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君と駆ける······  作者: 志賀 沙奈絵


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725話


 12月19日に阪神競馬場で開催されたG3サンスポ阪神牝馬三歳特別で、優勝をした雄太はホッしていた。


 アレックスが引退した事で、また批判的な事が書かれる心配があったのだ。


(馬券ハズして八つ当たりしてんじゃないのか?)


 批判記事を書いている記者の粘着っぷりに嫌悪感や違和感を感じていた。


(ま、良いか。来週は有馬だな。頑張ろう)


 落ち着いて挑んだ有馬記念だったが、優勝を逃した。


 1993年の全レースを終え、年間138勝を上げて全国リーディング一位に輝いた雄太は、鈴掛達から頭をグリグリされたり手荒い祝福を受けた。


「明日のお疲れ様会、来てくださいよ?」

「ああ。楽しみにしてる」


 一年間、精一杯頑張った結果に満足をして、雄太は自宅へと戻った。




 翌27日、凱央と純也の誕生日とクリスマスと雄太リーディング一位おめでとう会と一年お疲れ様会という盛りだくさんの会が雄太宅で行われる。


 腹が大きくなった春香がリビングだと座りにくいからと、ダイニングテーブルでの宴会にした。オードブルに寿司、酒の肴やケーキを並べ、ワイワイと話に花を咲かせる。


「ほら、凱央。悠助。これかぶるんだぞ」


 梅野は子供用のパーティー帽を二人にかぶせる。


「マタチタン、アリガト」

「アイアウ〜」

「ちゃんとお礼言えて、凱央は良い子だなぁ〜。悠助もありがとうって分かるぞぉ〜」


 キラキラとしたパーティー帽は思いのほか、子供達には好評だった。


「春さん、これ南蛮漬け?」

油淋鶏ユーリンチーですよ」

「美味いよ、春香ちゃん」

「良かった〜。最近、雄太くんのお気に入りなので」


 春香の腹が大きくなってきているので、料理は注文した物だけにする予定だったのだが、せめて一品ぐらい作りたいと言って作ったのだ。


「揚げ物はカロリーが気になるけど、春香の唐揚げと油淋鶏は譲れないって思っちゃうんだよなぁ〜」

「それは分かるぞ」

「ソルは、揚げ物好きなだけだろ?」

「それもある」


 ゲラゲラ笑いながら、純也は油淋鶏を大口を開けて食べた。


 凱央は小さく切ってもらった油淋鶏を一生懸命に箸で摘み、モグモグと食べる。


「ママ、オイシイヨ」

「ありがとう、凱央」


 悠助のは凱央より小さく切ってあるが、自分でフォークで刺せるようになり皆が成長を感じていた。


「凱央は箸使えるようになったし、悠助も上手に食べられるようになったな」

「そうなんですよね。子供の成長って早いなぁ〜って思ってます」


 鈴掛がしみじみと言い、雄太もニッコリと笑う。


「パパ、ケーキイツタベユノ?」

「ん? もうケーキ食べたいのか?」

「ン。タベタイ」


 雄太は頷いて、ロウソクを立ててやり、ライターで火をつけてやると凱央より先に、悠助がパチパチと拍手をした。


 皆でハッピーバースデーを歌ってやると、凱央は嬉しそうに笑う。


「凱央、お誕生日おめでとう」

「おめでとう、凱央」


 雄太と春香から誕生日プレゼントを手渡されると、パァーっと輝く笑顔を見せた。


 プレゼントの箱を抱えてペコリと頭を下げる。


「パパ、ママ。アリガト」


 そして、純也達も小さな紙袋を手渡していく。雄太に頼まれて、高い物は買わないようにしたのである。


「アリガトゴジャイマシュ」


 凱央は嬉しそうに笑うと、カットされたケーキの上に乗せられた誕生日プレートをパクリと食べた。


「オイシイ。ウースケ、アーンシテ」


 凱央は、大きなイチゴを手にした。驚いたのは雄太達だ。


 悠助はキョトンとした後、大きく口を開けた。


「アイ。イチゴウースケ二アゲユ」


 凱央は、悠助が食べきるまで、しっかりとイチゴを持っていてやった。


「ニィニ、アート」

「ン。オイシカッタ?」

「オーチー」

「イイコ、イイコ」


 春香は凱央のケーキの上に自分の分のイチゴをそっと乗せてやった。


「アレ? イチゴカエッチェキタ」

「イチゴさん、凱央が良い子だから来てくれたみたいよ」

「ショッカ」


 雄太達は春香が乗せたのは分かっていたが、どうして凱央が悠助に好物を食べさせたか分からずにいた。






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