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君と駆ける······  作者: 志賀 沙奈絵


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730話


 栗東の自宅に戻った雄太と純也は、先に荷物を車に積み込み昼食を食べる事にした。


「イタラキマシュ」

「イチャラチチャ」


 子供達が小さな手を合わせている姿を見ているだけで、なぜ癒やされるのだろうと雄太達だけでなく純也も思っていた。


 しかし、二月末か三月始めぐらいまで雄太達は留守にすると思うと純也は少し淋しく思ってしまった。


「春さんの飯、しばらく食えないんだよなぁ〜」

「そうですね。こっちに帰ってきたら、直ぐ宮参りしますからきてくださいね?」

「うっす」


 純也はニッコリ笑って親指を立てる。


「夕飯は、父がお寿司を頼んでくれてるので楽しみにしててくださいね」

「やりぃ〜」


 直樹は春香の里帰りの荷物運びを純也が手伝ってくれると聞いて、寿司屋に追加をしてくれたのだ。


 春香が帰ってくる事が嬉しい直樹の事だから、良い寿司をたんまりと注文してくれただろう。


「寿司を美味く食う為に、ガッツリ動こうっと」

「ははは。頼りにしてるぞ、ソル」

「任せろ」


 頭の中は寿司でいっぱいなんだろうなと思いながらも、雄太は頼りになる親友の明るい笑顔を見て笑った。




 三度目の荷物を運び終わると、春香のマンションは今までで一番の家具家財でいっぱいになった。


「いくら春香のマンションが広いっていっても、四人分の荷物が入るとこんな感じになるんだな」

「うん。雄太くんの部屋は前と一緒で良い?」

「ああ」


 布団収納袋から、雄太は自分の分の寝具を出して運ぶ。


「春さん、ベビーベッドは?」

「そっちの空き部屋のほうにお願いします。そこが赤ちゃん用品部屋にしてるんで」

「了解〜」


 春香は子供達のオモチャを入れたバスケットを寝室にしていた部屋に運んだ。


「凱央、悠助。ここで遊んでてくれるかな?」

「ボク、オテツダイシュル」

「ん〜。嬉しいけど、荷物がたくさんあるから、ここで悠助を遊んでやってくれる?」

「ン。ワカッチャ。ウースケ、ニィニトアソブヨ」

「アイ、ニィニ」


 しばらくして、里美が様子を見にきてくれた。


「バァバ〜」

「バァー」


 子供達は祖母である里美に駆け寄っていくが、悠助が荷物を避けきれずに転んだ。


「ウ……ウェーン」

「ウースケ、イイコ。イタイノイタイノトンデケ〜」

「ニィニ〜」


 誰よりも早く駆けつけた凱央が、悠助の膝を撫でてやる。里美も悠助がぶつけた所を見てやった。


 悠助の泣き声でリビングの入り口へと雄太と純也も心配顔で悠助を見ていた。


「ちょっと赤くなってるけど大丈夫そうね」

「悠助、物がある所で走っちゃ駄目だぞ?」


 グズグズと泣きながら悠助は里美に抱かれながら頷いていた。




 六時を少し過ぎた頃、馴染みの寿司屋の大将が若い男性店員と共に寿司を届けてくれた。


「春ちゃん、順調かい?」

「はい。おじさんも元気そうで良かった」


 大将は照れくさそうに笑った。


「孫が産まれたばっかだからな。まだまだ頑張んなきゃなんねぇよ」

「そうですね」

「春ちゃんの安産祈ってるぜ」

「ありがとう、おじさん」


 大きな桶と子供達用の小さな桶が乗った番重ばんじゅうを受け取り、雄太達は部屋に戻った。


「おぉ……。これは豪華過ぎるだろ……」


「私は生物は食べちゃ駄目なんで、塩崎さんいっぱい食べてくださいね」


 生物なまものがいっぱいの桶といなり寿司や手毬寿司が入った桶をテーブルに並べる。


 雄太は子供達用の桶や茶碗蒸しを並べてやる。番重から取り出した大皿に乗っていたのは鰤の兜焼きだ。


「この兜焼き、メチャ重いんだけど……」

「だろうな。持った時、何だこのヤベェ重さはって思ったんだよな。重さの正体はこいつだったか」


 大きな鰤の頭を見て、凱央も悠助も固まっていた。


「ママ、コレナァニ? オタカナ?」

「お魚だよ」

「ボク、タベラレチャウ」

「え? ああ、大きいもんね。大丈夫だよ」


 春香の説明に凱央は納得したが、悠助はビクビクしながら見ている。


 それでも、ほぐした鰤を食べさせてやると美味しそうに食べていた。




 雄太達の草津での生活が始まった。







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