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君と駆ける······  作者: 志賀 沙奈絵


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710話


 7月4日(日曜日)


 G3札幌記念に出場した雄太は、見事一着になった。


 G3優勝だけでなく、もう一つ嬉しい事があった。


「札幌記念を征しました鷹羽騎手です。おめでとうございます」

「ありがとうございます」


 札幌記念の勝利騎手インタビューと共に、雄太の記念のインタビューもあったのだ。


「この勝利で、鷹羽騎手の通算重賞勝利数が五十勝となりましたね」

「はい。依頼してくださった馬主オーナーの皆様や調教師せんせいの皆様。応援してくださった競馬ファンの皆様。たくさんの人達のおかげで達成出来た勝利数だと思っています」


 雄太がそう言うと大きな拍手と歓声が湧いた。


「パパだから頑張らないとな〜」

「おめでとう〜。また奥さんと息子さん達を北海道に連れて来てくれよぉ〜」

「パパ、頑張ったなぁ〜」


 その言葉に笑いが起きた。


 雄太はニッコリ笑って、ペコリと頭を下げた。




 翌週、京都での騎乗がある雄太は帰宅の準備をしていた。


「なぁなぁ。お客さん達、春さん達の事を覚えてたんだなぁ〜」

「ああ。ビックリしたけど、正直嬉しかったな」

「また連れてこられたら良いな。三人目が産まれてからだと……来年の夏には来られるかもな」


 雄太は荷造りの手を止めて、しばし考えて少し上を向いた。そして、ニッと笑った。


「うん。そうだな。来年の夏の北海道遠征は楽しくなりそうだ」

「俺もだ。春さんだけでなく、オチビ達と北海道でワチャワチャ出来るの楽しみだぁ〜」

「三人連れだと大変だから、ソルが一緒だと助かるな」

「おう。任せろ」


 純也はニカッと笑って親指を立てた。


「三人目かぁ……。何か、あっという間って感じするんだけど」

「実際、子育てしてるとそうでもないぞ」

「奥さんは大変だって聞くもんな。けど、春さんはいつもニコニコしてくれてるからさ」


 凱央も悠助も育てやすい子だと理保が言っていた。


 『素直に言う事を聞いてくれるし、我が儘言って困らせたりしない良い子達よ。凱央は後追いはあったけど、赤ちゃん返りもなかったし、悠助もお兄ちゃんと仲良く出来る良い子よね』


 慎一郎も孫を溺愛する爺ちゃんになっていて、庭で遊んだりしている。




 春香の作った煮物のお裾分けにいこうとして雄太の後をついてきた凱央と、抱っこしていた悠助と庭で遊んでいる姿を見ながら、理保は目を細めていた。


「父さん、すっかり良い爺ちゃんしてるよな」

「雄太にしたら意外かも知れないけど、お父さんは子供好きなのよ? 雄太が子供の頃は仕事が忙しくて、遊んであげたりする事が出来なかっただけよ」


 雄太は春香が何度も言っていた言葉を思い出す。


 『雄太くんは、本当に愛されて育ってきたんだよ』


 春香が子煩悩な慎一郎の本質を見抜いていたのかは分からない。たが、キッチンから何度も庭のほうを見ながら嬉しそうにしている春香の笑顔は優しかった。




「そう言えばさ、おっちゃんさ、三人目も男の子が良いって言ってたぞ?」

「へ? そんな事を言ってたのかよ」

「ああ。火曜日だったかな? 静川調教師(せんせい)と辰野調教師(せんせい)とスタンドでコーヒー飲みながら言ってた」


 賑やかな声がするなと思った純也が近づくと、孫話をしている慎一郎がいたと言う。


「けどさ、辰野調教師(せんせい)に、三人目どころか悠助が騎手になる頃には定年してるだろって言われて、定年の延長ってないのかとか言ってた」

「ははは。何度も言ってんのに、やっぱり諦めきれてないんだな」

「だよな。悠助が騎手になる時には調教師じゃないってのにさ」


 例え調教師として馬を用意してやれなくても、騎手悠助の応援はするのだろうなと想像出来てしまう。


「そもそも、凱央も悠助も騎手にならないかも知れないってのにな」

「おっちゃんにしたら、息子の雄太が騎手になってくれて、自分を超えていったのを、また凱央や悠助でも見たいってのがあるんじゃね?」

「そうなのかもな。まぁ、悠助が騎手になった時、俺は四十一歳だけど抜かせるつもりはないけどな」


 凱央と悠助、そして三人目の子供の未来を考えると、雄太はワクワクしてしまうのだった。






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