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君と駆ける······  作者: 志賀 沙奈絵


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729話


 年明けの初レースは重賞こそ逃したが5日、6日の二日間で6勝を上げ、上々の滑り出しだった。


 7日はレースがなく、8日と9日はまた阪神で騎乗があるので、そのまま調整ルームにいると言う純也と梅野に手を振って、雄太は自宅に戻った。


「パパ〜。オカエリ〜」

「パーパー、パーパー」

「ただいま。凱央、悠助」

「おかえりなさい、雄太くん」

「春香、変わりはないか?」

「うん」


 臨月に入った春香は、まだ自宅にいた。凱央だけでなく、悠助も連れての里帰りになると、引っ越しと同様の荷物になりそうだと思って悩んでいたのだ。


 今日も子供達が寝てから、いつ里帰りをするか二人で話し合っていた。


「このまま家にいたら駄目だよねぇ……」

「そうだな。俺がいる時なら良いけど、俺も父さんもいない時だったら大変だもんな。父さんがいても、呑んでる時のほうが多いし」

「初産ならまだしも、三人目だと出産までの時間が短い人が多いって言うし、私が陣痛がきてから車を運転して病院に行ったら重幸伯父さんに怒られそう」


 陣痛がきた状態で車を運転する春香を想像して、雄太はゾッとした。


「痛い痛いって言いながらの運転はやめて欲しいんたけど……」

「私も怖いよ。しかも、凱央と悠助をチャイルドシートに乗せててとか無理……。万が一、運転ミスって事故とかしたら一生後悔するし」


 悩んで悩んで、草津のマンションへ行くほうが良いだろうと言う結論に達した。


「来週からマンションに行こうな」

「そうだね。また雄太くんの通勤時間が長くなっちゃうけど」

「そんなの気にしなくて良いから」

「うん」


 雄太は壁掛け時計を見た。


「もうお義父さん達、仕事終わって自宅に戻られてるよな?」

「そうだね。電話してみるよ」


 春香が直樹宅に電話をして、来週から戻ると言うと、直樹は嬉しそうに部屋の準備をしてくれると言ってくれた。


 翌日から、春香は無理がない程度に荷造りを始めた。




 翌週の月曜日の朝、雄太は駐車場へ出る勝手口の扉を開けて荷物を積む準備を始めた。


「凱央、悠助。ここから外に出ちゃ駄目だぞ? 分かったな?」

「アイ」

「ン」


 子供達は手を挙げて返事をして、春香は軽い物を扉の近くまで運んでいた。


「春香、もう少ししたらソルが手伝いにきてくれるから。昼は冷蔵庫の整理を兼ねて何か作ってやってくれ」

「うん」


 冷蔵庫の中にある物を確認しにキッチンへ向かおうとした時、インターホンが鳴った。


 春香がモニターを見ると純也が手を振っていた。ロックを解除すると、駐車場に走ってきた純也は雄太達にニッと笑った。


「悪いな、ソル」

「良いって。俺と雄太の仲に遠慮はなしだぜ」

「塩崎さん、お昼はあり物でしか作れないですけど良いですか?」

「良いっすよ。春さんの飯はどれもこれも美味いっすから」

「はい」


 雄太と純也はワンボックスカーに荷物をどんどん積み込み、一度草津へ向かった。


 その間に春香は冷蔵庫の食材を使って、昼食と作り置きをどんどん作っていった。


「ママ、コエモッテイッテイイ?」

「ん?」


 春香が振り返ると、凱央はオモチャをソファーに乗せていた。そして、悠助も自分のお気に入りのオモチャを並べていた。


 草津のマンションに行く事は何度もあったので、しばらく東雲のマンションで暮らす事には抵抗がないようだ。


「マーマー、コエモ」

「うん、良いよ」


 春香は手を洗って、階段下の物置きから大き目のバスケットを取り出した。


 リビングに戻り床に置くと、意味を理解した凱央はオモチャをバスケットに入れていく。


「ウースケ、コレニイレルンダヨ」

「アイ、ニィニ」


 二人はせっせとオモチャを詰めていく。


 春香は微笑ましい二人を見詰め、また食事の準備を再開した。




 雄太は春香のマンションの地下駐車場で、直樹と話していた。


「雄太、後何回ぐらいで終わりそうだ?」

「後二回ぐらいですかね?」

「そうか。気をつけてな。塩崎くん、ありがとうな」

「良いっすよ。春さんにも世話になってるお礼っす」

「ああ」


 雄太と純也は笑顔の直樹に見送られ、栗東へと戻った。






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