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君と駆ける······  作者: 志賀 沙奈絵


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693話


 自宅に戻り玄関を開けた瞬間に、春香の熱烈なハグが飛んできた。


「ウオッ⁉」

「雄太くん、おめでとうっ‼」

「あ……ありがとう」


 抱きついてきてピョンピョン跳ねる春香の姿は可愛くて堪らない。


「喜んでくれるのは良いけど、子供達が唖然としてるぞ?」

「へ? あ……」


 春香のはしゃぎっぷりに、凱央と悠助はキョトンとして見上げていた。


 一気に顔を赤くした春香は、雄太から離れた。


「は……恥ずかしい……」


 春香は、両手で顔をおおってしゃがみ込んでいる。


「マッマ、ナタナイノヨ」


 泣いていると思った凱央に頭を撫でられて、春香は更に恥ずかしくなった。


 雄太は背を向けて、必死で笑いを堪えていた。




 風呂に入り、ゆっくりと湯船に浸かった雄太に、凱央は目を輝かせながら話す。


「パッパ、アウバンバッチャネ」

「そうだぞ。アルは一生懸命に頑張ったぞ」

「パッパモ、バンバッチャ。オメエト」

「ありがとうな、凱央」


 トロフィーや盾も嬉しいが、幼い我が子が一生懸命に褒めてくれているのは、何に物にも代えがたい。


「凱央ね、凄い応援してたんだよ」

「そっか。嬉しいな」

「悠助も、ぬいぐるみ振り上げて応援してたの」

「悠助がか? 最高の応援団だな。ありがとうな、悠助」


 雄太に頭を撫でられて、悠助は嬉しそうに笑う。


「あ、そうだ。悠助、私はだぁれ?」

「マー」

「おお〜。悠助、ママが言えるようになったのか」

「悠助。この人はだぁれ?」

「パー」


 満面の笑みを浮かべ悠助は答えた。驚いたのは雄太である。


「ちょっ‼ 金曜日にはパパもママも言えなかったのに、一気にっ⁉」

「うん。私もビックリしたの」

「そっか、そっか。悠助、えらいぞ」


 雄太が悠助の頭を撫でると、凱央も悠助の頭を撫でた。


「ウースケ、イイコイイコ。バンバッチャネ」

「ウダダァ〜」

「凱央も良い子だぞ」

「アイ」


 凱央も雄太の太ももの上に座り、アヒルのオモチャを悠助に見せてやっている。


「悠助、凱央より言葉を覚えるの早くないか?」

「重幸伯父さんがね、下の子は上の子の影響で早くなる傾向があるんだって言ってたよ」

「そうなんだな。嬉しいけど、父さんに負けたのが悔しいんだけど」

「ふふふ。私は凱央の時、雄太くんに負けたもん。次の子には、私が一番になりたい」


 春香は、髪をタオルで包み湯船に入る。


「次の子かぁ〜。春香は、二人子供がいて大変だったりしないか?」

「そりゃ大変だって思う時もあるけど、お義母さんが助けてくださってるから」


 理保とは、一緒に食事をしているだけでなく、庭で遊んだり、一緒に買い物にも行っていると聞いた。


「母さん、春香が買い物に連れてってくれるの喜んでんだよな」

「私も楽だよ? 子供二人連れて買い物って疲れるし」


 嫁姑が、お互い様と思って過ごしてくれているのはありがたいと雄太は思った。




 子供達を寝かせつけ、夫婦水入らずの時間を楽しむ。


「サイン、ありがとう」

「ああ。応援ありがとうな」


 春香は雄太の腕に頭を預け、サイン色紙を眺める。


「うん。えへへ。嬉しいなぁ〜」

「俺もだ。世界中の誰よりも、春香が喜んでくれるのが嬉しいぞ」


 既婚者の先輩が、妻の機嫌が良いのは賞金が入った時だけだと愚痴を言っていたのを思い出す。


(春香は、そういうのないよなぁ……。二日間一勝も出来なくても、美味い飯を作ってくれて、目一杯マッサージしてくれて……)


 アレックスを降着させてしまって凹んでいた時も、遊園地へと連れ出してくれた。


(あん時、気分が晴れたんだよな。その後、重賞が勝てなくても笑って支えてくれてたんだ)


 サイン色紙を眺めながらニコニコと笑っている春香が愛おしくて、そっと抱き締めた。


「どうしたの?」

「俺は幸せだなって思って」

「私も幸せだよ。優しくて、頑張り屋さんで、家族を大切にしてくれる旦那様がいて」


 そっとキスを交わす。


「来週は桜花賞だ。また頑張るよ」

「うん。目一杯応援するね」

「ああ」


 一勝一勝喜んでくれる家族がいる幸せを噛み締めていた雄太だった。



 


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