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君と駆ける······  作者: 志賀 沙奈絵


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649話


 草津のマンションに着いた雄太は、駐車場に車を停める。


 駐車場では直樹が待っていてくれた。


「一陣の荷物は、とりあえず空き部屋のほうに入れておいたからな」

「ありがとう、お父さん」

「春達が来たって事は、荷物はこれで終わりだな?」

「うん。おっきい車に買い換えたから結構早く荷物運び終わって良かったよ」


 雄太にチャイルドシートから降ろしてもらった凱央が直樹にトテトテと近寄る。


「ジィジ〜」

「お〜。凱央〜」


 凱央を抱き上げてご満悦の直樹の目尻は下がりっぱなしだ。


「凱央、良い子だから、ママと先にお部屋に行っててくれよな? バァバが待ってるぞ」

「アイ」


 直樹に降ろされた凱央は春香の手を握る。


「じゃあ、部屋で待ってるね」

「ああ。部屋でのんびりしててくれ」

「うん。お願いね、お父さん」


 春香と凱央は部屋に向かい、雄太と直樹は荷物を降ろし始めた。


「何か、ついこの間、同じ作業した気がするな」

「お義父さん、父と同じ事言いますね」


 忍び笑いをしながら雄太が言うと、直樹は大きな声で笑った。


「はっはっは。爺は同じ感覚になるのかも知れないな」

「まぁ、俺も少しそんな感じしましたけどね」


 段ボールを降ろした分をエレベーターに運び、春香の部屋へ運び込み、また段ボールを取りに行く。


 玄関に置いた段ボールは里美がリビングまで運び入れる。


「春香は座って凱央と遊んでなさい。いいわね?」

「ん〜。軽いのだけでも……」

「駄目。私はインフルエンザで寝てた時の分も動いて体力回復したいのよ」

「あ……うん」


 里美が言う事も分かると、春香は空き部屋のほうに行き、段ボールを開け始めた。


 衣類やタオルなどの軽い物を出して、クローゼットに収めていく。


「またお父さんにお礼しなきゃ。ハウスクリーニングしてくれたし、レンタルの手配とかもしてくれたし」

「直樹へのお礼は、目一杯甘えてあげる事ね」


 段ボールを運びながら里美が笑う。春香もそれが一番喜んでくれるのは分かっている。


「うん。お父さん、凱央と一緒に寝るんだって張り切っちゃってるしね」

「楽しみみたいよ?」


 出産後、平日は春香の部屋で過ごすが、週末は雄太が居ないので、凱央は直樹と里美の家で寝起きする事になる。


 理保と二人っきりの時は泣かなかったからといって、直樹達とはどうか分からない。だから、今夜は凱央と寝てみたいと直樹が言い出したのだ。


「お義母さんと一緒で泣かなかったからって、一晩だとどうか心配だなぁ……」

「泣いたら連れてくるわよ。隣なんだし」

「うん。夜中でも連れて来てね?」

「ええ」


 心配しても、出産予定日までには、凱央が直樹達と夜は一緒に過ごしてもらわなくてはならない。出産後、退院するまでは、平日の昼間に雄太が仕事から帰ってくるまでは、春香が居ない事に慣れてもらわないと困るのだ。


「凱央はパパっ子だからって言っても、私が居ないのが大丈夫とは言い切れないんだよね」

「そうね。安易に大丈夫とは言えないけど、何とかしなきゃならないんだから。悩み過ぎは、赤ちゃんに良くないわよ?」

「うん」


 凱央はリビングで手押し車に乗って元気に走っている。なるべくなら、淋しいと泣かせたくはないとは思うものの、出産予定日まで約一ヶ月しかない。


「マッマ、チュミチ」

「あ、はいはい。ちょっと待ってね」


 手押し車から降りた凱央が部屋に入って来た。袋に入れて持ってきた積み木をリビングの隅に出してやると、順番に積み出した。


「お? その積み木は初めて見たな?」

「父の家を建ててる大工さんが端材で造ってくれたんですよ」

「へえ〜。木の良い香りがするな。これ、ひのきだな」


 慎一郎宅も木をふんだんに使っている。中でも慎一郎と理保の好きな檜を多く使っているのだ。


 その端材で造ってある積み木も良い香りがしていた。


「ジィジ、アイ」

「お? ジィジと遊んでくれるんだな」


 凱央に積み木を差し出され、直樹はホクホク顔でリビングに座り込んだ。


 その様子が微笑ましくて、雄太達はしばらく見守っていた。






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