681話
12月28日(月曜日)
雄太宅では、昼から凱央と純也の誕生日、クリスマス、忘年会の合同宴会が催されていた。
リビングは華やかに飾り付けられ、長テーブルの上には春香の手料理と皆で持ち寄った酒や料理が並べられている。
テーブルの真ん中には大きなクリスマスケーキ。砂糖細工ではなく、アイシングクッキーのサンタクロースやクリスマスツリーなどが飾られている。
「じゃあ、皆グラス持ってぇ〜」
「凱央、純也。誕生日おめでとうっ‼」
「サンキュっす」
パーティー帽を被った梅野と派手なアフロヘアのカツラを被った鈴掛が声をあげる。サンタクロースの格好をした純也が満面の笑みで応える。
「雄太くん、リーディング一位おめでとう」
「ありがとう」
キラキラしたモールを花冠のように被っている春香が、雄太に笑いかける。
「おい、雄太。見詰め合うのは後にしろっての」
「ははは。ソル、羨ましいだろ」
「るせぇ〜」
純也に言われて、これ見よがしに雄太は春香の肩を抱いた。そして、グラスをたかだかと上げる。
「一年間お疲れ様。乾杯〜っ‼」
「来年も頑張ろうっすっ‼」
雄太と純也の乾杯の音頭でパーティーが始まった。
「タンパイ〜」
「タタタァ〜」
凱央と悠助が大人の真似をしてプラカップとベビーマグを上げて笑う。
「悠助、クラッカー鳴らしたら泣くかな?」
「大丈夫じゃない? 鳴らすならケーキのロウソクに火を点ける前じゃないと駄目だし」
「ちょっと離れてやってみるか。料理の近くでやると火薬の臭いが残るのも嫌だしな」
雄太はクラッカーを持って、テーブルから離れた。春香はベビーチェアに座っている悠助の隣で、もし泣いたら直ぐに対処しようと身構えた。
「ほら、悠助。パパのほうを見てろよ?」
雄太がそう言ってクラッカーを鳴らす。
パンッ‼
軽い破裂音がして、色とりどりの紙テープが舞う。
「パッパァ〜、キェ〜」
「アゥアゥァ〜」
凱央と悠助は、キャッキャと手を叩いて喜んでいる。
「大丈夫そうだな」
「んじゃ、もう一回やってみようぜ」
純也が立ち上がり、雄太の隣でクラッカーを構える。雄太も新しいクラッカーを構え、二人でタイミングを合わせて鳴らした。
パンッ‼ パンッ‼
凱央はケラケラと笑い、悠助も手を叩いて喜んでいる。
「やっぱり、凱央と同じで多少の事じゃビビらねぇな」
「だな」
悠助はお食い初めの時も落ち着いていて、慎一郎達も直樹達も驚くぐらいだった。
慎一郎は、悠助も口撮り写真に連れて行けるなと喜んでいた。
「マンマァ〜」
「マッマ、オタワイチョウアイ」
「はいはい」
子供達はパクパクと美味しそうに食べていて、鈴掛達はお泊りだという事でガッツリ呑んでいる。
「凱央と悠助、良い食べっぷりだな」
「純也が三人いるみたいですねぇ〜」
「何か俺がガキっぽいって言われてるみたいなんすけどぉ〜」
純也は骨付きチキンをかぶりつきながら不平を漏らす。その時、凱央も同じようにチキンのタレを口の周りにベタベタにつけながらかぶりついていた。
純也と凱央を見比べて、雄太達は腹を抱えて笑い転げた。
「ブフッ‼ だ……だ……駄目だ……」
「ブフフっ‼ 腹筋が……崩壊するぅ……」
「ソ……ソル……。お前……」
キョトンとした顔で大人達を見ている凱央と唖然とした顔で凱央を見ている純也がおかしくて、春香も涙を浮かべて笑っていた。
「ウォウ、フキフキシナチャイ」
「それはお前だ、凱央」
お互いに顔を見て指摘し合う二人が面白く、酒を呑んでいる事もあって、一度ツボれば笑いは止まらない。
「も……もう勘弁してくれぇ……」
「純也……。お前、凱央と同い年かよぉ……」
鈴掛も梅野も、息も絶え絶えと言った感じで、今まで見た事がないぐらいだった。
春香も浮かぶ涙を指で拭いながら立ち上がり、リビングから出て行き、タオルを手に戻ってきた。
「鈴掛さん、梅野さん。タオルどうぞ」
「ああ。春香ちゃん、ありがとう」
「ありがとう、春香さん〜」
二人は顔を拭いながら、まだクックックと笑い続けていた。




