった感じで見ている皆が癒されていた。


 そこにテッテッテと凱央と悠助が近寄ってきた。


「オジーチャン、オジーチャン」

「ジィチャ」

「ん? なんじゃね、凱央ちゃん。悠助ちゃん」


 にこやかに笑い話す様子は本当にほのぼのしていた。




 月曜日、午前中に純也達の協力で荷物を自宅へと運び入れ、午後から宮参りへと出かけた。


 凱央や悠助の時と同じように、梅野が写真係りを申し出てくれて、無事に終えた。


 純也と鈴掛は家で祝い膳などの準備をしてくれていた。神社から帰ってきた皆はゆっくりとくつろいでいる。


「お義父さん、お義母さん。色々と頼る事が増えますがよろしくお願いします」

「ああ。遠慮なく甘えてくれると嬉しい」

「いつでも頼って頂戴ね」


 慎一郎と理保は凱央や悠助に抱きつかれたり、膝の上に乗られたりとされて嬉しそうに笑っている。


 直樹達は俊洋を交互に抱っこをしていた。


「三人もいたら大変だと思いますが、鷹羽のご両親が隣にいてくださるから安心していますよ」

「そう言ってくださって嬉しいですよ。精一杯手助けさせていただきます」


 孫達三人の相手をしながら、幸せそうにしている祖父母四人を純也達は微笑ましいなぁ〜と見ていた。







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